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第4話 人狼ゲーム 前編

皆さんこんばんは、星月夢夜です。

皆さんは人狼ゲームをご存知ですか?

心の探り合いで、やってみるととても楽しいです。

ということで、やっていただきました。


では、本編スタートです。

「じんろう?」


初めて聞いた言葉だ。一体どういう意味なのだろう。


「うーん、確かにお昼ご飯まではまだ時間があるよね」


帰りかけていたミラは扉にもたれかかって、私の隣に座っているレヴィナを見る。ミラの言うとおり、今は昼と言うにはまだ早い時間ではある。


「でしょー? だから人狼ゲームでもしようかなーって」


レヴィナはずっとニコニコしている。余程その"じんろうげーむ"とやらがやりたいのだろう。


「でもなんで人狼なの? 他にも暇潰しの方法はあったよね?」


そう言いながら戻ってきて、立っている私の向かいに座るミラ。それに合わせて私もまた座る。


「だって、薪を貰った時にリースが言っていたんだもの。最近、住人の中で人狼ゲームが流行ってるって」


「へぇー、初耳なんだけど」


私もミラと同じく初耳だ。館の中で流行るくらい、"じんろうげーむ"は楽しいものなのだろう。


「人を集めて早くやりましょうよ! リースにルールを聞いてから、やりたくて仕方ないの」


私の隣で今までで1番の笑顔を見せるレヴィナ。その笑顔は子供のように無邪気で、とても可愛らしかった。


「りょーかーい。じゃあ、適当に人集めてくるよ」


ミラは立ち上がり、部屋から出ようとする。


「ちょっと待ってくれ」


私の言葉でミラは足を止め、レヴィナは目をパチパチさせる。2人とも、私にとって1番重要なことを忘れている。


「……じんろうげーむってなんだ?」


まるで時が止まったような、そんなふうに2人が動きを止めている。私はそんなにおかしなことを言っただろうか。


「え、ウソ。もしかしてレイン、人狼ゲーム知らない?」


「あぁ。初めて聞いた」


ミラは不思議そうに私を見ている。どうやら、じんろうげーむはみんなにとって知っていることが普通らしい。けど、知らないものは仕方ない。


「じゃあ、人を集めてから、皆でルールを確認するついでに説明するわね」


「分かった」


それから、ミラとレヴィナが人を集め、私、ミラ、レヴィナ、フィーチェ、レン、リエル、アカデの7人ですることになった。



「人も集まったことだし、早速ルール説明をするわね」


全員が座ってから、レヴィナが説明を始める。席順は暖炉に1番近い席にレヴィナ、レヴィナの前にある長机を挟むようにして置いてあるソファに、私とアカデ、フィーチェとミラ、リエルとレンがそれぞれ向かい合うようにして座っている。レヴィナはゲームにはプレイヤーとしてではなく、ゲームマスターという形で参加する。ゲームマスターがいないと、ゲームが成り立たないかららしい。


「人狼ゲームは村人陣営と人狼陣営に別れて、村人陣営に紛れ込んでいる人狼を探し出すというゲーム。村人陣営は自分達の中に潜んでいる人狼を見つけ、処刑することが出来れば。人狼陣営は村人陣営を自分の陣営と同じ人数、つまり1人にすることが出来れば勝利」


なるほど。聞いただけでは、なんだかサバイバルみたいだな。


「プレイヤーにはそれぞれ役職があって、今回は人狼1人、狩人1人、狂人1人、村人1人、共有者1組。私はゲームマスターという立ち位置でやらせてもらうわ」


そこでレヴィナは一息置く。


「人狼はさっきも言った通り、村人陣営を1人にするまで村人陣営を狩る。狩人は1日に1人だけ、村人陣営の人を人狼の攻撃から守ることが出来る。狂人は普段は村人陣営だけど、人狼陣営が勝てば勝つことが出来る、まあ人狼陣営のスパイみたいなものね。村人は単純な村人。特に出来ることはないわ。共有者は感覚でいうと双子みたいな感じで、互いに自分達が共有者だと認識することが出来る。つまり、確定で1人人狼ではないということになる」


最初役職を聞いた時はなんの事だかさっぱり分からなかったが、レヴィナの説明を聞いて少しずつ、役職と共にこのゲームの事が分かりだした気がする。


「ゲームは1日目の昼の話し合い、夜の行動、2日目の昼の話し合い、夕方の投票、夜の行動、3日目の昼の話し合い、夕方の投票、夜の行動というふうに進んでいくわ。1日目だけ夕方の投票が無いから注意してね。村人陣営が夕方の投票で人狼を処刑するか、人狼陣営が村人陣営を1人にしたらゲーム終了。昼の話し合いは2分間。夕方の投票や夜の行動は1人ずつ紙に書いてもらって、その都度私が集めるわ。夕方の投票では、その時自分が1番怪しいと思っている人の名前を書いて。夜の行動では人狼は1人狩る人の名前を、狩人は1人自分が守る人の名前を。狂人、村人、共有者は自分が怪しいと思う人の名前を1人書いてね」


レヴィナはこちらが聞き取りやすいペースで話してくれた。おかげで、人狼ゲームのことを何も知らなかった私でも今ではやりたいと思うくらいだ。


「これで以上だけど、何か質問はある?」


全て話し終わったらしいレヴィナが、私達に問いかける。


「役職はどうやって割り当てられるの?」


小さく手を挙げ、ミラが質問する。


「ゲームが始まったら、1人ずつに役職が書かれたカードを配るわ」


レヴィナからの回答を聞いたミラは、「おー! なるほど」と納得したようだった。


「他には無い?」


ミラからの質問に答えたレヴィナは、改めて皆に問う。


「大丈夫だよ。僕は実際にやったことあるし。ね、リエル」


「あぁ。俺も特に質問は無ぇ」


どうやらアカデとリエルの2人は、過去に人狼ゲームをやったことがあるらしい。それなら、今回のこのゲームを率いてくれると嬉しいとは思うが、どちらかが人狼になれば全く意味が無くなる。ふむ。こう考えると中々に奥が深いものだな。


「なら、皆大丈夫みたいだから、早速始めちゃいましょう!」


レヴィナは胸の前で手を合わせ、笑顔を向ける。きっとプレイヤーとしてやるよりも、ゲームマスターとして傍観するほうが好きなのだろう。


「あぁ。始めよう」


こうして、レヴィナはカードを配り始める。皆の前に1枚ずつカードが置かれる。そして、全員が自分のカードをめくる。私のカードには。


共有者。それが私の役職だった。


カードをめくるとまるでタロットカードのような絵柄で、抱き合うようにしている2人の人間が描かれていた。そしてその下には『共有者』と書かれている。共有者ということは私は自分の相手、つまりもう1人の共有者を知ることが出来るはず。そう思って改めて自分のカードを見てみると、下に小さく『レン』と書かれていた。もう1人の共有者は、レン。これでレンは白、人狼ではないということになる。そして、レンと私が互いにそれを言うことにより証明にもなる。一見とても単純な役職だが、場合によっては人狼の手助けにもなりうる可能性も秘めた役職であると言えるだろう。


「さて、全員、自分の役職は確認したわね?」


丁度いいタイミングで、レヴィナが声をかける。


「今から昼の話し合いを始めます。制限時間は2分。では、始めてください」


レヴィナはもう完全にゲームマスターになり切っているようだ。そのおかげで適度な緊張感が生まれ、本格的なものをやっているような気持ちになる。レヴィナは自分の背中に手を回し、少し小さめの砂時計を取り出した。今までずっと後ろにあったんだろうか。レヴィナはそれを机の上に置き、そして時を進めるために逆さまにした。


レンは私と同様の方法で私が共有者であることを知っているはず。そうならば、私はレンに任せようと考えていた。下手に私が何かを言うよりかは、こういった心理ゲームが得意そうなレンに任せた方が良いと思ったからだ。だが私がそれをレンに伝えることは出来ないため、私がレンに合わせるといった形にはなる。ゲームの中で、それに気付いてくれるといいんだが。


「俺は共有者だ」


私の考えを遮るように、レンが唐突に言った。


「だが、もう1人を言うことは出来ない」


私とレンの役職を明かすか明かさないかだと思っていた私にとって、これは予想外だった。まさか、自分のことだけを明かすなんて。


「どうして?」


それに疑問を投げかけたのは、ミラだった。


「もう1人の共有者を明かせば、その人は確実に白だから、人狼だって疑われずにすむんだよ?」


ミラの疑問はもっともだ。もう1人の共有者つまり私の存在を言わなければ、私は人狼かもしれない灰色になる。それぐらいなら言った方が良いと、普通は考えるだろう。


「この状況下なら、逆に喰われる確率の方が高い」


レンは腕組みをして、ミラをしらっと見る。それ以上は何も言えない、というレンの意思表示のように見えた。ミラは不敵な笑みを浮かべていたが、すぐに「そっかー」といつも通りのミラになった。深くは追求しないらしい。それとも、出来ない理由でもあるのだろうか。


私にはレンが考えていることは分からないが、レンに合わせるという作戦は変わらない。私の事を隠したのには何か理由があるはず。それがなんであれ、今の私に出来ることはレンを信じることのみ。そしてほんの少しの沈黙のあと、アカデが口を開いた。


「僕は人狼じゃない。でも、人狼に喰われたくなんてないから、役職を言うことも出来ない」


アカデは人狼であることを否定し、自分の役職を言うことを拒んだ。なるほど、無理に自分の役職を言う必要はないのか。


「オレも人狼じゃねぇ。役職は普通の村人だ」


次に口を開いたのはリエル。どうやら本当の村人はリエルのようだ。


「ふふっ、なかなか面白くなってきましたねー」


私の左隣で何故かいつもよりも笑顔なフィーチェ。どうやら、この状況がとても楽しいらしい。


「フィーチェは、自分が人狼でないことを否定しないの?」


苦笑しつつ、フィーチェに問うアカデ。


「もちろんしますよ。私は死にたくありませんので」


フィーチェは終始笑顔を貫いている。ゲーム内で死にたくないというのは、皆同じ気持ちだろう。


「じゃあ」


「僕も人狼じゃなーい、けど、役職は言いたくないかなー」


何かを言おうとしたアカデに被せるようにして、発言したミラ。ミラも自分が人狼であることを否定し、役職を言うことを拒んだ。言葉を被せられたアカデは少し驚いたような表情を見せたが、すぐにいつものアカデに戻った。アカデが何を言おうとしていたか気になるが、それより、気が付けば発言をしていないのが残り私だけとなっていた。


「私も人狼じゃないが、役職は言えない」


私は皆と同じように自分は人狼でないが役職は言えない、ということを言った。これで全員が発言したことになるが、役職を言ったのはリエルとレンだけだった。


「当然、といえば当然かな」


落ち着いている様子のアカデが言う。


「狩人は村人を人狼から守る唯一の役職。言ったら真っ先に喰われるだろうし、狂人も実質は人狼の仲間だから、夕方の投票で処刑される可能性が高くなる。人狼はもちろん言うわけがないしね」


まるで独り言のようにアカデが呟く。役職を言う必要が無いとなれば、人狼も含めた全員が自身の役職を隠したくなるだろう。


「でも、じゃあどうするんですか? このままでは、話は一向に進みませんよ?」


相変わらず笑顔でいるフィーチェがアカデに問う。その笑顔は、何かを企んでいるようにも見えた。


「とりあえず、今日はこのまま夜の行動に行くしかないね。もう、時間も無いことだし」


アカデの言う通り、残り時間はわずかだった。


「僕もアカデにさんせーい。現段階でも、怪しい人くらいは決めれるはずだしねー」


ミラがアカデの案に賛成する。どうやら昼の話し合いは、これで終わるようだ。


「分かりました」


未だ笑顔を見せるフィーチェも、その案に賛成らしい。


「今日の夜は、穏やかだといいですね」


という意味深な発言を残したが。何も言わないリエルとレンもその案には賛成のようで、アカデに対して頷いている。かく言う私も案に賛成だ。アカデに対して頷く。


「なら、今日の昼はここで終わりだね」


アカデが言い終わるとほぼ同時に、机の上にある砂時計の砂が落ち切った。ここで時間切れらしい。


「では、昼の話し合いはここまで。夜の行動に移ります」


レヴィナの本格的な言葉と共にみんなの空気が変わった。ここからが本番といった感じだろうか。


「全員、目を瞑ってください」


レヴィナからの指示に従い目を瞑る。そういえば夜の行動で何をするかは知っているが、一体どういった形式で行われるんだろう。きっとそれも、これから明らかになる。


「今から私から見て反時計回りに、つまりアカデから順番に紙とペンを回します。村人、共有者、狂人は自分が1番怪しいと思った人の名前を。狩人は自分が守る人の名前を、人狼は自分が狩る人の名前を書いてください。書き終わったら私に渡す、ということを繰り返します」


なるほど、いわば投票式か。目を瞑っていれば誰の名前を書いているか分からないし、レヴィナと直接受け渡しならどのくらいの長さをかけて書いているかも分からない。よく考えられていると思う。アカデから反時計回りということは、私が1番最後か。まだ怪しい人を決めることが出来ていないが、時間はありそうだな。


「では、アカデから順番に」


目を瞑っていて詳しいことは分からないが、どうやらアカデに紙とペンが渡されたようだ。時間はまだあるとはいえ、早めに決めておくことにしよう。さっきの昼の話し合いを少しずつ思い出していく。夕方の投票と違って、夜の行動での投票はゲームには反映されないが、適当にやるわけにはいかない。


レンは共有者であるため除外する。それと、村人と言っていたリエルも除外して大丈夫なはず。誰も反論しなかったからな。他にも本当の村人がいれば、リエルが発言したときに抗議していたはず。となれば、残るのはアカデ、ミラ、フィーチェの3人。アカデは昼の話し合いでよく発言をしていた。ミラはアカデに対して、他の人に向けているものとは違う思いを抱いているように見えた。フィーチェは最後に意味深な発言を残していった。こう考えれば3人ともが怪しく見えてくる。しかし、この中から1人を選ばなくてはならない。


少し考えた結果、現段階で私が1番怪しいと考えたのはミラ。アカデとフィーチェも確かに怪しいとは思うが、私はやはり、ミラがアカデに対して向けているものが気になった。今は自分の考えを信じてみることにしよう。頭脳戦はあまり得意ではないが、私は私なりのやり方で人狼を見つけ出すことにする。


そして私の考えがまとまったところで、レヴィナから紙とペンが渡された。レヴィナが無言かつ私は目を瞑っていたから少し驚いたが。私は目を開け、自分の考えを再確認するかのように紙に名前を書く。皆を横目で見ると、当然だが全員目を瞑っている。なんだか、自分がとても重要なことをしているような気分になる。私は名前が書かれた紙とペンをレヴィナに渡し、再度目を瞑った。ここから、一体どういうふうに進んでいくんだろうか。この夜に誰も喰われないといいが。


私がそんなことを考えていたとき、左のほうから物音がした。その後誰かが奥に歩いていき、扉を開け、そして閉める音が聞こえた。後ろのほうから聞こえたということは、作業部屋に行って何かをしたのか。目を瞑っているため、何も分からない。というより、何故か恐怖を感じている自分がいる気がする。


「全員、目を開けてください」


レヴィナの言葉を聞き、私は目を開ける。そこにレンの姿は無かった。左側、リエルの正面にいたはずのレンが消えていた。


「おい、レンがいねぇぞ」


リエルがレヴィナに言葉をぶつける。


「ゲームマスターの話はちゃんと聞いて」


その言葉を、レヴィナは跳ね返した。


「昨夜、人狼にてレンが犠牲となりました」


その事実に全員が驚く。レンがいない段階で分かっていたことだとは思うが、改めて言われると衝撃がある。ここにきてようやくこのゲームが始まったような、そんな気がしてならない。


「あのさ、純粋な疑問なんだけど」


ミラが少し遠慮気味に手を上げる。


「なーに?」


「……どうやって、レンを連れていったの?」


ミラのごもっともな質問に対し、レヴィナは笑って


「秘密♡」


と答えた。私が覚えた恐怖はこれだろう。間違いない。


「さっきの物音は、それが原因かな」


なんだか困った顔を見せるアカデ。どうやら、アカデもレンのようにはなりたくないらしい。


「なるほど、そうだったんですかー。ふふ。これはますます死ねなくなってきましたねー」


少し笑っているフィーチェはそう言いつつも、きっと本当は楽しくなってきているんだろう。


これで、残りは5人。私は片割れを失ったことになる。当初の予定だったレンに合わせることが出来なくなってしまった。つまり、ここからは自分の力でやらなければならない。だが弱気になっていてはいけない。レンのためにも私は生き残らなければならない。ここからは、2日目。2日目からは夕方の投票が追加され、難易度は上がるだろう。それでも、私は前に進むしかない。私にとっての人狼ゲームの本番は、ここからだ。


「それでは、今から2日目の昼の話し合いを始めます。制限時間は2分」


レヴィナの言葉と共に


「始めてください」


人狼ゲーム、2日目の幕が開ける。

皆さんこんばんは、星月夢夜です。

今回は人狼ゲームの前編です。

ミラとレヴィナはとても面白く

また、濃い面子を集めたなと思います。


レインは初めてやったとは思えないほど

とても冷静沈着にゲームを進めています。

何事にも恐れず、そして手を抜かず

全力の姿勢で取り組むところが彼女の良さの1つですね。


それでは、私をお世話してくれている家族と

インスピレーション提供の友達に感謝しつつ

後書きとさせていただきます。

星月夢夜

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