探索地痕跡ログ30%
なんか、どうにも不穏なんだよね。
レンガの道っぽいものがあることといい、ミルクの池がある場所が牧場のように柵の跡や家屋の痕跡っぽいものがあったりして、人類の痕跡が露骨に残っている。
空中都市に人類が移ってからどれくらい経っているのだろうか?動物たちがモンスターとして適応しているのだから、相当時間が経っていると思っていたけども。
「……空中都市には、歴史を知ることのできる機関はあるの?」
「図書館での調べ物はある程度可能です」
「そっか」
世界観についても興味があるし、落ち着いてるときにでも今度行ってみようかなあ。
考えつつ、簡易マップを埋めるために草原を歩き回る。
こうして歩き回って分かったことといえば、敵対的な行動を取るのはあのジャガイモの犬くらいだっていうこと。いつかバトルチュートリアルみたいなのもあったりするのかな?
痕跡がありそうなところを調べてまわってしばらく。マップもだいたい埋まってきたところだ。
「ここはなんだろう……?樽……?」
奥の壁に近いところで、ギリギリ家屋としての体裁が保たれている場所を発見したので入ってみたけど、樽みたいなものとかが置いてあるだけで予測がつきづらい。
私の知識が足りないだけかなあ。
「お?」
瓦礫の近くでなにか見えた気がして立ち止まる。そしてそっと立てかけられている板の下を覗く。
つぶらな丸い瞳と目が合った。
「た、タヌキだ〜!」
「ミ、タヌミ、ミソ〜!」
目が合ったと思ったらタヌキはその場でごろんとお腹を出してばったりと倒れた。なぜ!?
もう終わりです……タヌキはもうダメですみたいな悟った目をしている気がする……これが世に言うタヌキらしいおまぬけムーブか。可愛いけど、悪いことしてないのにビビられるとなんだか悲しい。可愛いけど。
施設内をよく見ればちょいちょいタヌキがいるみたい。ここはこの子たちの巣になっているのだろうか?
結構広かったので痕跡を調べ終える頃にはそれなりに時間が経っていた。
「おめでとうございます。施設内のデータが十分収集されたため、ガーデン内に【醸造施設】の建築が可能になりました」
「おお、建築!」
醸造施設か。てことはこのタヌキたちって……発酵系の食べ物のモンスターってことになるのだろうか?ぜひうちに来てほしいところだけど。
「タヌー!」
尻尾がベトベトしていて、樽の中に残っているドロッとしたものをハケみたいに使ってすくい取ったり、お互いにお互いの尻尾を舐めたりしている行動が見られる。醸造施設でドロッとしているもので……黒っぽいような茶色いような。そしてこの子たちの鳴き声……。
「タヌミ!」
「ミソー!」
「ヌ、ヌ、ヌ……」
うん、味噌だよね多分。
お味噌かあ……欲しいなあ。あったら料理にも幅が出るし、なによりお味噌汁飲みたいよね。汁物まで揃えて作ってみたい!
ガーデンに戻ったら必ず作ろう。加工品は高く売れそうな気もするし、金策にはかなりちょうどいいのでは?
大豆もどっかにあるのかな〜っと。
「探索地の痕跡収集率が30%になりました。痕跡ログ情報を記録します」
さらに探し回っていると、シーちゃんからそんなお知らせがあって即座にメニューを開いた。
ログってことは!つまりテキストが見られるってことでいいんですよね!!
◯探索地【枯れ果てた草原】痕跡30%収集ログ
枯れ果てた草原の表層エリアにて、人工的な建造物の痕跡が多く見られた。
朽ち果ててはいるものの、形を保っているそれら遺物は野生で生活をするモンスターたちの住処となっている場合もあり、上手く溶け込んでいる。
かつての人類が刻んだ生活痕は長い月日が経っているにもかかわらず消え去ることはない。
星を、自然を管理し、繁栄していた種族の影響はいつまでも残り続ける。たとえそこにすでに人類がいなくとも。
表層と深層を隔てる大壁は城壁や砦のようにも見えるため、表層の内側のエリアはかつて市街地だったのではないかと推測できるだろう。
「市街地……!」
なるほど、レンガの道路みたいなのがあるのも、市街地の道だったからか!30%でこんなにたくさんのフレーバーテキストが出てくるとなると、次は50%と80%と100%のときだろうか?それとも三段階くらいで終わるのかな。ますますワクワクしてきた!
「収穫もあったことだし、タヌキを見てるのも楽しいけど……そろそろ奥まで行こうかな」
痕跡ログでも言及があったことだし、一度奥の大壁ってやつも見に行きたい。
私はそのままタヌキたちに手を振ってかつての醸造施設跡を立ち去るのだった。




