炭水化物>>>越えられない壁>>>その他食物
((なんてイケメン……!!))
女子達はそう思った。
そして同時にこう思った。
((でも……服が残念──!!))
ミカちんは大天使にも関わらず、ピッタリした革ジャン革パン革ブーツという、
『お前どれだけ動物犠牲にしとるんじゃ……』
と、いう出で立ちであった。
しかも鎖系シルバーアクセサリー着用。
金髪ロン毛も相まって、さながらパンクロッカーだが……そこまでならいい。
そこまでなら、『そういう趣味の人』であり、『イケメンすぎるパンクロッカー』という認識で済んだのである。
しかし中に着ているTシャツが問題であった。
中央にでかでかと書かれた
『炭水化物♡万歳』。
妙に達筆でありながらも、ただようポップさが痛々しい。
『I♡NY』的な。
それは日本人から見ると、「『漢字ってチョーCOOL!!』みたいなノリで意味わからず着ちゃったんだろーなー」という、もの悲しさを感じさせた。
勿論、ミカちんは意味を理解した上で着用している……というか、彼のお手製である。
ミカちんは炭水化物だけでなく、サブカルも愛している為、某有名漫画の主人公に影響を受けた結果、シルクスクリーンで自ら作成したのだ!
某有名漫画の主人公に影響を受けただけなのだ!
決してパクリではないのだ!!
己がいいと思うものは、全力リスペクト──それがミカちん。
そんな影響を受けやすいミカちんだが、このような格好をしているのも、当然某ロッカーへの影響からである。
そして、それは炭水化物愛から発生していた。
ミカちんの心のテーマソングは打首獄門同好会の『日本の米は世界一』、ザ・クロマニヨンズの『うめえなもう』など。
米……それは、日本のこころ。
──非常にロックである。
ミカちんはラーメンも大好きだが、できればラーメンと共にご飯も食べたい派。
ラーメンをオカズにご飯を食べるもよし。
〆にスープにぶち込むもよし。
ご飯は万能、最強のコラボ相手だ。難点は腹が膨れるところ。
だが、心配は不要!
ミカちんの胃袋はブラックホールなのだ!!
「……もしかしてこの人も、芸能人じゃないの?」
そして微妙なファッションセンスは、逆にその可能性に説得力を与えていた。
ただ長々とミカちんの服について語り、文字数を確保したわけではないのである!
そう、久々の更新でそんなあざとい真似など誰が考えようか!
「あのっ……芸能人の方ですか?!」
「芸能人……ではないが、フッ、まあ、そこそこ知名度はある」
久々の更新過ぎて忘れていたが、ミカちんは有名炭水化物ブロガーだ!!
「あっ……握手してください!!」
「ズルい! 私も!!」
「握手……ふむ、神力の類は付与されんが、構わぬか?」
「なんかよくわからないけどカッコイイ! お願いします!!」
ミーハーな女子達は、デスヘルムトのことはすっかり忘れ、今度はミカちんに握手を求める。
それに気付いた他の人々も、その列に加わった。
『日本人は並ぶのが大好きな民族』というのは伊達ではない。
ミカちんは『どうせ暇だし』というユルい理由でそれに応じていたところ、アモンがやってきた。
「ミカちんさ~ん!」
「アモン氏」
更なる違うタイプのイケメン登場に場は騒然。
飛び交う、スマホカメラのシャッター音とフラッシュ。
「え、ミカちんさん顔出しはNGじゃないんすか?」
「いや? メニューよりも顔に注目されては、店に対して失礼極まりないからブログには上げていないだけだ」
「え~、じゃあ私とも撮ってくださいよ~。 ホラ!」
アモンはご自慢の自撮り棒を取り出した。
ふたりのイケメンの仲の良い様子に、ベーコンレタスの香りを感じた女子達は更なる尊さを求め、自ら人々の整理をし出す。
ふたりの世界を邪魔する者を、腐女子は許さないのだ!(嘘)
こうして騒動は終わりを告げた──
主人公らをほったらかしたまま。
「な、なんか、急に人がはけたわ……?」
「ふっ……捕まえたぞ、瑞穂」
追いかけっ子の末、デスヘルムトに捕まった瑞穂。
そもそもなんでこんなことになったのか考えるも、答えはわからず……普通に帰った。
いくらやんちゃだとはいえ、30オーバーの瑞穂はもうぐったりだったのである。
なにかツッコむのも、正直しんどい。
荷物を持ちたがるデスヘルムトに素直に持たせた。
「余にかかれば、この程度の荷物など造作もないわ!」
「さよけ」
──でも調子に乗ったデスヘルムトが小指一本で荷物を持とうとし、袋を落として卵を盛大に割った際はキレた。
今日も日本は概ね平和である。




