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第1章 スキル

「【それよりお主らもこちらにテンセイして、その家名が変わったであろう】」

「家名、あぁ。アオーリオ?」

「【その家名はこの世界では昔に他の者たちに潰された幻の一族の国名であり、家名であり、特殊な力を持つとされている一族だ】」

 

「「…え?」」


 

「【お主らはどうやって自分の名を知ったのだ?】」

「え、えーと、ステータスを見てだけど…?」

「【そもそも普通の者は自分のステータスを見ることは出来ない。見るならば神殿に行き、ステータスを開示してもらうかギルドで作成した簡易的なスキルカードを見るか鑑定スキルを最大限に扱える鑑定士に見てもらうくらいだ】」

「…他の人のスキルを見たり、後はさっき鑑定スキルを獲得もしたみたいですけど」

「【……通常自分のスキルを見せる行為は先ほどの者や場所だけだ。鑑定も訓練を積みながら獲得するものですぐに獲得出来るスキルではないが。……はぁ。それが特殊な血筋というわけか。…気になるスキルを思い浮かべて実践してみるか】」


 疲れたような声色で促され、僕たちは思いつくことをお互い声に出して想像していった。



 想像して行った結果、基本想像がうまくいけばなんでもスキルにすることが出来ることが判明した。


 例えば最初に試したのは浮くこと。背中に羽を生やして鳥みたいに飛ぶことをイメージして獲得出来たスキルは『飛翔』。因みにこれは思い浮かべる羽を変えることも出来て、最初は鳥、イメージはテレビで見たワシの翼、次は天使のような白い翼、悪魔をイメージした蝙蝠のような翼、妖精のイメージの透き通り虹色に光るような羽等想像できる羽や翼が背中に生え、自由自在に飛ぶことが出来た。肩甲骨を動かす感じだけど、手足を動かすように自然に飛ぶやり方が習得できた。

 因みにこの浮く関係で思いついたのがゲームとかで見る空中でのジャンプ。

 最初は空中に透明な箱を思い浮かべ、その上に足を乗せて蹴り、空中をジャンプするイメージをしてやったところ、『跳躍』を獲得した。


 他に僕たち二人とも獲得出来たスキルは『変身』『変化』『擬態』『以心伝心』『転移』『収納』『清浄』『浄化』。

 『変身』はその名前の通り、姿を変えることが出来る。例えば想像した生き物(猫とか狼とか)になったり、自分の見た目年齢を変化させることが出来る。でも見た目年齢については成長した姿をお互い想像するのが難しくてできなくて、年齢を下げることしかできなかった。

 『変化』は目や髪の色を変えたり、服を想像した物に変えることが出来る。

 『擬態』は隠密とかで使用出来そうなその辺の木や岩に隠れることでそこに同化し、気配や匂いを消すことが出来る。

 『以心伝心』はそれこそ『一心同体』と同じに見えるけど、どうやら『一心同体』は感情や気持ちがわかることで、『以心伝心』は頭の中で考えていることを相手(僕からユリへ、ユリから僕へ)に伝えることが出来るスキル。でも簡単に言えばどちらもテレパシーと同じだと思うけど、名前が違うからもしかしたらまだ何か違いがあるかもしれない。

 『転移』はそのままでイメージした場所に移動することが出来る。でもよくあるパターンで行ったことのない場所は行くことが出来ない。それに今はまだこの森内でしかやってないから距離がどのくらい離れていても出来るかが分からない。

 『収納』は所謂マジックポーチ的な感じで持っていた荷物を全部その中に入れることも出来て、しかもその中は時が止まっているみたいで冷凍物もそのまま溶けずに入れておくことが出来た。

ただ問題はどこまで何が入れれるかが分からないところだけど、それは今後の旅次第だと思ってる。


 最後の『清浄』『浄化』はちょっと不思議というか多分僕たちのイメージ次第なんだと思う。

 小説とかでよく体の汚れとか服の汚れとか気になってて、実際僕達も巨大ヒヨコに追いかけられて走り回っていたから汗は掻いてるし、靴や服は汚れていた。だからまず体をきれいにするイメージで清浄を使ったら体のみ綺麗になり、その後浄化で服をきれいにするイメージで使ったら服だけ綺麗になった。でもイメージ次第で『清浄』でも『浄化』でも何でも綺麗にしてくれるのは分かった。

 それにちょっとヤバいことも発覚してしまった。

 

 『浄化』についてだけど、ユリと少し離れてスキルを考えていた時に精霊樹から落ちてきた弱っている感じで淀んだ光を纏ったボロボロの小さな精霊を綺麗にするイメージでスキルを使ったら淀んだ光が温かい赤色の光へ、長さの不揃いだだったくすんだ髪が鮮やかできれいに揃った赤い髪へ、服とは言えない襤褸切れだった布が薄紅色のワンピースへ変わった。

 最初は近づいてきた僕を他の精霊が警戒するような感じだったし、落ちてきた精霊も怯える様子だったけど、スキルを使った時に驚いたように全員が僕を見てきたし、その後何故か他の精霊にもスキルを使うことになった。

 その結果全部で二十体くらいの精霊に浄化を行い、全員が元気になったらしい。色取り取りの精霊たちが僕の周りに集まってきたことでシーバルとユリがこっちのことに気づいた。


「…ルリ、何したんだ?」

「…さっき習得した『浄化』を使って精霊たちを綺麗にしてただけ」

「【…スキルで精霊の瘴気を払ったのか】」

「…瘴気?」


 なんか瘴気ってよく聖女とかが払うってイメージがあるんだけど、あまり出来ないことなんじゃ。

 そう思っていれば、案の定シーバルから呆れたように説明がされた。


「【瘴気とは魔物が発生する原因といわれるものだ。原因はよく分かっていないとされるが、簡単に言えば負の感情から生まれる。基本的には世界樹がその瘴気を吸い取っているが、世界樹にも蓄える容量がある。溜まる速度が少なければ浄化できるが、溜まる速度が早ければ浄化しきれず、容量が溜まり、その土地に瘴気が溜まる。瘴気が多く集まった土地は土地自体から瘴気を放つようになり、そこにいる種族を巻き込んで、最後は魔族へなっていく。精霊が瘴気を纏うのは理由が少し違う。精霊は自分では瘴気をどうすることも出来ない。瘴気は通常であれば聖女の使命を持つ者が扱う光魔法でのみ払えるとされているのだが、人が契約している精霊に移すことで少しではあるがその土地を浄化したようにすることが出来る。瘴気を移された精霊は自分で浄化することも出来ず、そのまま瘴気に蝕まれて消滅することもあれば、精霊樹に長い時間をかけて瘴気を浄化してもらう。ただし初級、中級の精霊はすぐに消滅してしまう。お主が浄化した精霊も元は上級、最上級の精霊が力を奪われ小さくなった精霊。放っておけば消滅していただろう。……はぁ。…お主のそのスキルは知られぬようにせねばならん】」


 聖女の使命持ちしか出来ないことをこのスキルで出来てしまうのは危険なのは分かった。

 でも、契約している精霊に移すというのはどういうことなんだろう。


「…あの、今言っていた聖女ではない人が契約している精霊に瘴気を移すというのはどういうことですか?」

「【人族は精霊と契約をしてその属性を扱えることは先ほど話したであろう。人族は精霊を魔法陣で呼び出し、どのようなものかは分からないが、半ば強引に契約を結ぶ方法を編み出し、契約した精霊へ魔力を渡すとともに瘴気も渡し、消滅するまでそれを繰り返すか、もしくは弱り切ってもはや契約も聞かない段階で精霊が逃げ出し、運よくここに戻って浄化するのを待つしかない。そもそもこんなことをするのもその聖女がここ十数年出てきていないことも関係している】」

「え?」

「【この聖女と勇者、魔王に関しては世襲制とでも言えばよいか。今の使命持ちがその指名持ちを指名して、新たな指名持ちを誕生させる。しかし時に闘いで命を落とすこともある。その場合は何年かかけて指名持ちの中から今代の使命持ちになるのを待たなければならない。今の者らは皆これが世襲制であることを忘れているようで次代の使命持ちを指名していない。使命持ちでも力は有限。年を重ねるごとにその力は弱まってくる。しかし特に今の聖女の使命持ちはその地位にしがみついているのか知らないのか一向に使命をしない。全盛期よりも明らかに衰えている力では浄化も払えない時がある。しかしそれを他に悟らせないよう精霊たちが犠牲となっている】」



 僕の肩に乗っている火の属性であろう精霊は勿論さっき浄化した精霊や他の精霊たちもみんな表情は変わらないというか読めないけど、悲しんでいるような落ち込んでいるような感じがする。



 整理するとつまりは今の聖女は結構なお年で浄化は弱まっている。でもその聖女の周りにいる人がそれを悟らせないように(無理やり)契約した精霊に瘴気を押し付けて浄化したように見せかけている。

 もう引退してもおかしくない年齢の聖女だけど、指名するのを忘れている、知らないのか、その聖女の地位を退きたくないかで次代を指名せず、結果精霊が犠牲となっている。



 こういう場合のテンプレは間違いなく教会や教会と繋がっているお国やその上層部にあると思って間違いはなさそうだよね。聖女は色んなパターンがありすぎて分からないけど、きっといつか会った時に分かる気がするというか対峙しなければいけない気がする。



 こういうテンプレというかフラグを立てたくはなかったけど、こうして傷つき、消滅してしまう精霊を元気に出来るスキルがあるならそれを使って元気にしていきたい。


 隣にいるユリを見ればユリもこっちを見ていてお互いが同じことを決意したことが分かった。


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