H先生<<<<<<<<<<Y先生
その後瑞穂はいつものように少し部屋を片付けてシャワーを浴びた。
シャワーを浴びたせいで疲れが身体に押し寄せてきてしまい、少しだけのつもりでベッドに横になるといつの間にか眠ってしまっていた。
「…………はっ?!」
気が付いたらもう夕方。
「あぁぁぁ郵便局に行こうと思ってたのにぃぃぃ……まぁいいや、明日で」
ぶつくさと一人言を言いながら、冷蔵庫を開く……しかし中には何もない。
今の時間、近くのスーパーは混んでいる上、瑞穂の髪はぐちゃぐちゃだった。
30オーバーの瑞穂である。
流石にスッピンでお外に出るには抵抗がないでもない。
……ぶっちゃけてしまうと抵抗はそんなにないのだが、他の同級生とかと比べて『ちゃんとしてない』瑞穂なりのルールとして『お外に出るには化粧をする』と決めていたのだ。(※尚、ゴミ捨てはカウントされない模様)
ルールを守る=ちゃんとした大人。
親や周囲の圧など、多少の不具合はそれで誤魔化せる。
楽しく生きる、基本である。
帽子と眼鏡とマスクで出るという方法もあるにはあるが……不審者っぽい。
「イヤだ! 面倒臭い!!」
残念なことにカップ麺等は切らしていた。
さっさと化粧をするなり、不審者っぽい出で立ちをするなり、いっそのことスッピンで行くなり……いずれかの選択をすればいいのだが、瑞穂はそれらに無意味に抗った。
それは間違いなく非常に無意味に。
「イヤだぁぁぁぁぁ!!」
とりあえず手始めにベッドで駄々を捏ねてみるも、余計に腹が減ったので残っていたさきいかを食む。
「こんなので腹が膨れるかー!!」
空になった袋をゴミ箱に叩きつける。
しっかり中味を食べてからのあたりが流石、瑞穂である。
「……はっ!」
何かに気付いて瑞穂は、箪笥の上に鎮座ましましている招き猫の置物の下からあるものを取り出した。
それは……『ターバン諭吉』と呼ばれる、まるでターバンを被ったかの様に折り畳まれた一万円札。
「先生! コンビニはお外に入るんですか?!」
瑞穂は尋ねた。
さながら『バナナはおやつに入るんですか?』と教師に尋ねる生徒の如く──
先生とは、勿論『諭吉先生』である。
『諭吉先生』は偉いのだ!
そう……例えて言うならば……『英世先生』の10倍位!!
普段英世先生には大変にお世話になっている瑞穂だが、諭吉先生はここぞと言うときの心の拠り所である。
その敬虔なる信仰心が功を奏したのか……瑞穂の耳には諭吉先生のお言葉が降りてきた。(※気のせいです)
『瑞穂や……コンビニはお外に入りませんよ』
「いよっしゃぁぁぁぁぁ!! 先生! ありがとうございます!!」
要は、自分ルールを破った言い訳が欲しいだけなのだが、諭吉先生の言うことは絶対だ!!
日本経済が破綻とかしない限り!
そんなわけで、瑞穂はコンビニにカップ麺を買いに行くことにした。
勿論 、素っぴん、スウェット、サンダルという残念女子の3S装備で。
そんな矢先の事だった。
「うわぁぁぁぁぁ?!」
隣の部屋から不審な叫び声が、瑞穂の耳に入ってきた。
酔った勢いで更新した。
後悔はしていないが、これからするかもしんない。




