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第21話 のぞく暗闇

皆さんこんばんは、星月夢夜です。

今年に入って何かと忙しい日々を過ごしています。

レインも何かと忙しい日々を過ごしています。

これが運命共同体でしょうか……?


では、本編スタートです。

 マジックを見せてもらうために東館2階にあるライクの部屋の前に来た私とフィーチェは、部屋の扉をノックしようとしたその時に隣の部屋の住民に声をかけられた。声をかけてきた隣の住民は私がまだ会ったことのない人で、部屋の扉の隙間から顔をこちらに覗かせている。


「おや、ノインさんじゃないですか!」


予想外の出来事に呆気にとられていると、私の隣にいるフィーチェがそう言った。


「ほほ、久しぶりじゃのうフィーチェ」


ノインと呼ばれた住民は、フィーチェと挨拶を交わしながら扉を開けて廊下へと出てきた。薄い紫色の目に全体的に白だが中は黒く短めだが横は長い髪で、上の方に小さなお団子が2つある。黒と白の縞模様の少し大きめの服に、少しくすんだ白色の幅が広いズボンを履いている。その口調からは想像できない見た目、という印象だ。


「うむ、お主は? 初めて見るやつじゃな」


「レインだ。1週間ほど前にここに越してきた」


私がそう言うとノインが少し首を傾げる。


「1週間前というと、もしやあの騒ぎの当事者か?」


新しく会う住民にそう言われる度に、自分が異色な入居をしたことを痛感する。もっとも、私はその時意識を失っていたため記憶はないが。


「そうだ」


私からの返事を聞いたノインは私にゆっくりと近付き、まるでじっくり観察するかのように私の顔を右に左にと見る。そしてパッと離れたかと思うと、改めてといった感じに私の正面で腕組みをする。


「ワシはノイン。よろしく頼むぞ、レイン」


「あぁ、よろしく」


その時、今まで黙っていたフィーチェが私の後ろからひょこっと顔を覗かせる。本当にフィーチェの行動は読めないな。


「ノインさんも、よければご一緒にマジックを見ませんか?」


フィーチェにそう問われたノインは少し驚いたような表情を浮かべ手を打った。


「そうじゃったそうじゃった。忘れるところじゃったわい。お昼を食べに行こうかと思っていたんじゃが、その時にお主らの会話が聞こえてきてのう。それならと、ワシも連れて行ってもらおうと思っていたんじゃ」


どうやらノインは自室の扉の前で私とフィーチェの会話を聞いていたようだな。まぁ別に聞かれて困るようなことは話していないため、別に構わないんだが。昼食よりもマジックを優先するということは、ライクはそんなに凄い腕をもったマジシャンなのだろうか。


「いいですね! それでは早速、ノックをしてみましょうか?」


そう言うと、フィーチェは私にノックをしてほしいと言わんばかりにライクの部屋の扉を両手で丁寧に示した。さっきもそうだったが、何か自分でノックしたくない理由でもあるんだろうか。だが、特に理由なく行動するのがフィーチェであるという結論に至り、結局私がノックをする。


「もっと強めにノックした方が良いぞ。マジックの練習に熱中しておる時のライクは、たまに気付かぬことがあるからのう」


そう言いながらノックの手真似をするノイン。私は頷き、ノインの提案通りいつもよりも少し強くノックしてみる。すると中から「はいはーい」と声が聞こえ、少しして扉が開いた。


「どちら様ー……って、フィーチェに、ノインに……あと誰?」


部屋の中から顔を見せたライクは、扉の前にいた私たちを見てまるで何かを疑うかのように目を細めた。確かに改めて客観的にみると、なかなかに個性的な面子だと思う。


「この者はレイン。1週間前にここに来た新しい住民じゃぞ」


ノインの言葉を聞いたライクは驚いた表情を見せる。


「え、マジで? 住民ってまだ増えるんだ……」


どうやら私は最後に来た住民から、かなり時間を空けてここに来たようだな。そういえばみんながここに来た順番を気にしたことがなかったが、今度レンあたりに聞いてみるのもいいかもしれない。私がそんなことを考えていると、ライクが今よりも扉を開けて廊下へと出てくる。


「オレはライク。よろしく」


「レインだ。よろしく頼む」


「で? 3人揃ってオレに何の用?」


ライクにそう聞かれると途端フィーチェの目が輝き出し、そして急速にライクに近付く。


「マジックを! マジックを見せてくださいませんか!」


そんなフィーチェに最初は驚いた様子のライクだったが、すぐに少し呆れたような表情を見せた。


「ほんっと、フィーチェっていっつも急だよな。突拍子もないっつうか」


「はは……」


全面的に同じ意見だった私は苦笑することしかできなかった。一方のフィーチェは、なぜか満面の笑みを浮かべていたが。


「まぁフィーチェはともかく、アンタたち2人は?」


「私もノインもライクにマジックを見せてもらおうと。私は、まだ会ったことのない住民に挨拶したかったしな」


「ワシはついでじゃ」


私とノインの返答を聞き、ライクは「ふーん」とあまり興味がなさそうな反応を示す。


「ま、なんでもいいけど。ホントは部屋の中でやるべきなんだろうけど、今散らかってるし、ここでいい?」


「ええもちろん! さぁ早く! どうぞ!」


相変わらずのフィーチェに急かされ、その行動にライクはまた驚いた様子だった。


「分かった、分かったから! 持ってくるからちょっと待ってて」


そう言い残すとライクは自室に入り、すぐに廊下へと戻ってきた。手にはトランプがあり、どうやらそれでマジックを見せてくれるようだな。


「じゃあまずは適当に混ぜてーっと」


軽くそう呟いたライクだったがトランプを混ぜる動作はあまりにも早く軽やかなもので、一目でどれほどライクが器用なのか分かるほどであった。少なくとも私には絶対不可能な芸当だ。


「今からオレが1番上のカードを見せるから、そのカードの数字と記号を覚えて。声には出さないよーに。オレにバレたら意味ねーから」


そしてライクは言ったとおりに1番上のカードをめくって私とフィーチェ、ノインに見せる。数字は1、記号はハート。覚えやすいな。


「覚えた? じゃ、これを真ん中に入れる」


私達3人がカードを覚えたことを確認した後、そのカードをトランプ束の真ん中あたりに差し込んだ。


「で、また混ぜる」


その後、ライクは最初よりも念入りにカードを混ぜ始める。あまりに鮮やかなその手法は、まるでカードが踊っているかのように見える。


「これで、最初にめくったカードがどこいったか分かんなくなったっしょ? じゃあここで、そのカードが1番上に戻ってくるよーにおまじないをかけてみよう」


そう言ってライクが指を鳴らす。本当にこれで1番上に戻ってきたのか? 私のそんな問いを見透かしたかのように、ライクは不敵な笑みを浮かべた。


「お探しのカードは、これ?」


そこでライクが1番上のカードをめくると、それはトランプ束の真ん中に差し込んだはずのハートのエースだった。


「おお!!」


フィーチェとノインと3人で驚嘆の声を上げる。一見ライクがやったことは簡単なことだが、あんなにもカードを混ぜたはずなのになぜハートのエースが1番上に戻ってきていたのか全く分からない。とても短い時間でこんなにも夢中になれるものがあったのだと驚く。これは凄いな。


「なぜじゃ!? なぜ1番上にあるんじゃ!?」


そんな私の隣で、ノインが熱狂とも呼べる状態でライクが持つトランプを見ていた。


「それ言っちゃったら面白くねーじゃん?」


そのライクの言葉にフィーチェが頷く。


「そうですよ! マジックはタネを知らないでこそですから! やはり凄いですね!」


マジックを見れたことでかなり満足げな様子のフィーチェは、少しの間鼻歌を歌いながら辺りをうろうろとした後そのまま何も言わず廊下の扉から出て行ってしまった。


「マジで変わってんね、フィーチェって。普通何も言わず行く?」


「はは……」


私はまた苦笑するしかなかった。


「そーいえば、レインはオレの他にまだ会ってねー住民っていんの?」


フィーチェが行ってしまった後、不意にライクがそう聞いてくる。


「あぁ。あと2人いるはずだ」


今朝の時点でまだ会っていない住民はあと5人。そこからサミュ、ノイン、そしてライクに会ったためあと2人になっていると思う。


「その2人が誰かは分かっておるのか?」


そこが問題であった。会っていないのがあと2人というのは分かっているのだが、その2人の名前や部屋までは分からない。他の住民たちに手を貸してもらわないと、2人に会いに行くことが叶わないのだ。


「いや、そこまでは分からないんだ。だから、2人の手を借りたいんだが……」


私がそう言うと、ノインが声を出して笑う。


「ほほほ。もちろんじゃとも。のう、ライク?」


ノインに問われたライクは、何を思ったかすまし顔で両手を腰にやる。


「ま、別にいいけど」


出会ったばかりの私に手を貸してくれる2人には、本当に感謝しかないな。


「2人ともありがとう。それじゃあ、今までに会った住民の名前を言っていくから、そこからあと2人を割り出してくれないか?」


「うむ。分かった」


「任せといて」


ノインとライクの承諾を得て、私は順々に過去会った住民の名前を言っていく。この方法で割り出すのは少し難しいかと思ったが聞いてくれる者は2人いるし、おそらく大丈夫だろう。


「……ノイン、ライク。これで全員だ」


私が出会った住民の名前を考えながら聞いていた2人。私が言い終わると、ノインが軽く頷いた。


「ふむ。ニルは確実におらんかったな」


「あとは、多分キグロさんかな」


私の予想とは裏腹にあっさりと見つかったな。


「案外簡単に見つかるもんじゃのう」


ノインも私と同じことを思っていたようで、ほほと軽く笑っている。


「会いに行くなら、キグロさんが先の方がいいと思う」


ライクの言葉にノインが頷く。


「ワシも同意見じゃ。あやつは部屋からほとんど出ない、行けば会えるじゃろうて」


「分かった。部屋はどこなんだ?」


ノインはまた軽く笑う。


「ワシが案内してやろう。ニルにも会いに行くならば、ワシ以上の適任はおらぬと思うぞ」


対してライクは少し呆れたような表情を見せた。


「ノイン、ニルのことだいぶ可愛がってるもんね」


「うむ。ワシの孫みたいなもんじゃ」


その若い見た目がゆえにその言葉にはだいぶ違和感があるが、他者から見てそう見えるのならば本当にそのような関係に見えるのだろう。ぜひ会ってみたいものだな。


「では行くぞ。まずはキグロのとこじゃな。あやつの部屋は西館にある」


そう言うと、ノインは少し楽しそうに廊下の扉の方へと歩いていく。


「ライク、マジックをありがとう。ぜひまた見せてくれ」


私が急にそう言ったからか少し驚いた様子を見せたライクだったが、すぐに笑みを浮かべた。


「どーも」


こうしてライクと別れた私とノインは私がまだ会っていない住民2人のうちの1人、キグロに会うためにノインの案内のもと西館へと向かうことになった。



 西館へ来た私とノインは、2階にあるというキグロの部屋を目指す。その間、私の少し前を歩くノインにキグロのことを聞いてみることにした。


「なぁノイン。キグロという人はどんな人なんだ?」


私がそう尋ねると、ノインは大袈裟気味に考え込むような姿勢を作った。


「うーむ。なんというべきか、ワシら他の住民との接触を極端に嫌がっておってな。無口で、無愛想で、陰気なやつじゃ」


ノインは毒舌を吐くような人ではないと思うんだが、散々な言われようだな。むしろますます会いたくなる。


「確か、クロースのやつと昔からの知り合いで、あやつに誘われてここに来たと聞いたことがあるぞ」


ここにきて意外な人物の名前があがる。クロースはさっきノインが言ったキグロの人物像とは真逆だが、ソウキとカナタのようにそちらの方が合ったりするものなのか。


「まぁキグロのやつに会いに行っても、良くて顔を少し、悪くて門前払いじゃな」


ノインが首を振りながらそう言うが、私的にはそれでも構わなかった。今回は挨拶という目的が果たせればそれでいいからな。


「ほれ、着いたぞ」


そんな時、前を歩いていたノインが止まりある部屋の扉を指差した。西館2階右側の1番奥の部屋で、エルグ先生の隣だ。


「ノックしてみるがよい。十中八九おるはずじゃから」


ノインの言葉に頷き、部屋の扉の前に立ってその扉をノックする。部屋の中からは一切物音はせず、もしや留守かと思ったのだが少しして扉の向こうから声が聞こえてきた。


「……誰」


低く、暗く、少し威圧的な声だった。


「私はレイン。1週間ほど前にここに来た者だ。まだ会っていない貴方に、挨拶がしたいと思い訪れた」


私は自分なりに誠意を込めて言ったつもりなのだが、扉の向こうからは一切応答がなかった。だが少しして、部屋の扉がゆっくりと開き始めた。驚いて少し下がると、扉はわずかに開いて止まりその隙間から人の顔のようなものが見えた。部屋の中は真っ暗で、尚且つキグロと思われる人物の前髪が長く、はっきりとは確認できない。


「……」


そんな状況下ではあったがおそらく一瞬目が合った気がと思った時、部屋の扉を閉められてしまった。


「……必要ない。帰ってくれ」


扉の向こうからまた声が聞こえ、また応答が一切なくなった。なんとなくだが、もう扉の前にもいないだろう。


「キグロのやつも相変わらずじゃのう」


一連のやり取りを少し後ろで見ていたノインがそうこぼす。確かにノインが言った通りの人物だったな。そして会って尚更クロースが知り合いという印象が湧かなくなった。


「これで分かったじゃろ。キグロはこんなやつじゃ」


ノインにそう言われ、私はもう1度キグロの部屋の扉を見る。いつか、彼とも話せる日がくるのだろうか。いや、必ずくるようにしなければならないな。


「よし。では、ニルに会いにゆくとするか」


孫みたいなものと言っていたニルに会えるのが嬉しいのか、笑みを浮かべるノイン。私は頷き、それにつられて笑みをつくる。そうして最後の住民ニルに会うために、機嫌良く歩き出したノインに着いていくことに。暗く、重い扉を背中に感じながら。



 レインとノインがニルの部屋に向かいだした頃、部屋の中へと戻ったキグロは暗い空間の中で先程自分のもとに挨拶に来たレインのことを思い出していた。


「アイツがクロースが言っていた新しい住民……」


昨晩庭園でレインと出会ったキグロの旧友クロースは、新しく館に来た住民のことをキグロに伝えに来ていたのであった。クロースがキグロにレインの印象を何と話したかは定かではないが、少なくともキグロが部屋の扉を開けその姿を見たいと多少思うほどには興味を抱かせていたようだ。


「……」


クロースから聞いたレインの印象と実際の彼女を照らし合わせてみて、キグロは思わず鼻を鳴らす。


「……ぜひともやってみてほしいものだな」


レインに対し嘲笑めいた期待とも呼べるものを抱くキグロ。彼女に会った時から、止まぬ頭痛と共に。

再度皆さんこんばんは、星月夢夜です。

19人目の住民ノイン、20人目の住民ライク、

そして21人目の住民キグロが登場しました。


何やら情報量が多い回だった気がしますが、

私的にも色々と情報を見直す回となりました。

とりあえず、個性的な住民たち……でした。


それでは、本日もお世話をしてくれている家族と

インスピレーション提供の友達に感謝しつつ

後書きとさせていただきます。

星月夢夜

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