二日目スタート!
ログインと同時に、ぱっちりと開いた目の前には知っている天井。ガーデンの拠点にある木造のあたたかな室内だ。
ベッドから起き上がって床に足をつけると、視界の端に見慣れたウィンドウが開く。【二日目の朝】という表記とともに、ポーチの中に10連の食券がポムッと飛び込む演出が入ったので、さっと確認をするとちゃんと入っていた。こうしてログインボーナスが自動でアイテムとして入手できるらしい。
「おはようございます、ユウ様。Cからも、二日目の支給品をお受け取りください」
ずっとソファに座っていたのだろうか? 私が起き上がったあとにすっと立ち上がったシーちゃんがやってきて、私に水と塩の小瓶を渡してくる。見た目上は小瓶だけど、アイテム的には結構な量があるらしい。水のほうは1リットルペットボトルぐらいだろうか。
渡されたものをしまっていると、また彼女の手がすっと伸びてくる。
「どうし……ミルクだ」
「はい、以上が本日の支給内容です。前日の行動ログおよびガーデンの状態を参照し、補助物資が調整されています」
しかもポーチにしまったら×10と出たので10本も貰えたらしい。結構多いな。
そして、シーちゃんの言動で確定した……と思う。どうやらリアル時間じゃなくて、ガーデン内の日付でログインボーナスが配られる仕組みらしい。珍しいシステムだと思う。普通はリアル時間計算だろうし。
しかも、シーちゃんが現在の状況に合わせてログインボーナスを考えてくれているようだ。つまり、これも図鑑情報を埋めていくためのヒントのひとつということになる。
さて、ログインボーナスについては落ち着いたし、ウィンドウを意識して防衛ログも確認してみることにした。
【濁ったワームースを撃退しました】
【ひび割れたワルフルを撃退しました】
【溶け落ちたクマを撃退しました】
【ひび割れたワルフルを撃退しました】
【溶け落ちたクマを撃退しました】
【ひび割れたワルフルを撃退しました】
ワルフルが三件。そしてクマが二件。
「……また来てたんだ」
寝ている間に、あのクマ型モンスターが二度も来訪していたらしい。夜勤務だったワルフルたちはちゃんと仕事をしてくれている。
「ひび割れたワルフルと濁ったワームースは……そっか、来訪条件は満たしままだもんね」
ワルフルもワームースも、住民化条件に住民になる数が限定される文言が入っているけど、来訪条件の方はずっと満たしたままだ。
昨日の昼間には来ていなかったから、仲間になった子の腐食モンスターが来るのは夜限定? それとも、二日目になったからかな。チュートリアル終了……みたいな感じで、ちょっと難しくなったとか。
「防衛行動は問題なく完了しています。ワルフル二匹の疲労値も許容範囲内です」
「よかった」
軽く胸を撫で下ろしてから、昨日作った塩茹で野菜と白米を取り出して食べる。相変わらずシーちゃんはその様子をじっと見ているだけだ。
「……ん、そうだ。防衛ログってまとめることは、できる? 同じモンスターの防衛ログを、×3とかにまとめてほしいんだけど」
「かしこまりました。今夜からは防衛ログの整理をいたします」
「ありがと」
「あなた様のサポートをするのがCの役割ですので」
それでも、要望にすぐ答えてくれるのは嬉しい。C相手なら変なこと言われたりしないし、喋るのも苦ではない。いつか仲良くなれるといいな。
食べ終わってから背筋を伸ばし、ガーデンへ向かう。
外に出た瞬間、思わず声が漏れた。
「……おお」
昨日植えた木が、しっかりと育っていた。
幹は太くなり、葉も増えて、しかも……!
「実、なってる!」
もう収穫が可能になったらしい。早い!
「ええと」
「樹木に触れてください」
「うん」
オリーブの木に触れると、目の前にポップアップウィンドウが開く。私はそこに表示されている【一括収穫】を選択した。
すると、ぱらぱらと音を立てて実が落ちてくる。落ちてきた実は演出だけだったようで空中で消えてしまったけど、ちゃんと【オリーブ×5】という表示が出てきた。
おおー。
「通常の果樹は、再生産までに三時間ほどを必要とします。また、実がなっているときは一括収穫の選択ではなく、揺らしてひとつずつ落下させることも可能です」
「なるほどー……他にも種ってもらえたりしますか?」
「初期配布されるのはオリーブのみです。ただし、日数経過時にランダムでCが種を配布することがございます」
ランダムかあ。まあ、ログインボーナスってそういうものだよね。
「また、ショップでの購入も可能です。空中都市での直接購入のほか、ネットショッピング機能も本日より解放されています」
「えっ、本当!? ヤッター!!」
待望のネットショッピング機能である。これに喜ばずにいられるわけがない。ガチャはちょいちょい回しにいくつもりではあるけど、やっぱり人混みは避けたいからね。現地に行かなくてもいい機能はすごく助かる。
「えーと、種類は」
さっそくメニューを開いて確認すると、
昨日までクローズドだったショップの項目が増えていた。
植物の種の項目を開くとイラストと一緒に種の袋が表示されていく。
イチゴ。
ニンジン。
キャベツ。
ジャガイモ。
ブルーベリー。
レモン。
バナナ。
栗。
桜。
ヘーゼルナッツ。
ユーカリ。
それから、お花系で……。
ポピー。
デイジー。
クローバー。
「……ユーカリは、絶対コアラ系来るでしょ」
そういう予想が当たるのかどうか。それを確かめるのも、このゲームの楽しみかもしれない。いろいろあるからどれから買って植えようかな? とよりどりみどりなショップの内容にワクワクする。
「えと、昨日の納品したものは……」
「すでに入金されているかと」
「あ、ほんとだ。お金増えてる」
と言ってもムースだけでは微々たるものだ。
ひとまず……畑で育てられそうな野菜と、イチゴでも買おうかな。
そんなことを考えながらショップを眺めていた、そのときだった。
「わふっ! わふん!」
ワルフルたちが、一斉に吠えて、ピコンと通知が表示される。
【未発見のモンスターが現れました】
慌てて顔を上げると、ガーデンの外縁からこちらに向かってくる影があった。
鳥……っぽいかな? 羽のあるシルエットだけど、普通の鳥……というか、リアルでの鳩とかよりは少し大きく見える。
「忙しくなってきたねえ」
「来訪条件を満たしたようですね」
今度はどんな子かな。
いったんあの鳥さんを対処してから畑のことは考えるとして……手早くワルフルたちの防衛モードをマニュアルに変更。待機を命じる。
まず、あの鳥がガーデン内に入ってきたらよく観察すること。特に見た目とか、挙動とか。そういうのが必要だ。
それから、住民化条件についてを推測してみよう。
まあ、昨日来なかったのに今日来たという事実だけで大体なにがトリガーになっているのかはすでに分かっているけど……それの答え合わせも兼ねて、よく見ておかないとね。
ガーデン二日目、スタート……。
そう心の中でつぶやいて、今日はどれだけ知らないことを知られるのかなと無意識に笑みを浮かべていた。




