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魔王子様は嫁を探しているらしい。  作者: 砂臥 環


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16/28

ハチワレ≒榊原

 大蔵がようやく公園へと走り出す最中、それを待つ瑞穂は……ハチワレと格闘していた。


「フニャー!!」

「貴様ッ! 『ぬこちゅーる』が無くなった途端に掌を返しやがって、この獣風情が!! ちっ……2本目を出すしかないか……!」


『ぬこちゅーる』(税抜¥100‐)は1袋2本入りと、少々お高め。

 最後の砦である1本は取っておきたかったがやむを得ない。



 ハチワレはどうやら半野良のようで、なかなか食べ方が綺麗であることが救いだ。

 これが『ぬこちゅーる』ならぬ『がぶちゅーる』的にガツガツこられた場合、内容量的にもたすのは難しい。


 ……しかし、これも時間の問題だ。


 しかも獣の本能がそうさせるのか、はたまた瑞穂が雑だからなのか……榊原には可愛く抱かれていたハチワレだが、瑞穂が抱くととても嫌がる。



(早く来い……! 大蔵ッ!)

(おおけん……)


 目的は違えど、ふたりの願いはひとつ。



 急げ! 大蔵 賢一!!

 走れ! 大蔵 賢一!!


 君を待つ女性の為に──!




「──ってな感じですかねぇ……」


 アモンは例の鏡を見ながらそう呟きつつ、主……デスヘルムトをチラッと見た。

 デスヘルムトは何故か公園には行かず、バルコニー(※勿論作りました)に出ている。


(……なにを始める気だろう)


 別に何をしても基本は構わないのだ。

 魔族は人間の都合なんざ、お構い無しなので。


 ただ……碌でもないことをしそうな雰囲気が、プンプンしているだけである。




「バラさんッ!! ……園部さんッ!?」


 部屋を出るのは遅かったものの、走った大蔵が公園に着くのは思いの外早かった。

 アラサー瑞穂と違い、20代前半の彼は『走る』という行為からそんなに離れていない上、体力もある。

 そのお陰で『ぬこちゅーる』(2本目)はまだ半分近くあった。



 ……よし、これなら!!



「いいか、ハチワレ……全てはお前の演技力にかかっているのだからな?」

「フニャッ?」


 瑞穂はこちらに気付き、走り寄ってくる大蔵に見えないように『ぬこちゅーる』を手元に隠しつつ、悲壮な表情を作る。


「っのべさん! バラさんはッ……!?」

「残念だ……大蔵くん……」


 そして瑞穂はハチワレを持ち上げた。


「君が来るのが遅かったせいで、バラさんはこんな姿に……!! ……あっ!」

「フニャッー!!!」


『持ち上げた』と言うだけあって、瑞穂の粗雑さに不満を露にしたハチワレは、蠢いた挙げ句脱走してしまう。


 こうなるともう捕まえられない。


(えええぇぇぇぇっ!!?)


 動揺する榊原。



 ──だが瑞穂は諦めない!

 諦めたらそこで、試合終了だ!!



「……はい?! 一体何を言ってるんですか!」

「バラさんは……獣の(さが)に飲まれてしまったようだ……」

「はあぁ??!」

「──大蔵くん、あれはバラさんだ。 ……君ならわかるだろ? 突如現れた黒ずくめの美形のナンパを断ったバラさんは、呪いであんな姿にさせられてしまったんだ……」

「えええ?!」


 デスヘルムトは黒ずくめであり、『嫁を探している』と言っていた。


 今回デスヘルムトとは別の、それらしき人がいると匂わせてみたのだが……大蔵の反応は半信半疑、といったところ。

 まずまずの反応だ。


「ヤツは言った。 『真実の愛とやらを見せてみよ……愚鈍な人間よ』と」

「もしかしてそれは……!!」


(!!!!)



 ……ちゅーである。

 この流れはちゅーである。



 瑞穂はそんなつもりではなかったが、つい創作的にノリ過ぎてしまった。

 瑞穂は「あ、やべ」とちょっと思ったが……



 まあ……それはそれでいいような? ……気もする!

 けどやっぱり榊原ちゃんには悪いかな?!



 こうなってはそれこそ、『案ずるより生むが安し』──

 瑞穂はとにかく強引に計画を遂行することを選択。


「ええい! とりあえず愛を叫べ!! それで元に戻るかもしれんだろ!?」

「えぇぇぇぇっ!!? こんな……公園ですよ?! 人はいないけど、商店街が近いのに!!?」

「バラさんは猫だぞ!? しかも逃げてしまった!! 遠くへ行ったらもう捕まらないかも……!!」



 こうなるとハチワレが逃げたのはむしろ好機だ!!



 瑞穂は更に畳み掛ける。


「あの猫を見ただろ?! あの黒髪ショートボブ……あれは間違いなくバラさんじゃないか!」

「そっ……そう言われてみれば!!」


 実は榊原が数匹の猫の中からハチワレを捕まえてきた際、これは使おうと密かに目論んでいた。


(なんでかわからないけど、おおけん、信じてるッ!? ……えっ……ええっ?!)


 突如立った、ちゅーフラグに動揺を隠せない榊原。


(とっ……とりあえず!!)


 ちゅーフラグのことは一先ず置いといて……場の回収に使おうと考え、100均でついでに買ったパーティグッズを袋から取り出した。



 ──猫耳である。



 瑞穂の話を信じると思ってなかった榊原は、大蔵が心配して来てくれさえすれば、自らコレを着けて出ていき、告白しようと思っていたのだ。



 公園で、愛を叫ぶ決意を固めた大蔵。

 それを待ちドキドキしながら、猫耳をつける榊原。

 焚き付けるだけ焚き付け、ワクワクと成り行きを見守る瑞穂。




 ──だが、この後3人には予期せぬ展開が待ち受けていた。



 そう……デスヘルムトの『劇的な(ロマンチック)演出』である。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ちぃっ……! ムト様はまだ出番無しだったか……ッ! しっかりと踊らされちまったぜ……! しかしやっぱりぬこの確保は難しかったか……と思いきやの、この強引な畳みかけ……! 瑞穂ねーさん、色…
[良い点] 個性はありますが、ぬこという奴は抱き方が下手だと途端に暴れたりしますねえ。 瑞穂先生苦心のシナリオがここまでは上手くいったんですが。 やはり出るのですね。 魔王子様が。
[一言] だからハチワレだったのか!!ww いやあ、筆が乗ってますねえ砂臥さん!w そして次回メッチャ楽しみwww 全然予想つかないww
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