全力で山姥に勃ち向かう三枚のお札
お寺の和尚にお使いを頼まれた小僧さん。お守りに三枚のお札を貰い出掛けました。
遅れてはいけないと、足早に森を抜けようとしますが、急に後ろから殴られ気絶してしまいました。
小僧が気が付くと、そこは小屋の中でした。
隣の部屋からは、何やら研ぎ物をする音と、奇妙な人影が見えておりました。小僧は手足を縛られ、身動きも出来ずに恐ろしくなりました。
「……起きたか?」
障子が開くと、それはそれはおそろ恐ろしい山姥が現れました。顔は醜く、仕事で婚期を逃した怨念が体中に渦巻いており、手には包丁を持って、今にも小僧を食べしまいそうな程でありました
「あわわわわ……!!」
小僧は震え上がりました。そしてどうやって逃げ出そうか考え始めました。
「厠へ行かせてくれ! このままでは漏らしてしまいかねん!」
「……それは困る」
山姥は小僧に縄を付けて厠へと向かわせました。
小僧、厠の中でお札を取り出しました。
「山姥よ優しくなれ! 山姥よ優しくなれ! 山姥よ優しくなれ……!!」
小僧がお札に願うと、厠の外に立ち込める婚期を逃した怨念オーラが、フッと消え失せました。
「あなた……♡ まだかしらぁ?」
厠の外から猫なで声で、山姥が問い掛けます。お札の力で優しくなった山姥に気を許した小僧は、厠から出て行きます。
──ガチャ
そこには醜くも優しく、包丁を持った山姥がおりました。
「やっぱ無理!!」
小僧は慌てて逃げ出しました。山姥が優しく縄を引きますが、強く引きすぎたのか、縄が千切れてしまい、これ幸いと小僧が更に慌てて逃げ出します。
「あなた♡ お待ちになられて♪」
「ああ恐ろしい、恐ろしい……!! やはり見た目がダメだダメだ!!」
小僧が懐からお札を取り出しました。
「山姥よ美しくなれ! 山姥よ美しくなれ! 菜〇緒と深田〇子を足して三倍美しくなれ……!!」
小僧がお札に願うと、山姥の見た目が一瞬にして美しくなり、『かっこよさ』とか『APP』がカンストしました。
「これでトドメ! 山姥と相思相愛に! 山姥と相思相愛に!
山姥と相思相愛に……!!」
小僧が最後のお札に願うと、山姥の眼がハートマークになり、小僧の事を好きになりすぎて気が狂いそうな程に、ヤバいくらいに本気でLoveになってしまいました。
「二人きりで暮らしましょ!! 逃がさない…………いつまでも一緒……!!」
「──ふぁっ!?」
小僧は元山姥に抱きしめられ、背中に包丁を突き付けられたまま、小屋へと連れ戻されてしまいました。




