知りたがりの道中は長い
再び空を見上げると、くるくると円を描きながら飛んでいる猛禽類らしき影がある。
いつのまに接近してきていたのだろうか? 気が付かなかった。あるいは、シーちゃんからの痕跡の説明があってからじゃないとモンスターも出現しない仕様だったりしたのだろうか? そこは分からないが、さっきまで別のことを考えていたので、全部が一気に来なくて助かるなと思う。
私はしゃがんで気配をできるだけ消した。そして食い入るように草原のそこかしこに点在する生き物たちを見つめる。
だって。
「がう、がう!」
地面を掘り返してはドヤ顔をして次に行く丸っこい体の犬に、オリウルに近づいてきた卵のような形をした白いフクロウ。枯れた花の上を行ったり来たりするハムスター。
ニンジン色の猫やネズミが瓦礫越しにひりついた追いかけっこをしていたり、緑色のスズメが地面をつついていたり、たくさんのモンスターがそこかしこにいるのだ。
こんなの、こんなの……!
……ずっと眺めていたいに決まってる!!
ここから先進めなくなっちゃう、助けてシーちゃん!!
……やっぱりいいや止めないで!!
可愛い……みんな可愛い。
枯れ果てた草原の名前の通り、お野菜系のモンスターが心なしか多い気がする。ここの子たちをうちのガーデンに勧誘するためにも、畑はもっと充実させるほうがいいかな。モチーフ元の食べ物があったほうが条件に合う可能性が高いと思っているんだけど、安易かな。でもオリウルがそういうパターンみたいなものだったし、ニンジンやジャガイモは必ず植えよう。そうしよう。
なにもなくてもニンジンやジャガイモがあればカレーが作れる!
……いや、カレールゥがないから無理かな!? ど、どうなんだろう。カレールゥのモンスターなんているのかな。
「シーちゃん、しばらく見ててもいい?」
「ご自由にどうぞ」
「やった!」
その場にしゃがんで観察を開始する。
丸っこい犬は体がジャガイモのようになっていて、尻尾の部分は芽と花がぴょこり。見た目は可愛いけど、ジャガイモとしてはアウトである。
地面をほりほりしては移動してを繰り返しているので、そういう生態なのかもしれない。地面を掘っていい感じの穴になったところに寝転がり、パタパタしている姿も見ることができた。可愛い。一頭でいるけど、あの子もワルフルみたいに群れるのかな。
他にも草地をちょんちょんとスズメが飛び跳ねている。
尻尾の部分が植物のようで、枯れているから判別しづらいけど……あれはアスパラガスかな。多分そう。
ジャガイモの犬以外にも細長い犬もいる。ミニチュアダックスフンドみたいな胴長のシルエットに、ピンと張った長めの尻尾。たまに自分で追いかけてかじりつこうとしたり、こっちの犬も土を掘って尻尾を埋めてみたりしている。尻尾の部分はどう見てもゴボウじゃないかな?
みんなお野菜の名残がありつつ、ことごとく枯れてカラカラになっているので少し痛々しい。それでも、腐食モンスターたちがこうして野生で普通に生きているのを見ると不思議な気持ちだ。
こうした終わってしまった大地の上で、それでも懸命に生きるために手に入れた生きかたなんだろう。
野生の環境を見てますますガーデン、ひいては地域の浄化と再生に力を入れようと気合いが入る。
瓦礫の近くに身を隠しながら眺めていると、どう見ても尻尾がダイコンになっている狐が通りがかって可愛い〜! と思わず眺めてしまう。狐特有のもふもふとした筆先のような尻尾をダイコンにするのは天才の所業。ただ、あのもふもふを堪能することはできないんだろうなと思うと残念でもある。
それから……あ、あの遠くに見えるのは! コアラでは!?
枯れてるけど、コアラがいるってことはユーカリの木があそこにあるということで、つまりガーデンの畑にユーカリを植えたらコアラもやっぱり来る可能性が!?
買いたいものがどんどん増えちゃうな。
採取したものとか生産品とか料理を売っていって、ほしいものは全部片っ端から買っていろいろ試したい!
それよりもコアラをもっと近くで見てみたいな。完全にコアラにしか見えないけど、どんな食べ物と融合してるのか推測――。
「ホウ、ホウ!」
「ガルルルル」
「え……?」
そっと立ち上がってコアラのほうに行こうとした途端、私の存在に気がついたジャガイモの犬がこちらを見てものすごい唸り声をあげはじめた。その前にオリウルも鳴いているけど、あれはなにが。
あっ……!
そういえば、能力にそんな感じのこと書いてあったなあ。これか。
「ガウ! ガウガウ! ガウ!」
「腐食モンスターが敵対していますね。速やかな逃走をお勧めします。オリウルが補助いたします」
「分かった!」
牙をガルガルさせながらこちらに向かってくる犬に背を向け、走り出す。
もっと見ていたかったけどしょうがない! こうやって敵対してくる腐食モンスターも、今後は当たり前に出てくるんだろう。気をつけよう!
「ホウ〜」
追いかけてくる犬が、オリウルによって撒き散らされた油で滑って転ぶのが見えた。
「ごめーん!」
ユウ は ぜんりょくで にげだした!




