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初めての契約。

「どう、レオ君? 初めての魔物は」


「お、そっちの姉ちゃん、いい胸してるじゃねぇか! オレの背中に乗らんか? しっかり首に抱きついて乗れよな、げっへっへ。おら! 坊主は早く帰んな!」


 シリアさんは微笑みながらこちらを見ている。ということはこの魔物の声が聞こえていないという事に違いない。


 もし聞こえていたら、こんな慈愛に満ちた笑みは無理だと思う。まぁ、言われ慣れていたらまた違うかもしれないが。


「ええ、思ったより(態度が)大きくてびっくりしてます。でも、初めての契約が大きい魔物で怖いので替えてもらうことって可能ですか?」


 俺は真顔ですらすらと言葉を並べ建てる。チェンジだチェンジ! こんな中身おっさんが初めの魔物なんて嫌だ!


「うーん、私は良いと思うけど。レオ君なら間違いなく契約出来ると思うのよね。それに、この魔物に契約出来れば行動範囲が広がるから契約しない選択肢は無いと思うわ」


 確かに、それは魅力だ。しかも訓練と称して王宮を抜けて外に出ることも可能⋯⋯か。俺は覚悟を決めて、赤色の鳥を見る。


「あ、なんだ? 見てるんじゃねぇ。オレを見ていいのは女だけだ!」


『──黙れ』


「⋯⋯え?」


 鳥の魔物は絶句をする。まさか自分以外に魔物はいないのに言葉が聞こえてくるとは思わなかったのだろう。


 俺はスキルである『魔物会話EX』を意識下でオンに切り替えて、魔物相手に思考を飛ばしていた。まぁ、一種のテレパシーということになる。昨日の夜、一人で悲しく自分自身にテレパシーを飛ばす練習をした成果が出たな。




 俺がこの方法を見つけたのはスキルの記載方法が気になったから。


『魔物会話EX』魔物と会話が出来る。


 これに、方法は書かれていない。ただ、会話が出来るしか書かれていないのだ。


 で、実験してみたら出来たというわけだな。これによって、スキルは案外俺が思っているより抜け道が多いのかもしれないということがわかった。



「え、レオ君⋯⋯魔物が急に大人しくなったけど、何かやったの?」


「騒がしかったので睨みつけただけですよ⋯⋯で、契約ってどうするんです?」


「え、えっとね。自分の魔力を相手に当てて調伏させるの。成功すれば自分の物という紋章がどこかに現れるわ」


「なるほど、魔物に魔力を当てる⋯⋯」


 魔力の感覚は昨日わからなかったな、ステータスには書いてあるから一応はあるみたいなんだけど⋯⋯


 まぁ、それは魔物使いの契約方法だ、魔王はまた違うに違いない。


「すみません、ケージの中に入っても大丈夫ですか?」


「ええ、でも気を付けてね⋯⋯暴れたら怪我をするかもしれないし」


 俺は頷き、ケージの中へと足を踏み入れる。ケージの中は手入れをされた藁が敷き詰めてある。思ったより嫌な匂いはなくて安心した。


「ぼ、坊主⋯⋯さっきの声はまさか⋯⋯」


『──俺の声だが?』


「ひいっ!」


 さっきみたいに脅してもいないのに勝手にビビる魔物に近づき、おもむろに胸へと触る。


 すると、頭の中に選択肢が浮かんできた。あぁ、なるほど、こうやるのか。


『魔物を支配しますか』。俺は、はいを選んだ。


 俺が触れている部位に印が浮かびあがる。それは、深い黒で彩られていた。形は禍々しい獅子の形。


「あばばばばばば⋯⋯」


 俺の支配下になったはずの魔物は泡を吹いていた。それを見て俺は冷静に判断を下す。


(あ、これダメなやつだ)


 俺は魔物の余分な羽で、その印をすぐに隠した。これを見られたら魔の物として扱われそうだったからだ。


「終わりました」


 俺は一仕事を終え、シリアさんに向き直る。すると、シリアさんは口をあんぐり開けていた。これでは美人が台無しだ。


「レオ君⋯⋯今のは?」


「えっと、とりあえず調伏は出来たみたいです」


「思っていたのと違う⋯⋯もっと頼られると思っていたのに⋯⋯」


 シリアさんは目に見えてがっかりとしている。なんか、担当官の仕事を奪ったようで申し訳ない。


「でも、レオ君なら仕方ないか⋯⋯」


 その意味は俺にはわからないが、なにやら納得したようで何よりだった。


「それじゃあ、次はその魔物への乗り方を教えるね。その魔物に命令して!」


「『いくぞ、起きろ』」


 俺は言葉とテレパシーを同時に放つ。魔物はびくりと身体を震わせて目を覚ました。


「レオ君、せっかくだし名前を付けてあげたらいいんじゃないかな?」


 名前⋯⋯か。俺のネーミングセンス絶望的なんだよな⋯⋯


 そういえば、この魔物の名前を聞いていなかったことをふと思い出す。


「シリアさん、この魔物の名前聞いてもいいですか? 名前が思い浮かぶかもしれないので」


「そうね、この魔物の名前はフライアブル・バードよ!」


 フライ・アブル・バードなるほど⋯⋯


「じゃあ、こいつの名前は非常食で」


「それは⋯⋯ちょっと⋯⋯」


 シリアさんは俺のネーミングセンスに苦笑するのであった。

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