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お食事はいかが?

「隊長!三光年先に地球と似た環境の惑星を発見しました!!」


 隊員の1人が両手をあげて叫んだ。



 俺たちは地球所属の宇宙探索隊。


 ようやく調査を終えて戻ろうって時に、宇宙船のトラブルに見舞われた。そして、その復旧作業に想定外の時間を要してしまい、あと3日で食糧が尽きるという最悪な状況に陥っている。

 そこでしかたなく、近くの惑星で食べ物を調達しようということになったのだ。


「よし、でかした!そこに向かうぞ!」


 俺は隊員達にそう告げると、その惑星へと航路を定めた。

 三光年ならば、すぐに到着できるだろう。ある程度の文明を持つ星だといいのだが…。



 宇宙船は、半日後には惑星の海岸に着陸した。


 見渡す限りの緑色の海。しかし、大気中の成分は地球とほとんど変わらないようで、宇宙服は必要なさそうだ。


「よし、周辺を探索しよう。各自、武器は忘れるなよ。」


 初めて足を踏み入れる惑星だ。正直何が起きても不思議ではない。警戒は怠らないようにしないと。


 しばらく海岸近くを歩いたが、ところどころ道が整備されている。知的生命体がいるのだろう。ならば、コミュニティを見つけて食糧を分けてもらうのが一番手っ取り早いか。


 そんなことを考えていると、突然1人の隊員が大声を上げた。


「隊長!あれをみてください!!」


 何事かと彼の指さす方を見ると、地球のものより3倍ほど大きなイカがいるではないか。10本の足で器用に陸を歩行している。


「あれは食べられるのでしょうか…。確認しましょう!」


 俺たちはイカをレーザー銃で撃ち抜き、早速その身を調べた。焦げた部分から、たまらなく食欲をそそる香りがする。


「地球人に毒となる成分はなさそうです。」


「隊長、我慢できません。焼いて食べましょう!」


 俺たちはイカを宇宙船へ持ちかえることにした。また、道中で更に二匹見つけたので同じようにして船へ運び、急いで調理を始めた。


 出来上がったイカ焼きが、その香ばしい匂いで胃袋を激しく刺激する。

 たまらず口に運ぶと、思わずため息が出た。

 地球のそれとは比べ物にならないほど絶品だったのだ。


 焼かれてふっくらと膨らんだ身は適度な歯ごたえを残しており、噛むほどに甘味と旨みがにじみ出る。イカ墨を使ったソースも、この上なく芳醇でまろやか。


「こんなにも美味いなんて…!隊長、このイカをもっとたくさん捕まえて、地球までの食糧にしましょう!」


「いや、この星には他にも美味しいものがたくさんあるに違いない。知的生命体と交渉して食べ物を分けてもらおう。」


 俺の発言に、隊員たちは目を輝かせてうんうんと頷いた。万が一ここの住民が要求を突っぱねるような事があれば、こちらの文明の力で抑えつけてしまえばいい。

 そして、もし地球人の口に合うものがいくつか見つかれば、この星との貿易協定を進言してみてもいいかもしれない。それほどまでに、あのイカは美味かったのだ。


 俺たちは再び探索を始め、ついに村を発見した。自分の背丈よりも小さな建造物が立ち並んでいる。


「かなり小柄な生命体が住んでいるようですね。ある程度発展していますし、突然攻撃を仕掛けてくることはないでしょう。」


 そんな会話をしながら辺りを見物していると、奥の方からぞろぞろと住民たちが現れた。

 村の代表なのか、他より少し大きな個体が俺たちに向かって何か言っている。


『ようこそいらっしゃいました、他の星のみなさん。何もないところですが、ゆっくりしていってください。』


 手に持った翻訳機には、そう表示されていた。


 俺は、冷や汗が背中を伝うのを感じた。

 隊員たちも顔を真っ青にして固まっている。



 そんな俺たちの様子などお構いなしに、住民たちは嬉しそうに、10本の足を器用に使ってこちらへと近づくのだった。

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