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第22話 穏やかな夢

皆さんこんばんは、星月夢夜です。

彼らの二次創作を考えるのが好きです。

しかし、原作者が考えた場合でも

二次創作になるのでしょうか……?


では、本編スタートです。

 私がまだ出会っていない最後の住民ニルに会うために、ノインの案内のもとニルの部屋を目指す。ニルの部屋は東館にあるようで、2人で来た道を戻るように東館へと向かう。その道中、私はキグロの時同様ニルのことをノインに聞いてみることにした。


「ノイン。ニルはどんな人だ?」


私の前を機嫌良く歩いていたノインは、私の方へ振り返りニコっと笑みを見せる。


「先にも言ったが、ニルはワシの孫みたいなものでのう。優しくて、可愛くて、愛らしいやつじゃ」


キグロの印象とはまるで違うな……。


「ワシのことも慕ってくれる良い子じゃよ」


前へと向き直り、そう言って笑うノイン。ニルの話をする時のノインはとても楽しそうで、彼女がニルのことを大切にしていることがとても伝わる。ただやはり、ノインが孫と言っているのが気になるな。確かにノインの言葉はまるで老婆のようだが、見た目はとてもそうは見えない。もしかするとニルはソウキやカナタ、リエのような子供なのかもしれない。


「それでな、ニルはパティシエをしておるんじゃ」


……どうやら違うようだ。


「ほれ、ソウキとカナタがやっておるお菓子会なるものがあるじゃろ? あれに出る菓子はニルが作ったものなんじゃよ!」


私は何も返答をしていないのだが、構うことなくノインはずっと誇らしげに話している。ノインが楽しそうでなによりだ。


「レイン、知っておるか?」


だがそこで、ノインが突然こちらへ振り返る。少し驚いたが、私は答える。


「あぁ。前に、2人に誘われて参加したことがある。あの時のお菓子はとても美味しかったぞ」


私がそう言うと、ノインは輝かしい笑顔を見せた。


「そうじゃろ、そうじゃろ! なんといっても、ニルが作った菓子じゃからな!」


そうしてまた前へと向き直るノイン。それは、本当に孫の功績を自慢する祖母のようだった。もっとも目を瞑って聞けば、の話だが。


「……♪」


ノインは先程よりも機嫌が良くなったようで、鼻歌を歌いながら楽しそうに歩いている。一昨日お菓子会で食べた、ソウキとカナタが出してくれたお菓子は本当に美味しかった。それをニルが作ったというならばぜひ礼を言いたいし、また食べたいものだな。


「さぁ、着いたぞ」


そんなことを考えているとどうやらニルの部屋に着いたようで、ノインがある部屋の前で止まる。そこは東館1階右側の1番手前の部屋で、フランの隣であった。


「さぁて、ニルはおるかのう……?」


なぜか少しわくわくしている様子のノインが部屋の扉をノックする。だが応答はなく、首を傾げたノインが再度ノックするものの相変わらず応答はなかった。どうやら留守のようだ。


「ふむ。それならば、きっと図書室じゃろうな」


「分かるのか?」


私が聞くとノインが笑みを見せる。


「もちろんじゃ。ではゆくぞ」


そう言ってノインは図書室へと向かい出した。なぜ図書室にとは思ったが行けば分かるかと思い、今はこのままノインと共にニルがいると思われる図書室へ向かうことにした。



 ニルを探して、私とノインはニルの部屋と同じ東館1階にある図書室へとやって来た。なんだかんだ図書室には毎日来ているな。だが今回は前回、前々回と違い少し薄暗かった。もう夜が近いという証拠であろう。そんな図書室は物静かで、人がいそうな気配はない。本当にここにニルがいるのだろうか……?


「ワシのことを信じておれ」


そんな私の不安を読み取ったのか、ノインは私に笑みを見せる。私がそれに頷くと、ノインは迷いなく図書室の奥の方へと歩みを進める。私はそれに追随する。そういえば奥はあまり覗いたことがなかったなと思っていると、あるところで本棚が途切れその先に少し開けた空間が現れる。そこには向かい合うようにして左右に1組ずつソファが置かれており、その1番左のソファに誰かが座って眠っていた。


(……あれは)


しっかりとは見えないが、おそらく私がまだ出会っていない住民であるニルだろう。ノインは眠っているニルに近付くと、彼の隣に立って腕組みをした。


「この子がニルじゃよ」


笑顔で言うノインだが、当の本人はずっと眠りっぱなしだった。ここまで綺麗に座った状態でよく眠れるものだなと思う。というより、なぜ図書室で眠っているんだ?


「ふむ。ちと可哀想じゃが、この姿勢で寝ているとどこか体を痛めそうじゃし、起こすとするかのう」


そう言うと、ノインは「ニルや、ニルや」と未だに眠り続けているニルを起こし始めた。


「ニル。ばあちゃんが起こしに来たぞ」


ノインがニルの顔を覗き込む。


「んん、んー……?」


ノインに軽めに揺すられながら声をかけられて、ニルはゆっくりと目を覚ます。だがまだ寝ぼけているのか、眠そうな目をぱちぱちとさせながらぼーっとノインを見ている。


「ニルや、こちらはレイン。1週間ほど前にこの館に来た、新しい住民じゃぞ」


ノインの説明を聞いたニルは再度目をぱちぱちとさせた後、途端に目を見開いて驚いたような表情を浮かべた。


「わわわ、ごめんなさい〜! こんなお恥ずかしいところをお見せしてしまって……」


そう言って、ニルは自身の胸の前でもじもじと指を絡ませる。どうやら私の存在がニルの目を覚まさせたようだ。


「えっと……改めまして、僕はニルと言います。レインさん……でしたよね?」


私は頷く。


「あぁ」


「どうぞ、よろしくお願いします〜」


そこでニルは座ったまま、ゆっくりと頭を下げた。のんびりとした大らかな青年、という印象だった。


「こちらこそ、よろしく」


私が挨拶を返すと、柔らかい笑みを見せるニル。


「ほら! ニルは優しくて、可愛くて、愛らしいやつじゃろ!」


私の隣に立つノインが胸を張る。対して、ノインの言葉を聞いたニルはまたもじもじと指を絡ませた。


「ノ、ノインばあちゃん、恥ずかしいよ……」


そんなニルの様子を気にすることなく、ノインは「ほほほ」と誇らしげに笑う。私は思わず苦笑する。


「ところで、ニルはどうして図書室で寝ているんだ?」


ここで、気になっていたことを思い切って聞いてみることに。


「あぁ、レインさんはまだご存知ないんですね」


私が首を傾げると、ニルが笑顔を見せる。


「僕、夢遊病なんです」


笑顔には似つかわしくない言葉が飛んできた。


「夢遊病……?」


「そうじゃよ。それニルの"欠点"なんじゃ」


……思わず瞬きをしてしまう。まさかこのような状況で"欠点"の名を聞くことになるとは、思ってもみなかった。


「い、いいのか? そんな簡単に……」


動揺している私とは打って変わって、ノインは相変わらず笑みを見せている。


「うむ。夢遊病は本人の意思とは関係なく、寝ている時に勝手に歩き回ったりするじゃろ? もしかすると、それが原因でニルが怪我をしてしまうかもしれん。じゃから、ニルの安全のために住民たちには伝えておるんじゃよ」


なるほど。"欠点"はあまり他人には知られたくないものというふうに認識していたが、そういう見方もあるのだな。ニルが被害を被ってしまう前の予防策、というわけか。


「僕、夢遊病での徘徊で、なぜかいつも図書室に来てるんですよ。それで、僕のことを起こしに来てくれるのがノインばあちゃんなんです」


「ほほ、ワシがニルのことを起こす役割を担ってるんじゃよ」


ニルの"欠点"の話をしているにも関わらず、2人はどこか楽しそうだった。その光景に、私は強い違和感を抱く。ノインとニルは"欠点"を自分たちの生活に適応させている。だが、果たしてそれは良い事なのだろうか。私の正義感の押し付けと言われればそれまでだが、彼らの生活が"欠点"の影響で変わったのは事実であろう。私は思わず自分の手を強く握る。


「……2人に、聞いてほしいことがある」


私がそう始めると、2人は同じようなきょとんとした表情を浮かべて私を見る。


「私は今、"欠点"をなくす方法を探しているんだ。この館の住民たちを、元の生活に戻すために」


2人はしばらくの間黙っていたが少しして顔を見合わせると、私の方を見て笑みを浮かべて頷いた。


「そうか。お主のようなやつが、やはりこの館には必要なのじゃろうな」


「そうだね」


ニルが笑顔を見せる。


「応援していますよ、レインさん。僕たちにできることがあれば、いつでも頼ってください」


大きく頷くノイン。


「そうじゃ! ワシらでよければ、いつでも力になろうぞ」


住民たちから激励の言葉をもらうたびに胸が暖かくなる。2人に向けて、今度は私が頷いた。


「あぁ、ありがとう」


ノインとニルはこのまま少しの間図書室にいるそうで、ここで別れることになった。2人に別れの挨拶を言って、私は図書室を出る。



 1人になった私は、これからのことを想像して気を引き締める。昨晩レヴォルと約束をして、今日の兵隊討伐を手伝うことになっている。前にレヴォルが、兵隊は攻撃が人間の兵隊のようにできると言っていたから、生半可な心持ちで挑むと大怪我を負う可能性がある。気持ちを切り替える必要があった。


(……まずはフィーチェのところに行かなければ)


私の剣は普段はフィーチェに預かってもらっている。フィーチェのことだから、きっととても大切に保管してあるのだろう。ついでに、兵隊のことを聞いておきたいな。


(……よし)


気持ちも新たに、私は兵隊討伐の準備のためフィーチェの部屋に向かうことにした。



 東館を後にし玄関前を通り、暖炉の部屋へ入る。部屋の中は相変わらず薄暗く、いつものように暖炉で薪が燃えている。だが、そこにリースの姿はなかった。少しに気にはなったが、レヴォルを待たせるわけにはいかないためここは通り過ぎる。武器庫に入り、奥へと進む。


(そういえば、フィーチェの部屋に行くのはこれが初めてだな)


この館に来た最初の日に、リースがフィーチェの部屋は武器庫の奥にあると教えてくれたが、その時は行くことはなかったからな。そんなことを考えながら大量の武器の間を歩く。すると、1番奥に灰色の扉が現れる。どうやら、あそこがフィーチェの部屋のようだった。


(……)


その扉の前に立ち、ゆっくりとノックする。だが、応答はなかった。留守かもしれない、と思いつつもう1度ノックをしようとした。


「レインさん!」


その時だった。


「っ!」


突然後ろ、しかもまあまあな近距離から名前を呼ばれた。驚いて振り返ると、そこには案の定フィーチェの姿が。いつもと同じ笑みを浮かべて、そこに立っていた。


「……フィーチェ」


私は少し呆れ気味に彼女の名前を呼ぶ。まあ、フィーチェらしいといえばフィーチェらしい。


「お待ちしておりましたよ! 兵隊さん殺しに行かれるんですよね? 楽しんできてくださいね!」


そう言うと、フィーチェは私に剣を差し出す。それは私の剣だった。少し驚くも、私は剣を受け取る。


「とても慎重に保管していましたから、きっとレインさんのお役にたつはずです」


「ありがとう」


礼を言うと、笑顔を見せるフィーチェ。危険な兵隊討伐を楽しめ、と言うのはいかにもフィーチェという感じだ。きっとそんなことを思うのはこの館でフィーチェぐらいだろう。


「そうだ。フィーチェ、兵隊のことを今分かっている範囲で教えてほしいんだが……簡潔に」


フィーチェが首を傾げる。


「んーそうですねー。兵隊さんたちは基本的に夜中に現れます。お昼に現れることもありますが、ごく稀です。対話などの意思疎通は不可。人間のようなはっきりとした接触も不可」


フィーチェは続ける。


「しかし、兵隊さんたちは剣を使った攻撃を行います。彼らの体はまるで煙のようですが、その攻撃は私たちに普通に当たります。ただし、こちらの攻撃も彼らに普通に当たります。ここが不思議なところですね」


私はレヴォルの兵隊狩りを思い出す。確かにレヴォルの鎌に斬られた兵隊たちは、そのまま消滅していた。


「つまり肉体的な接触はできないが、武器による接触は可能、ということか?」


私の問いに首を傾げるフィーチェ。


「うーん少し違います。彼らに当たるのはあくまでも武器による攻撃のみで、たとえ武器を使っても接触はできません」


言い終わると、フィーチェは反対方向に首を傾げる。


「あとは、名前のとおり彼らは皆兵隊の服を着ていて、(ここ)を目指しています。1日に現れる数は5〜10体。大厄災(だいやくさい)の日以外は」


「大厄災の日?」


初めて聞く言葉で、私は思わず聞き返してしまった。


「えぇ……兵隊さんについての情報はそれくらいでしょうか。レヴォルさんと一緒に集めているんですが、なかなか集まりませんね」


……どうやら私の問いははぐらかされてしまったようだ。もう1度聞いても同じようになりそうだから、兵隊討伐が終わった後にレヴォルに聞いてみることにしよう。


「もし兵隊さんのことについて何か分かりましたら、ぜひ教えてくださいね!」


そう言って、笑顔を浮かべるフィーチェ。そしてすぐに、目の前の扉を開けて自分の部屋に入っていってしまった。兵隊のことについて色々教えてくれたから、礼を言いたかったんだが仕方ない。


(……なんというか)


相変わらず、といった感じだな。本当に。そういった誰もやらないようなことをやったり、思いついたりするのがフィーチェという人だ。そう思いながら、私は武器庫を後にする。決意を固め、自分の剣を握りしめながら。

再度皆さんこんばんは、星月夢夜です。

今回は22人目の住民、ニルが登場しました。

いつもおっとりとしていて心優しい、

そして可愛らしい青年です。


これで館の住民が全員登場しました。

レインのコミュニケーション能力が凄いです。

これからは住民たちの"欠点"と対峙しますが

果たし、レインの精神は無事でいられるでしょうか。


それでは、本日もお世話をしてくれている家族と

インスピレーション提供の友達に感謝しつつ

後書きとさせていただきます。

星月夢夜

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