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ステータスチェック

「こちらが貴方様の部屋です」


 しばらく廊下を歩いた後、ある扉の前で止まりそう言われる。男は俺の方へと向き直り頭を下げる。


「私の名前はジャミルと申します。何か御用でしたら私を呼びつけてください」


「あ、俺の名前は桜間怜央です。怜央って呼んでください」


「わかりました。ではレオ様と呼ばさせてもらいますね」


 その後、ジャミルさんは「では、ごゆっくりと」と残しこの場から去っていく。その背中を見送ってから俺は部屋の中へと入った。


 部屋の中は簡素な作りとなっていた。タンスとベッド、それと机が備え付けてあるだけだ。


 俺はベッドへと座ってみる。ベッドはかなり硬く、まるで地面の上にそのまま寝転がっているかのように感じる。いやまぁ、直接地面の上に寝るよりはマシなんだろうけども。


「ふぅ⋯⋯疲れた⋯⋯」


 大きく息を吐いて、そのままベッドへと横たわる。ベッドの硬い感触に早くも元の世界が恋しくなってしまう。自分の部屋に戻りたくてたまらない。


(あっちは今どうなっているんだろ……俺達がいなくなったことにいつ気付くだろ? 母さん泣かないといいけどな)


 両親の悲しんでいる顔が浮かび、胸が痛む。俺は嫌な想像を振り払うために頭を振った。今は前を見るのが先決。感傷に浸っている暇などはない。弱気になるのは死ぬ前だけでいい。

 

「ステータスオープン!」


 心のもやもやを吹き飛ばす為、大きな声を出してステータスプレートを開く。まずは自分の能力を確認しなけれはいけない。それによって立てれる作戦の質が変わってくる。


「なんだこれ!? 嘘だろ!?」


 ステータス欄は力、素早さ、身の守り、賢さなどよくあるRPG風な設定となっていた。


 そして、我が職業である魔王の能力はというと、「オールE!?」これである。ふざけるのも大概にしてほしい。


 魔王として召喚されたからには、それ相応のチート能力を期待していたのだけどこれでは力でねじ伏せることは無理。違う作戦を立てないといけない。


(歴代の魔王はどうやって勇者と戦ってたんだ? まさか俺だからじゃないよな……そうだったら泣くぞ)


「……スキルに期待するしかないか」


 俺はスキル欄をタッチする。すると色々なスキルと能力の説明が出てきた。その一番上に見えたのは『超回復』名前からして強そうである。俺は早速説明を読んでみた。


「あー、これのおかげか」


 それを見て納得をした事がある。そこにはこう書かれていた。『超回復』対象者の身体を三日で修復する。と。


 暗闇の世界で俺は喋れなくなるまで舌を噛んでいた。それがこの世界に来てから普通に喋れるようになっていたのは、このスキルの効果によるものだろう。


「いや、ちょっと待て……三日?」


 その一文に違和感を覚える。あれは少し前の出来事だったはずだ。それなのに、何故スキルが発動したのか見当もつかない。


「……考えても仕方ないか」


 今大事な事はそこではない。あの世界がなんであろうが俺の生存戦略には関係ないはずだ。次のスキルは……


「ジハード、世界は崩壊する……」


 その驚愕のスキルを俺は声に出して読んでしまった。『ジハード』世界は崩壊する。(要求魔力SSS)


 子供の考えたような技に自分の黒歴史を思い出してしまい、顔が熱くなってしまう。身体の火照りを収めるためにベッドをバンバンと叩きつけて発散した。


「はぁ、はぁ、魔王って怖ぇわ⋯⋯」


 こんな技を真顔で言ってる自分を想像して鳥肌が立った。次だ次!


『魔物支配++』モンスターを支配下に置くと能力が増える。


 どうやらこれでステータスを上げることが出来るようだ。しかし支配下に置く方法は書いていない。実際に試してみるしかないだろう。


『魔物会話EX』魔物と会話が出来る。


 次のスキルを見て俺は思考を巡らせる。これはかなり便利そうに見えた。


(これを使えば、魔王軍の話を聞き出せるんじゃないか?)


 俺がやらなければいけないことは、この世界の実態を知ること。これがあれば人類軍にいながらでも向こうの情報を仕入れることが出来るはずだ。


 そう確信を得て少し気持ちが楽になる。これで情報を仕入れる方法を模索しなくて済む。考えることが少なくなった。俺はそう考えながら次のスキルへ目を向ける。


(えっと、最後のスキルは『完全耐性』か。状態異常を防ぐスキルって書いてあるな)


 これも便利だ、不意の毒などに耐性があるのなら、しぶとく生き残れるはずに違いない。


(しかし、スキルを見ても魔王っぽくはないな。唯一の攻撃技である『ジハード』は使い物にならないし……)


 一通りスキルを確認した結果、俺のスキルに攻撃用の技が無い事実が判明してしまった。これでは戦いになった時にどうしようもない。


「はぁ……とりあえず、魔物を仲間にしないと話にならないか」


 大きくため息を吐きながら、道筋を立てていく。目下の目標は戦える戦力を手に入れること。


「でも魔物と戦闘になる可能性はあるよな、これで勝てるのか?」


 懸念点はある、俺のステータスが貧弱すぎだ。魔物を仲間にするまでに死ななければいいけど。


「前途多難だな……」


 俺はもう一度、大きくため息を吐いた。自分の未来を憂いて。

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