第1章 ステータス
僕らは普段通りの学校の帰り道に今日の夜ご飯をかんがえながら食材や生活用品のいくつかの補充を買い込んで自宅に帰ろうとしていた。
でも気が付くと僕らは森の中に倒れていた。
僕らはある程度は都会的なところに住んでいたのでこんな森が近くにはなかったことでまずどこに来たのだと普通の人であれば混乱しそうな状況だと思った。
しかし僕らは違った。所謂この状況は身に覚えがあったのだ。
「なぁ、ルリ。この状況ってさ」
「ユリ、分かってる。この状況はまさしく」
「「異世界トリップ!!」」
「気づいたら知らない森、場所!!」
「自分の世界とは違う植物や生物!!」
「スキルや魔法!!」
「ステータスにレベル!!」
思い浮かんだ単語をひたすらテンポよく上げ続けること数分。若干の息切れとともに正常な思考に戻ってきた。
「さてユリ。この場合どうしようか。現在の持ち物、いや装備は学校帰りため制服にローファー、学校指定のコートとマフラー、指定のスクールバックに先ほど買ったばかりの食材と補充用の生活用品だけど」
「あー、テンプレだよな、ある意味。今の俺らってステータスで言うと種族:人間、レベル:1みたいな感じだよな。もうちょい持ち物をしっかり区別しとくか?」
ユリの言葉にお互いの鞄とエコバックから物を広げていく。
僕は鞄の中に教科書と教科ごとのノート数冊、筆箱、体操服と長袖長ズボンの指定ジャージ、替えの靴下、体育館シューズ、スマホ、簡易充電器、財布、ペットボトル(飲みかけの水)1本、読みかけの小説2冊、空の弁当箱と溶けた保冷剤。
ユリの鞄の中身も僕の鞄にあった教科書が入っていないのとそれ以外のノート、小説の種類は変わるくらいでほとんど同じ。それにプラスして開封済みの大袋の小分けになったお菓子とパックジュースが入っているくらい。
エコバックには今日の夕飯用に安かった鮭2匹×2パックと塩サバ2匹×2パック、豆腐、卵(10個入り)1パック、レタス、ミニトマト2パック、冷食のおかず2種類、6枚切り食パン1個、アルミホイル、ラップ、キッチンペーパー、上白糖1袋、新発売のチョコ2種類、飴一袋、お茶2L1本、水2L1本に別に米2㎏。
広げてみるとなんとも言えない空気が僕ら二人を包んだ。
「……あー、うん。……荷物多いし、何より重いな。いや、でもここまで食材が充実してるのはいいこと?なのか……」
「ここまで食材が充実しているのってなかなかないよね。でもこのままだと傷んじゃうかな?一応魚は冷食に挟んでるけど」
「…テンプレだとさ、ステータスとか分かったりするよな?それにほら、定番のマジックポーチ的なの!!保存が効くみたいなさ奴あるといいのにな」
荷物を片付けながら取り留めのない話をする。
「ユリ、そんなにステータスが知りたいならテンプレだけど、やってみれば?」
「よっし!!…行くぞ!!ステータスオープン!!……あれ?うーん、ステータス表示!!」
叫んでいるユリは傍から見ると残念な少年だけど、僕としても憧れではあるからそっと想像してみる。
よく見る小説や漫画のようなステータス表を。
すると、ポンッという軽快な音とともに目の前にステータス?が表示された。
ーーー
名前:ルナリア・アオーリオ(ルリト・ミカゲ)
年齢:17
種族:人間…?
職業:――
スキル:一心同体
○○○
○○○
レベル:1
称号:世界の愛し子
転生者
武器:なし
ーーー
えっとツッコミどころが多くて、どうしよう。取り合えずまだ出てない様子のユリに声をかける。
「ユリー。僕ステータス出たよー。ステータスって思い浮かぶのを想像してみたら?」
「マジで?!よし!!……あ、出た!!……んん?んー?どういうことだ」
ユリも混乱している様子で安心した。取り合えず変なステータスはお互いあるみたいだね。
「お互いのステータスって見せ合うこととか出来ないのかな?それこそステータスオープンとかステータス開示とか、で…?ユリ?」
「……ルリのステータス見えるんだけど。……ステータス開示。……ステータスオープン」
ユリがステータスオープンというとユリの前にステータスが表示された。
ーーー
名前:ユエリア・アオーリオ(ユリト・ミカゲ)
年齢:17
種族:人間…?
職業:――
スキル:一心同体
○○○
○○○
レベル:1
称号:世界の愛し子
転生者
武器:なし
ーーー
「……よし、突っ込んでくぞ。……まず俺ら人間なのにハテナって何?」
「人間じゃない可能性があるのかな……。……ほら称号が世界の愛し子という、テンプレというかチート臭のする感じの称号だし」
「まぁ、現時点じゃきっと分からないだろうけど、これ、あまり知られちゃダメ系だよな」
「うん。僕もそう思う。……でさ?」
二人して目を逸らしていた名前とスキルを見る。
「一心同体って双子だから?こういうスキルって怪我とか魔力とか共有出来たり、思考とかもお互いに伝わるとか出来るイメージなんだけど」
「俺もそんな感じな気がするけど、それって普段からお互いの思考をある程度分かるのは当たり前とかやってたからか?……この空欄のスキルは異世界特権なのか、愛し子特権なのか、よく分からないから考えないでいいか。それよりも名前……」
「え?この世界での名前がこれ?家名とかもあるし、なんか訳アリ系とかじゃないよね?ほらこの日本人らしい黒髪黒目が一部の地域や国での差別対象とか、さ?」
「んー、それももしかしたらあるかもしれないな。……ん?……ルリ、あれ、なんだと思う?」
ステータスから目を離し、首を振っていたユリが少し青ざめて指差した先には土煙とともに巨大な黄色の物体がこちらに向かって来ていた。
「……いや、分かんない……、けど、逃げた方がいい、よ、ね?」
どんどん近づいてくる黄色の物体に僕も血の気が引く感じがしてユリと顔を見合わせると慌てて荷物を持ち直し、一斉に走り出した。
そして冒頭に戻るのだ。