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第7話 裏に潜むもの

皆さんこんばんは、星月夢夜です。

自分はマイブームがあまりこないのですが

最近卵かけ鶏そぼろご飯にハマりました。

完璧に、マイブームです。

ぜひ皆さんも1度試してみてください。


では、本編スタートです。

私はマミさんに名前を呼ばれて振り返る。そこには、変わらない優しい微笑みを浮かべたマミさんが立っていた。


「はい、どうかしましたか?」


マミさんにつられて、私も微笑んで返事をする。マミさんが見せる優しい微笑みは本当に可愛らしく、皆を包み込んでくれるような暖かさがあった。だから私はとても好きだった。だがマミさんは私を見て、その微笑みを消した。


「……レインさんに、お話ししたいことがあるのです」


そう言ったマミさんは、さっきまでとは雰囲気ががらりと変わっていた。まるで別人のように。私は気後れのような感じさえ覚えてしまった。


「ここでは話せませんので、ぜひ私の部屋にいらしてください」


私が何かを言う前に、マミさんはゆっくりと食堂の扉へと向かって行った。私はどうすべきか一瞬迷ったが、マミさんが私に話したいことというのはとても気になるし、あんなにも深刻に言うのには何か理由があるはず。その理由も知りたかった。私は、すでに食堂を出てしまっていたマミさんの後を追う。その時食堂にいたみんなのことを気にする余裕は、今の私には無かった。



私が食堂から出ると、マミさんは前で待ってくれていた。表情にはもう暗さは無く、そこにいるのはいつものマミさんだった。だが私を見てもマミさんは無言で、そのまま歩き出した。本当に、人が変わってしまったようだった。私はマミさんの少し後ろを歩いていく。

マミさんはしっかりとした足取りで止まることなく進み、レンの部屋がある東館1階への扉を開ける。私もその後に続く。そして、マミさんが次に開けたのは左側の真ん中の扉だった。どうやら、ここがマミさんの部屋のようだな。


「どうぞ、入って」


食堂を出てから初めて聞くマミさんの声は、いつものマミさんだった。


「……お邪魔します」


そうして私は、"真っ暗"な部屋の中へと入った。



マミさんの部屋は、なぜかとても暗かった。明かりは点いておらず、ただ中央にある暖炉だけが部屋を照らしていた。暖炉の前にはミニソファが2つあり、その下にカーペットが敷いてある。ソファの色やカーペットの模様こそ違えど、リースがいる暖炉の部屋とほぼ同じだった。ただ、暗さはこちらの部屋の方が勝っている。


「ごめんなさいね、突然部屋に呼び込んでしまって」


マミさんは振り返り、笑顔でそう言う。私が知っているマミさんに戻ったようでよかった、と内心ほっとする。


「いえ、大丈夫ですよ」


私がそう答えると、マミさんは暖炉の方へ手を差し出す。


「どうぞおかけになってください」


「ありがとうございます」


私は会釈をし、右側のソファに座る。このソファとカーペットは、暖炉の部屋に置かれている物と同じ種類の物なのだろうか。


「このソファとカーペットは、暖炉の部屋に置かれている物と同じ物なの。色は違うけれどね」


私が気になって見ていると、察したのだろうマミさんが答えてくれた。そして、左側のソファにゆっくり座る。


「やはりそうなんですね」


「だって、私が置いたんですもの」


マミさんの言葉にとても驚く。


「そうなんですか?」


にこにことして、マミさんは顔に手を当てた。


「えぇ。最初はあのお部屋、客間にする予定だったんですよ。広いし正面の部屋だから。でも、お客さんなんて来ないって言って、結局リースちゃんがいるようになったんです。それで、暖炉だけじゃ可哀想だからと思って」


あの部屋にはそんな過去があったのか。確かに客間にはピッタリだろう。だが前に見たように、この館は鬱蒼とした森の中に建てられている。私も、こんな場所に客が来るとは到底思えなかった。


「優しいですね、マミさんは」


私がそう言うと、マミさんはなぜか悲しそうな笑みを見せた。私はその笑みを見て、自分がここに来た理由を思い出す。


「……それで、マミさん。私に話したいことって、一体なんですか」


さっきまでとは切り替え、私は真剣な面持ちでマミさんに問うた。マミさんはじっと暖炉の火を見ている。私も同じように火を眺めた。音を立てて激しく燃える薪、そして踊るように飛び散る火の粉。自分の過去の事を一切覚えていないが、こんなふうにただ暖炉を眺めたことがあっただろうか。


「……レインさんは、この館の事を、どれほどご存知?」


そんなことを考えていた時、不意にマミさんが口を開いた。


「この館は、主であるリースが保護した人たちが暮らしている場所、ということしか」


「ならば、この館の住民の皆さんがそれぞれ"欠点"を持っている、ということはご存知ないのですね」


誰しも不得手な事の1つや2つあると思うが、マミさんがそういう意味で言ったわけではないというのは分かった。だがそれなら、欠点というのはどういう意味だろうか。


「"欠点"というのは?」


「その人を蝕んでいるもの、でしょうか」


暖炉の中で、薪の1つが崩れる。


「私たちはレインさんがこの館にいらっしゃる少し前に、突然この欠点を背負ったんです。それは人によって度合が異なっていて、重症な方もいらっしゃいます。私も、全員の欠点を知っているわけではありませんが……」


私は黙ってマミさんの話に耳を傾ける。暖炉の火に照らされたマミさんは、慈愛に満ちた面持ちだった。


「その中で、私は人身売買をした記憶を持つという欠点を背負いました」


「人身売買をした記憶を……?」


マミさんはゆっくりと頷く。


「はい。この記憶が誰のものなのかは、私には分かりませんが、とにかく酷いものです」


自身が体験したことではないが、まるで体験したかのように記憶がある。それは、私には想像もできないほど辛いものなのだろう。


「ですが、私はまだ軽いほうですよ。記憶の内容はとても酷いものですが、それは本来は私のものではありません。なので大丈夫なんです」


私の方を向いて、マミさんはいつもの笑顔を作った。今は、その笑顔が心に刺さる。


「レインさんは、私たちが欠点を背負った後にこの館に来ていますが、どうでしょうか? 何もありませんか……?」


マミさんの心配も虚しく、私はすでに欠点を背負ってしまっていた。


「実は……」


私はマミさんに自分が記憶喪失であることを話した。


「そうでしたか。もう既に……」


私の話を聞いて、マミさんはとても悲しそうな表情を浮かべる。他人のことにこれほど心を痛められるというのは、優しく思いやりのある人である証拠だと思う。そんな時、私はふと思う。マミさんによると、この館の住人たちが欠点を背負ったのは、私がここに来る前。だが、その後に来た私も同じように欠点を背負った。


(つまり、私はここに来たから記憶喪失になった……?)


もしそれが本当ならば、衝撃だ。いや、その可能性があるだけでも十分衝撃ではある。私は記憶を無くした状態でここに運ばれてきたわけではなく、ここに運ばれてきて記憶を無くしたかもしれない、ということか。


「住民の中で、欠点を克服した人はいないんですか?」


マミさんはゆっくり首を振る。


「いいえ。誰1人としていません。私のように軽症な人も、誰も。」


私は絶望感を感じた。欠点を克服した者は、誰1人いない。つまり、私の記憶は2度と戻らない、ということになる。信じたくなかった。今まで住民たちに会いに行っていたのは、記憶を取り戻す手掛かりを得るためだった。それが、記憶を取り戻せない事を知ることになるとは、思いもしなかった。


(だが、みんなは多分それを知ってて、私を手伝ってくれていたんだ。私が、欠点を克服できるように)


気が付けば、私は涙を流していた。胸がいっぱいだった。みんなは自分のことよりも、私のことを優先してくれたのだ。そんなみんなのために、なんとしても自身の欠点を克服しなければ、記憶を取り戻さねばならなかった。私は自分の手を握りしめる。涙を拭って、マミさんを見た。


「マミさん。私は、必ず欠点を克服してみせます。そして、みんなの欠点を無くす方法を探します」


私の言葉を聞いて、マミさんはこちらに顔を向ける。


「約束します」


私の目は、真っ直ぐにマミさんを捉える。


「……その言葉、ぜひ皆さんに伝えてあげてください」


マミさんにそう言われて私は頷き、立ち上がる。


「貴重なお話、ありがとうございました。聞けて本当に良かったです」


マミさんに心からの敬意を込めて礼をする。マミさんもつづくようにゆっくりと頭を下げた。そして、私は別れを言って、部屋を後にした。マミさんはただずっと、暖炉の火を眺めていた。自分の手を、握りしめて。



私は自分の欠点を克服することよりも、みんなの欠点を無くす方法を探すほうを優先させたいと思った。それが、みんなが私にしてくれていたことだから。そして欠点を無くすには、まずみんなの欠点を知ることが必要だと考えた。


マミさんは自分の欠点を軽症だと言っていたが、それでも十分辛いものだろうし、その話をするのも嫌だという人もいるだろう。それに、自分の欠点を言う事は自身の弱みを晒す事と同義だ。ましてや、私はこの館にやって来たばかり。信用できないと言われても、何も反論はできない。そういった意味でも、話したくないという人はいるかもしれない。


そう考えた私は、1人で進めていかずに協力者をつくることにした。そして、それに1番適任なのはレンであろう。そう思い、すぐ左前にあるレンの部屋に向かおうとしたんだが……


「……」


マミさんの部屋を出てすぐ前、廊下の真ん中に男の子が立っていた。歳はリエよりは上で、白いシャツに薄茶色の長めカーディガン、灰色のズボンを履いて、ぼーっと天井を眺めている。私の存在に気付いていないのか?そう思った時、男の子が首だけをこちらに向けた。灰色の短い髪に、黒色の目。無表情でこちらを見るその姿に、少し気後れする。


「お姉さんが背負う"欠点"は、何?」


その言葉は、今の私にはあまりにも響きすぎた。みんなの欠点を無くすためにみんなの欠点を知っていこうと、そう決めたばかりで、まさか住人から聞かれるとは思いもしなかった。


「……」


男の子の黒い瞳が私を見つめる。その瞳には光が無く、まるで底が見えない穴のように吸い込まれてしまいそうだった。その瞳に圧倒されてか、はたまた突然の出来事に驚いてか、私が何も言えずにいると廊下と玄関前を繋ぐ扉が勢いよく開けられた。


「あ! いた!!」


その大きな声と共に姿を現したのは、目の前の男の子とよく似た顔立ちと背格好で、同じ白いシャツ、灰色のズボンに薄茶色のジャケットを着た男の子だった。


「カナタ! 探したんだぞ!」


カナタと呼ばれた部屋の前にいる男の子は、名前を呼ばれて振り返った。


「……ソウキ。そんなに勢いよく来たら、また怪我するよ」


一方ソウキと呼ばれた後から来た男の子は、カナタに近付いて行く。見れば見るほど顔立ちが似ているが、兄弟だろうか?


「大丈夫だって! ほら、今はゆっくり歩いて」


そこまで言った時、不意にソウキが躓いた。私は咄嗟に動いて、ソウキが倒れる前に両手で彼の体を受け止めた。


「大丈夫か?」


そう声をかけると、ソウキは目をパチパチさせていた。どうやら、頭の理解が追いついていないようだった。


「……だ、大丈夫。ありがとう……」


私はゆっくり両手を上げ、ソウキの体勢を元に戻す。


「だから言ったのに」


一連の流れを見ていたカナタは、さっきまでと何一つ変わらぬ声でそう言う。


「わ、分かった。今度から気を付けるって」


ソウキは申し訳なさそうに下を向いた。


「お姉さん、助けてくれてありがとう」


カナタに礼を言われて、私はカナタを見る。相変わらずその瞳に光は無い。だが、さっきとは違って圧倒されるような感覚は覚えなかった。


「どういたしまして」


私がそう返事をすると、ソウキがカナタの隣に並んだ。こう見ると、やはり顔立ちがとてもよく似ている。


「僕はカナタ、こっちはソウキ。僕らは双子で、一応ソウキがお兄ちゃん」


自己紹介をしてくれたカナタは無表情で、隣のソウキはニコニコとしている。双子か、それなら顔立ちが似ているのにも納得だな。


「私はレインだ。よろしく頼む」


「レイン、さっきは助けてくれてありがとう!」


ソウキは目を輝かせてそう言う。カナタと同じ黒色の瞳だが、その瞳には光があった。


「どういたしまして。本当に怪我は無いか?」


念の為に、私はソウキにもう1度確認する。


「うん! 平気だよ!」


満面の笑みで答えてくれるソウキ。それを聞いて安堵する。


「……あ!」


そんな時、急に何かを思い出したようにソウキが大声をあげた。


「そうだ、忘れてた! カナタ、ミラが呼んでたんだ。来てほしいって」


カナタは首を傾げる。


「なんで? 今日は定期検診の日じゃないよ」


確かに今日はレヴィナが検診を受けていたから、ソウキとカナタが受ける日ではないはずだ。なら、なぜミラは2人を呼んでいるのだろうか。当事者ではないが、気にはなる。


「よく分かんないけど、念の為に軽く診たいんだって」


医者であるミラが住民たちのことを気にかけるのは、別に至って普通のことだろう。ましてや、ソウキとカナタはまだ子供だ。だが、定期検診の日でもないのに診たりするものだろうか。


「……ふーん」


カナタはあまり興味が無さそうに返事をした。まぁ2人が気にしていないのなら、私がとやかく言うものではないな。それに、もしかすると私が知らない事情が2人にはあるのかもしれない。例えば、"欠点"、とか。


「レインはどうする?」


カナタが私にそう問うてくる。もしミラが2人を呼んだ理由が彼らの"欠点"に関係あるならば、これはソウキとカナタの"欠点"を知ることができる絶好の機会だった。2人とは知り合ったばかりだが、それでも私が救いたい人であることに違いはない。"欠点"を無くすために、"欠点"を知る必要がある。症状を治すために、その病名を知るように。


「私も一緒に行ってもいいか?」


今は絶好の機会ではあったが、もちろん2人に断られる可能性もあった。彼らからすれば、自身の弱みを見せることになってしまうからだ。だが私の考えに反して、ソウキは笑顔を見せる。


「いいよ! じゃあ一緒に行こう!」


明るく言ったソウキは、機嫌良く自分が来た道を戻るように歩いて行った。


「ソウキ、また躓かないよう気を付けてね」


カナタがそう言った時には、すでに玄関前に出る扉を開けていたソウキは「分かってるよ!」と元気良く返事をして先へ行ってしまった。そんなソウキの後を追って歩いて行こうとするカナタを、私は呼び止めた。


「なぁ、カナタ」


名前を呼ばれて立ち止まったカナタが私を見る。ソウキと離れたこのタイミングで、カナタにどうしても聞いておきたいことがあった。


「カナタは、"欠点"が何か知っているのか?」


マミさんの部屋の前で、初めてカナタと会った時に言われた言葉。それが、私の中にずっと残っている。まだ子供ながらに、まるでその本質を理解しているようだった。だからもし、カナタが何か知っているのであれば、今この場で聞いておくべきだと思った。


「……"欠点"? 何、それ」


だが私の予想とは裏腹に、カナタは"欠点"の本質はおろか、その存在すらも知らなかった。あの言葉は、私の聞き間違いだったのだろうか。それとも、カナタの"欠点"なのだろうか。


「……いや、なんでもない。忘れてくれ」


この館の住民がみな背負っている"欠点"。ソウキやカナタのような子供にまで侵食しているその存在を、必ず取り除かなけらばならない。改めて、そう思った。


「レイン、行こう」


不意に名前を呼ばれて見ると、カナタが玄関前に続く扉を開けて待っていた。私は小走りで近付き、カナタに礼を言って2人で出た。



外に出ると、先に行ったソウキが扉から少し離れたところで待ってくれていた。


「遅いよ2人とも! 早く行こうぜ!」


ソウキは私とカナタが出てきたのを確認し、そう言ってまた先を行く。


「ソウキ、転ばないようにね」


カナタの注意にソウキは「はーい!」と元気良く返事をして先へ行く。今日2回目の光景に、思わず顔が綻ぶ。ソウキはなぜか機嫌が良いようで、楽しそうに歩いている。そんなソウキの邪魔をするのも悪いと思い、私とカナタはソウキの少し後を歩く。


「なんだか、カナタの方がお兄ちゃんみたいだ」


「ソウキは危なっかしいから。僕がいないとすぐに怪我する」


カナタの返答を聞いて、私は微笑む。


「カナタはソウキのことを、とても大切に思っているんだな」


カナタは私を見る。


「大切……うん、ソウキのことは好きで、大切」


そう言って、また前を向くカナタ。きっとソウキも、カナタと同じことを思っているのだろう。兄弟という、互いに支え合える者がいることはとても良いことだな。私にも、そのような人がいたのだろうか。そんなことを考えていると、ソウキが階段がある場所へ続く扉の前で、待ってくれていることに気付く。そうして、今度は3人で扉の向こうに出た。



階段を登り、左側の真ん中にあるミラの部屋の扉をソウキがノックする。


「はいはーい、今行きまーす」


初めてここに来た時と変わらない言葉とトーンでミラが返答する。ミラの部屋を初めて訪れたのは今日の出来事なのだが、なんだか懐かしく感じる。数秒待って、扉を開けられた。


「え、レイン?」


私がいたことに驚いた様子のミラは、その驚いた表情のまま視点を下の方に向ける。そこにはニコニコと笑顔を作っているソウキと、相変わらず無表情なカナタの姿があった。


「あー、ソウキくんとカナタくんに着いて来たわけね。オッケー、3人ともどうぞ入って」


相変わらず察しが良いミラは、扉を支えて歓迎してくれる。


「お邪魔しまーす!」


「お邪魔します」


ソウキとカナタは、同時にそう言ってミラの部屋に入って行く。息が合っているところはさすが双子だなと思いつつ、2人の後に続いて部屋に入った。



ミラの部屋に小走りで入ったソウキは、その勢いのままソファに座る。少し遅れてカナタもその隣に座った。


「ねぇミラ、早く検診してよ! じゃないとお菓子会の時間に遅れちゃう!」


「お菓子会?」


私が不思議がっていると、壁際のタンスから物を取り出しながらミラが笑う。


「あはは、ソウキくんとカナタくんが定期的にやってる、お菓子を沢山食べる会のことだよね?」


定期的に開かれるお菓子を沢山食べる会…… 子供らしくてとても可愛らしいと思う。会ということは、ソウキとカナタ以外にも誰か呼んだりするのだろうか?


「うん! あ、よかったらレインとミラも来る? 人数は多い方が楽しいって、前にアカデが言ってた!」


ソウキの言葉を聞いてミラは声を出して笑う。


「確かに、アカデならそう言いそうだね。でもあいにく、僕は仕事があるから行けないんだ」


そう言って残念がるミラ。


「あーあ。僕もお菓子沢山食べたーい」


「今度持ってきてあげるよ!」


そんなミラを励ますように、ソウキは明るく言った。その言葉に元気付けられたのか、ミラはまた声を出して笑い「ありがとう」と答えた。


「レインは?」


そんな2人の会話の後、カナタが私に問いかける。


「私は大丈夫だ。ぜひ行かせてくれ」


私がそう答えると、ソウキはとても喜んでくれた。カナタもほんの少し微笑んだ……気がする。


「じゃあ手短に済ませよう。ソウキくん、今から体を触るけど、いい?」


ミラはさっきタンスから取り出したバインダーを持ち、座っているソウキの前に膝をついてそう問うた。


「うん! いいよ」


「ありがとう」


ソウキの元気な返答にミラは笑顔で対応し、ソウキの両腕と両足を何かを確認するように触り始めた。


「どこか痛むところはなーい?」


ミラからの質問にソウキは首を振った。


「ない!」


「最近転んだりもしてない?」


ミラのその質問が私の中で少し引っかかる。カナタも度々気にしていたが、いくらソウキが元気な子とはいえ、そう何度も転ぶものなのだろうか。まるでソウキが転ぶと何かが起こるような、そんな感じだ。


「さっきね、オレが躓いて転びそうだったところを、レインが助けてくれたんだ!」


ソウキは満面の笑みで答える。いや、流石に考えすぎだろう。"欠点"の事を知ってから疑り深くなっていてあまり良くないな。


「あっはは、さすがはレイン。カッコいいね」


自分の名前を呼ばれ、意識を目の前に向ける。


「そんなことはない。ソウキに怪我が無くて良かった」


私がそう返すと、ソウキが笑顔を向けてくれる。あの時の行動は、自分でも驚くほど俊敏だった。


「オッケー! 検診終わりー」


ミラは持っていたバインダーに手早く何かを書き込み、立ち上がってそれをしまいに行く。


「ミラ、ありがとう!」


ソファから降りてそう言うソウキ。少し遅れてカナタもソファから降りる。


「どういたしまして。お菓子会、楽しんでおいでねー」


いつの間にかタンスにバインダーをしまっていたミラが、ひらひらと手を振る。


「カナタ、行こうぜ。レインも!」


まさか呼ばれるとは思っていなかったため少し驚くも、私は微笑んで頷く。そうして、私とソウキ、カナタはミラに別れを告げて部屋を出た。



「うーん。でも、3人だけじゃあ物足りないと思わない?」


ミラの部屋を出て早々、ソウキがそう口にした。確かにもう少し人数が欲しいところではあるな。


「誰かいる?」


カナタがソウキにそう聞くも、ソウキは「うーん」と考え込んでいる。私も少し考えてみる。私が知っている、お菓子会に誘ってたら喜んでくれそうで、ソウキとカナタとも気兼ねなく話せて、明るいイメージを持つ人物…… 私はそこで、1人思い浮かんだ。


「ソウキ、カナタ。リエを誘うのはどうだ?」


リエはソウキとカナタと歳が近いだろうし、お菓子会と聞けば喜んでくれそうだ。それに、もしかしたらリエルが一緒にいるかもしれない。そうなれば、一気に2人増えることにもなる。


「いいね。リエなら来てくれそう」


「じゃあ、早速リエの部屋に行こうぜ!」


どうやらソウキは、早くお菓子会をしたいらしいな。かく言う私もとても楽しみにしてる。みんなとのんびりとした時間を過ごすのも、たまには必要だろう。そうやって交流をしていくことも大事だ。


「レイン! 早く行こう!」


いつの間にか玄関前に出る扉の前にいるソウキとカナタ。こうして見ると、やはり顔立ちはよく似ていて背丈は同じだ。だが性格は真逆でソウキは明るく、カナタは物静か。2人はいつも一緒で、とても仲の良い兄弟。きっとこれから先もそうなのだろう。そのような関係が少し羨ましいなと思いつつ、私は2人のところへ向かった。

再度皆さんこんばんは、星月夢夜です。

今回は10人目の住民ソウキ、11人目の住民カナタが登場しました。

容姿が似ていても、性格が真逆でも

いつでも一緒にいるとても仲の良い双子です。


さて、ここからレインの目標が変わります。

自分の記憶を取り戻す、ではなく

みんなの欠点を無くす方法を探す、になります。

仲間思いのレインらしい選択だと思います。

新たな決心をしたレイン、カッコいいですね。


それでは、本日もお世話をしてくれている家族と

インスピレーション提供の友達に感謝しつつ

後書きとさせていただきます。

星月夢夜

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