ネタ<<<嫌がらせ
「──よし!これでいくか」
「へ?」
「いや、こちらの話」
瑞穂は考えた。
碌でもない計画を。
「あのガウン美人は男よ」
「えっ!」
「しかも人じゃないの」
「ええっ?!」
意外にも真実をばらす瑞穂。
しかし、ここからが本当の勝負である。
「おおけんもそんなことを言ってましたが……」
「それより!! 私は大蔵くんの態度が気に入らない!
ここに宣言する! 簡単に解ける誤解を解かないというのは男の怠慢である、と!! 女は追い掛けられてナンボ……そうは思わんかね?!」
語気を強めながらそう捲し立てる瑞穂。
自らの誤解とわかり安堵したところにグイグイこられ、榊原は勢いに飲まれつつあった。
「そう……ですかね? でもおおけんの気持ちをハッキリ聞いたわけでは」
「フッ……まだそんな戯れ言を……いい? 大蔵くんはあの通りの安穏を好むヘタレよ? そんな彼が友人という保険をかけながらも合鍵を渡す……それは榊原ちゃん、貴女を好きだからに間違いないわ。
──しかし! だからといってこの所業が許されようか!?
……否!!
大蔵くんには手痛いお仕置きが必要、及びリスクを超えて貴女をモノにせんとする覚悟を示して貰おうではないか!」
「ええぇぇぇ?!どっ……どういうことですか?!」
混乱しているうちに畳み掛ける……!
そんな強引さを以て、瑞穂は計画を提示する。
──それはこうだ。
①「バラさんが大変だ!」と言って大蔵を呼び出す。
②大蔵が急いで来るも、榊原の姿はない。(※物陰に隠れて待機)
③「残念だ大蔵くん……君が来るのが遅かったからバラさんはこんな姿に……」(※捕まえてきた猫を見せて)
④「呪いを解かせる」と言って、大蔵に盛大に榊原への愛を叫ばせる。
「無茶苦茶ですよねコレ?! 大体誰がこんなの信じるんです?!」
「フッ……私の話術をおなめでないよ小娘!」
そう、瑞穂には勝算があった。
何故なら大蔵は、魔王子なんつーとんでもないモノに既に会っているのである。
動揺しているところにそれらしく畳み掛けてしまえば、今更『呪いを信じない』もない……そんな算段だ。
正直コレ自体、瑞穂にしてみれば没ネタみたいなものである。
面白くて、自分等だけでできそうなネタが他に思い浮かばなかったのだから仕方がない。
ラブコメのちょっとしたネタにでもなれば儲けモンであり……半分以上、ベタなネタしか提供できなかった大蔵への嫌がらせというか八つ当たりというか、そんな感じである。
「案ずるより生むが安し! アンズよりモモが安し! だ、バラさん!! さぁ、あそこの猫を確保し大蔵くんに電話を!」
「は……はい!」
榊原は半ば瑞穂の言葉に流される形ではあるが、計画に乗った。
何故なら大蔵がハッキリしないのは事実である。
そう……瑞穂は甚だしく自分勝手ではあるが、そもそもは気のある素振りを見せながらも、保身からあくまで受け身の態勢にある大蔵が悪いのだ。
──榊原は決意していた。
大蔵が瑞穂の言葉を信じなかったにしても、榊原がピンチだと聞いて駆け付けるなら……
だがもし駆け付けなければ、この想いには終止符を打とう、と。
はからずも、事態は劇的な様相を呈してきていた。




