第20話 君の笑顔を守る為に
皆さんこんばんは、星月夢夜です。
新年明けましておめでとうございます。
今年は7年目。ラッキーセブンの年ですので、
何か良い事が起こるといいなと思っております。
では、本編スタートです。
いなくなったカナタを探すために私、カイ、ソウキの3人で屋敷内を手分けして捜索することに。カイが東館、ソウキが西館、私が庭園を捜索し、カナタがいてもいなくても終わったら玄関前で合流しようという話になった。それを承諾し、私は早速庭園へと向かった。
(カナタは……)
食堂を通り、いつもの薔薇の道を抜け、庭園に辿り着く。太陽の光を受けて光り輝く庭園が今はとても眩しい。辺りを見回しながら庭園内をぐるっと一周したものの、カナタどころか誰の姿もなかった。カナタは背が低いため、もしかがんでいたら少し見ただけでは分からないと思い、もう一度念入りに一周してみたがやはりいなかった。
(……仕方ない、戻ろう。もしかしたら、カイかソウキが見つけているかもしれない)
他力本願ではあったが、そうだったらいいなと思いながら私は庭園を後にした。
屋敷の中へと戻り、約束の場所である玄関前へと赴く。そこにはまだカイとソウキはおらず、どうやら私が1番最初に来たようだった。それから少しして、カイとソウキがほぼ同時に玄関前へとやってくる。だが2人とも、カナタを連れてはいなかった。
「カナタはいたか?」
少し焦り気味にカイがそう言った。
「いや」
私は首を軽く振りながら答える。
「こっちもだよ」
ソウキはそう答えると、落ち込むかのように目を伏せた。3人で手分けして探しても見つからないということは、誰かの部屋にいる可能性が高い。だが、本来カナタが訪ねたかったのは私。つまり、もし今誰かの部屋にいるならばそれはカナタが意図していなかった状況ということになる。それを探すとなると、ほぼ全員の部屋に行かなくてはならないことになるが……。
「おや皆さんお揃いで、どうかしましたか?」
そんな時、不意に声が聞こえその方を見てみると、暖炉の部屋の扉の前にフィーチェが笑みを浮かべて立っていた。扉が少し開いているため、おそらくそこから出てきたのだろう。暖炉の部屋の奥にフィーチェの部屋はあるため、別に不思議ではない。
「ちょうどよかった。カナタがどこに行ったか、知らないか?」
カイがそう聞くと、フィーチェが何かを思いついたように少し目を見開いた。
「あぁそれなら」
そして、なぜか大股一歩分ほど左側に寄った。私たちが首を傾げていると、少しして開いている扉からカナタが出てきた。
「カナタ!!」
カナタの姿を見るや否や、ソウキはカナタに向かっていきカナタのことをぎゅっと抱きしめた。ずっと探していたカナタに会えてソウキはとても嬉しい様子だったが、一方のカナタは少し首を傾げている。
「ソウキ? どうかしたの?」
その時、ソウキはパッとカナタから体を離す。
「どうかしたのじゃないよ! もう1回寝て起きてもカナタが帰ってきてなくて、本当はオレと一緒に行くつもりだったのかなって思ったら、なんか気になって……」
そう言って目を伏せるソウキ。そんなソウキをカナタは真っ直ぐ見つめていた。
「ごめんねソウキ。もう用事は終わったから、これからは一緒にいよう」
カナタのその言葉に顔を上げたソウキは、力強く頷いた。そんな2人の様子を見ながらこちらに近付いてきていたフィーチェに、気になったことを聞いてみることにした。
「どうして、カナタと一緒に?」
そう聞いた私にフィーチェが満面の笑みを見せる。
「食堂の前でたまたまお会いしたんです! そこから話し相手になってくれるということで部屋にお連れしました!」
そう説明してくれるフィーチェだが、おそらくほぼ強制的に連れてきたんだろうなとなんとなく想像できる。
「その時にカナタさんが、ライクさんのところへマジックを見に行っては、と提案してくださって! これから行くところなんです」
ここにきて初めて聞く名前だ。私がまだ会ったことない住民のうちの1人だと思うが、それならばぜひ会ってみたいな。しかもマジックということは、そのライクという人はマジシャンなのか。なおさら会ってみたい。
「なあフィーチェ。私も一緒に行ってもいいか?」
急な提案ではあったが、フィーチェは笑顔を浮かべて頷く。
「もちろんです! 1人より、2人で見た方がきっと面白いですから!」
ご飯はみんなで食べた方が美味くなるとは思うが、マジックにもそれが通用するのか。相変わらずフィーチェは奇想天外なことを言うのだなと、私はそう思っていた。
そんなレインとフィーチェから、少し離れたところにいるソウキとカナタ。2人はこれからのことを話していた。
「それなら、今からお昼食べに行こうぜ! オレお腹空いた」
「うん、いいよ」
カナタは頷いてそう答えると、振り返りレインとフィーチェの近くにいたカイに近付く。
「カイ。これからソウキとお昼ご飯を食べに行くけど、一緒に行かない?」
「あぁ、構わないよ」
カイから承諾を得たカナタは、続いてレインとフィーチェにも声をかける。
「2人ともこれからお昼ご飯、一緒に行かない?」
「すまない。これからフィーチェと行くところがあるんだ」
「マジックを見に行くんですよ!」
フィーチェからそう言われた時、カナタは少し目を見開いた。
(……しまった)
元々カナタはレインに"欠点"関連のことで用事があった。だがあと一歩のところをフィーチェに阻まれ、結果的に今の状況にいる。とはいえどこれからレインと話す機会はある、と思っていたカナタだったが過去の自分自身の提案により、そうもいかなくなったようだった。
(……)
なるべく早く伝えたかったカナタは少し気を落とす。もちろん、誰にも分からないように。
「それじゃあ、また」
「あぁ、また」
一方のレインはカイとそんな挨拶を交わし、フィーチェと共に目的地であるライクの部屋へ向かおうとしていた。
(……!)
ほんの少し焦ったカナタは思わずレインのことを呼び止める。
「待って、レイン」
カナタに名前を呼ばれ、振り返るレイン。彼女の真っ直ぐな目を見て、カナタは焦る気持ちを抑えて我に返る。
(……前は、ソウキのことが心配でつい言っちゃったけど)
カナタはレインと共にミラにソウキの"欠点"を聞いた時のことを思い出す。
(やっぱりソウキの前で、"欠点"の話はするべきじゃない)
ソウキに傷付いてほしくないという、カナタなりの精一杯の思いやりだった。
「……ごめん。やっぱりなんでもない」
そう言って目を伏せたカナタ。そんなカナタの様子が気になりレインが何かを言おうとしたその時、カナタの後方から声が飛んでくる。
「カナター! 早く行こうぜー!」
カナタが振り返ると、カナタに向かって大きく手を振るソウキの姿があった。カナタは戻って再びレインを見る。
「じゃあね、また」
そしてそう言って足早にソウキのもとへ向かう。カナタはそのままこちらを見ることなくソウキ、カイと共に食堂がある西館の扉を通っていった。レインはそんなカナタの小さな背中を、じっと見つめていたのだった。
「……」
カナタたちの姿が見えなくなった後も、私は西館の方から目を離せなかった。別れ際のカナタの様子がどうしても気になったからだ。ソウキと違ってカナタは考えが読み取りづらい。カナタが何を言おうとしていたのか私には検討もつかない。
「気になりますか?」
私がぼーっとしていると、突然フィーチェが私の顔を覗き込むように視界に入ってきた。
「……あぁ」
フィーチェはニコニコとしている。
「何か伝えたいことがあるとおっしゃっていましたよ」
「伝えたいこと?」
聞き返すと笑みを浮かべたまま頷くフィーチェ。
「……」
フィーチェの言葉を聞いて、今すぐにでも追いかけて聞きたい衝動に駆られる。だが、カナタのことだから話さなかったのには何か理由があるかもしれない。あの場にいた私以外の者には聞かれたくない、とか。
「まぁ今はそんなことより! 早くマジックを見に行きましょう!」
そんな私の思考を遮るように、フィーチェが私の背中を押す。カナタたちが行った方向とは逆、つまり東館の方に向けて押されるということはライクの部屋は東館にあるのか。
「フィーチェ。私は部屋の場所を知らないから、案内してくれるか?」
フィーチェは笑みを浮かべたまま、先ほどよりも強く頷いた。
「はいもちろんです! こちらですよ」
私の予想通り、フィーチェが手を指したのは東館へと続く扉だった。意気揚々と先行してくれるフィーチェに続いて、私は東館にあるというライクの部屋へと向かうため東館へ入った。
ライクの部屋に向かっている途中、私はフィーチェに気になっていたことを聞いてみることに。
「フィーチェ」
私が名前を呼ぶと、少し前を歩くフィーチェが振り返る。
「カナタと何の話をしていたんだ?」
そう聞くとフィーチェは少し大袈裟に首を傾げる。
「特に何も! カナタさんはずーっとぼーっと座っていましたよ!」
それを聞いて私は思わず苦笑してしまう。話し相手を探していて、いざ見つけたら何も話さないというのはなかなかに凄い行動だな。だがまあ、フィーチェらしいといえばらしい。
「私は別にそれでもいいんです、暇つぶしの一環でしたから。そして、これからライクさんのところへ行くのもその一環です!」
そう言い放ったフィーチェは目をキラキラと輝かせている。
「マジックはとても好きです。普通ではないことが起こりますから」
その時フィーチェが一瞬神妙な面持ちを見せたものの、ぱっといつもの笑みに戻った。
「ま、タネを知ってしまえば普通になってしまいますが!」
そう言って鼻歌を歌いながら先に歩いていくフィーチェ。
(なんだか機嫌が良さそうだな)
そう思いながら、私はまたフィーチェの少し後ろを歩く。楽しそうに横に揺れながら歩いているフィーチェの背中を見ていた時、不意にあることを思い出した。
「そうだフィーチェ。1つ頼みがあるんだが」
私の言葉を聞いて、フィーチェは歩みを止めてこちらに振り返り首を傾げる。
「今日の夜、私の剣を用意しておいてくれないか? 今晩の兵隊討伐を私もやることになってな」
最初は目をパチパチとさせていたフィーチェだが、すぐに笑顔を浮かべた。
「それはいいですね!」
そして、私に敬礼の姿勢をとる。
「ご用意しておきます」
「ありがとう」
私からの礼にまた笑顔を浮かべたフィーチェはくるっと回転して前を向くと、先ほどと同じように鼻歌を歌いながら歩き出した。だがそれから少し歩いたところでフィーチェが止まり、右を向いた。フィーチェが止まった場所は東館2階右側の1番奥で、目の前には扉がある。どうやら、目的地に到着したようだ。
「ここがライクさんのお部屋ですよ」
「案内してくれてありがとう、フィーチェ」
フィーチェが嬉しそうな笑みを見せる。
「いえいえ!」
私とフィーチェは揃って扉の前に立つ。この館には本当にいろんな職業の人がいると思っているが、まさかマジシャンまでいるとは思いもしなかった。私は過去、マジックを見たことがあるのだろうか。いや、たとえ見たことがあったとしてもきっと衝撃を受けるんだろうな。そう考えると、なんだかとても楽しみになってきた。フィーチェはなぜか私の隣で何もせず待機しているため、代わりに私が部屋の扉をノックしようとした、その時だった。
「マジックを見に行くのかえ?」
不意に右側から、まだ聞いたことのない声が聞こえた。
「それならワシも行くぞ」
声が聞こえた方を向くと、私のまだ知らぬ住民が隣の部屋の隙間から顔を覗かせていた。
再度皆さんこんばんは、星月夢夜です。
カナタは、結局レインに言えずじまい。
そしてなかなかにフィーチェが喋った回でした。
次回からはレインがまだ会えていない、
残りの住民たちが続々と登場します。
一体どんな人と会えるのでしょうか。楽しみです。
それでは、本日もお世話をしてくれている家族と
インスピレーション提供の友達に感謝しつつ
後書きとさせていただきます。
星月夢夜




