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現実の態度<<<<少女漫画情報

 瑞穂が目を覚ますと、既に昼過ぎだった。


 もっと腹が減ってても良さそうなものだが……


(……なんでだ、腹が減っていない)



 しかもなんか暖かい……布団の感触。

 それに、頭の下にちょうどいい高さの……



「……うっわぁぁぁぁぁ?!」

「お、起きたのか」



 半裸の美形兄さん。の、腕。



 おもわず飛び起きて後ずさった。


「まっ……まさか私?!」


 ……スウェットを着ている。

 どうやら懇ろになったわけではないらしい。


(そりゃそうだ……美形を食っても腹は膨れんのだった)


 では何故腹が減っていないのか。

 その疑問はとりあえず置いといて……


「え? なんで添い寝してんの?」

「ああ……くしゃみをしていたし、床では頭も痛かろうと。 ベッドに運ぼうかとも思ったが貴様が『ここでいい』と言うからな」

「はぁ……そりゃどうも?」



 何だ、親切か?……なんだかよくわからない。いまひとつ、状況が。



 寝起きの頭で、瑞穂は今までの事をゆっくり咀嚼するように思い出した。

 テーブルにはさきいかの袋と魚肉ソーセージの包み。


「……んん? 私はこれを食べたのかな?」

「ふっ……余が食べさせてやったのだ。 『腹が減った』と切なげに言う貴様の為にな」

「……食べさせた?……寝てる時?」

「そうだ(ドヤァ)」

「…………」



(……何だそれ?! えっ? 『ここで寝る』と言ったから添い寝して『腹減った』って言ったから食わせたと?! 何だそれ?!!)



 状況はわかったが理解に苦しむ。

 自分にも、目の前の美形にも。



(確かコイツは黒装束に身を包みゴミ捨て場に転がってカラスに群がられていたユアッショバデーな美形厨二の自称『魔界の王子』……)



 ──不審な点しかない。



 完全に瑞穂の中で『ヤベェ奴』認定を受けたデスヘルムト。(今更)

 徹夜明けでテンションがおかしくなっていたとはいえ、なんでこんなの拾ってきたのかと瑞穂は後悔した。

 目の前でどや顔をした彼に、害意は感じられない……ただひたすらよかれと思ってやってくれたんだろうとは思う。


「…………そろそろ服も乾いたのでは? なんだかすっかりお世話を掛けちゃったみたいで、却ってすみませんでしたね~。 どうぞ魔界にお帰りください」



 穏便に出ていって頂きたい……



 そう思った瑞穂は服をまとめて渡すと、てきぱきと部屋の片付けを始めた。


 そして服を着たデスヘルムトを、「せっかく服をお召しになられたので、ここにいると汚れてしまいますよ~」と掃除にかこつけて追い出し、頑丈に扉を施錠したのだった。




「…………おい、アモン」

「なんすか~」


 名前を呼ばれ、それまで姿を消していたアモンがぼふんと現れた。


「人間の女というのは……なかなか面白いな」

「え、あの態度でですか?」

「照れているのであろう? ……ふふ、余も少しは勉強したのだ、あやつの寝てる間に」


 デスヘルムトが勉強したのは瑞穂の本棚の本……つまり、少女漫画である。



「あれは……ツンデレというやつだ……!」


 ──バーン!(効果音)



 アモンはやや頬を赤らめながら、どや顔でそう自信満々に言う魔界の王子様に、


「なんと……!!(都合のいい誤解を!)」


 としか返すことが出来なかった。


「ふっ……このデスヘルムトを揺さぶろうとは甚だ生意気ではあるが……冷たくして気を引きたいというのは……まぁ、なんだ……可愛いと思わないこともない」

「へ……へぇ……そうすか……」


 どうやらデスヘルムトは完全に瑞穂を気に入ったらしかった。


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