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四十匹目 〜( はースキルつっかえ C・〉

 がさごそ、となるべく音を立てないように意識しながら、茂みの中を進む。

 俺自身の気配は《暗黒は刺客を覆い隠す》で消去してあるけど、出した音まで誤魔化せるかはわからない。

 だから凄く気を使って、こうして這いつくばっているわけなんだけれど………………

 かなりゆっくり動いているし、ドーナから教えられる相手の距離もまだまだ余裕があるので、大丈夫、だと、思う。

 思うけども………………なんか嫌な予感もする。

 ()()()()()()()で測られているような感じ、とでも言えばいいのか?

 完全に気配を消しているつもりでも、身体の隅を時々何かが掠めていくような感覚に襲われている。

 ………………え、大丈夫だよね、これ?


 《なぁ、ドーナ、これ………………?》

 《うん。なんかに引っかかってるねー》

 《引っかかってる?》

 《何らかの魔力的探査、若しくは龍脈の流れの歪みからの逆探知………………とかまぁ、そんなあたりでしょ》

 《………………なるほどわからん》

 《キミも相手もMPを持つ以上、どうやったってそれは消せないのさー。キミの《刺客》は、気配は消せても存在を消去できる訳じゃないからねぇー》

 《じゃあ、なんか《探知》とかそーゆーの使われたら瞬でアウト、ってこと?》

 《まー、よっぽどのことがない限りは大丈夫だと思うけどねぇ。《暗黒を纏いし者》のリソースは、大体《死》の方に流れてるけどー。でも《刺客》だって立派な《超異能(スパリティ)》だから、相応のランクのスキルじゃないと看破されないはずだよー》

 《ならいいか………………》


 とりあえずは進むしかないので、草音に苦い顔をしながら匍匐前進を続けた。

 なんとも言えない不気味さがある上、どことなく足が動きづらくなってきた。

 ………………もしかして、これもなんかのスキルだったりする?

 もう全てに警戒した方がいいんでない?

 心なしか、どんどん草木の音がでっかくなってる気がするしなぁ。

 気のせいか、すぐ近くに獣が居るような感覚がまた………………?


「ブルルルルッ………………フス、シュゥ………………」


 すぐ近くから、何かの荒ぶる声が聞こえるような気が! これ今日何回繰り返すんだマジでっ!

 どころじゃない! なんかいる、なんかいるって!

 急な来客に慌てて、取り敢えず近くにあった木の上に登る。

 途中で滑り落ちそうになったり、軽く足場を踏み外したりしたが、なんとか木の上まで辿り着いた。

 身の安全が確保できたので、ちょっと一息。


「チュウゥゥゥウ(ふひぃーーー)」


 落ち着いて眼下へと目をやる。

 そこに居たのは、【波動猪(サイオンボア)】と打たれた、深い青に染まった毛を逆立てる猪の姿。

 《女神は真実を看破する(アンダスタンド)》で見てみても、誰かにテイムされてるような表示も、何者かに操られているようなそぶりもない。

 鼻息荒く歩く【波動猪】が通り過ぎるのを待ちながら、先程から何度も繰り返しているこの遭遇について考える。

 一回一回遭遇する個体こそ違うものの、さっきから何度か魔物・魔獣に遭遇している。

 が、その都度確認してみても先述のとおりで、組織だった行動をしているわけではないらしい。

 それにしては出くわす頻度が多すぎるような気がするけれども………………俺が夜の森に疎すぎるだけか、もしや。


 《キミは多分見つかることは無いと思うけどー。キミのその《透明化》も中々様になってることだしー?》

 《あぁ、これか》


 木から下りる俺の両前足が透き通って見える──────いや、見えないのを確認しながら、俺は焚火の方に向かう。

 実はさっき、木に登ったあたりでスキル《透明化》──────あの【透単蝙】から受け継いだスキルだ──────を発動、意外と燃費がいいことに感謝しつつそのまま待機していたのだ。

 絶対的に姿を隠せるスキル持ってるくせに日和ってんじゃねぇ、とか思われるかもしれないが、ちょっと待って欲しい。

 元々、《暗黒は刺客を覆い隠す(シャドーアンダー)》には、『知覚された相手には効果が無い』という、考えてみればまぁ当たり前の欠点があった。

 既に『居る』と分かっているものを隠蔽するには無理があるのでこれは仕方のないことだけれど、問題はこの欠点が活かされてしまうことにある。

 ミーニャのように、今まで俺がの遭遇してきた相手にはあまりいなかったタイプだが、『()』のようなもので理不尽に察知してくる相手がいないとも限らない。

 そうした時、そんな理不尽によって、まだレベルの低い俺にとっては虎の子の《刺客》を封じられてしまったら、逃げるにせよ勝つにせよ、可能性は限りなく低くなってしまう。

 だけれどここで、一つ俺は思いついた。

 それ即ち、『感知されても認知されなければ知覚とは言えないのでは?』説である。

 詰まるところ、勘でなんとなく察せられてしまうのはもうこの際、仕方がないこととする。

 だけど、察せられてこちらに意識が向いた時でも、俺の姿が見えないのなら問題はないのでは、的精神だ。

 このスキルを得てから考えたことだが、案外正鵠を得ている気もする。


 《………………あんな経験は二度とゴメンだけどねー》

 《奇遇だな、俺も今おんなじこと考えてた》


 そう、実は二回、この仮説を検証したのだ。

 一回目は、こうして魔獣がやたらと出現することが分かってから、試してみようと思い立ったから。

 此方が先に感知したので木の上に避難していたら、シュルシュルと舌をちらちらと覗かせながら【爆毒蛇(ボムベノムサーペント)】が近寄ってきた。

 《刺客》が発動していない状態で透明だった場合見逃してくれるのかを確かめる為、《刺客》を切り冷や汗をかきながら木の上で全裸待機ならぬ全透明待機をしていたのだが………………結果から言えば、()()()()

 よくよく考えればアレなのだが、蛇って目でモノを見ることは無く、体温とか温度とかそういうもので知覚しているらしいね。

 だからきっと、あの時【爆毒蛇】からしたら、『全く姿は見えないけどあそこになんかいるわ』って感じだったのだろう。

 そんな状態だったから、【爆毒蛇】さんは普通にこっちに近寄ってきて、そんでもって大きなお口をよく開いてくれて、歯医者さんで喜ばれること請け合いみたいな感じになった。

 直前まで蛇の知覚事情について思い至らなかったお馬鹿さんこと俺は、ギリギリで【爆毒蛇】さんのお口軌道上から逃れ、なんとか《暗黒は死を振りかざす(シャドーブラック)》を叩きこんで身を護ることはできた。

 【爆毒蛇】の等級が(ロク)──────因みにそれ以前と以降に会った魔獣は全て碌以上だった──────だったのは見えていたから戦々恐々してたし、名前の『爆毒』を喰らったら一体どうなっていたのか、想像もしたくない。

 結局、《透明化》と《暗黒は刺客を覆い隠す》のシナジーは確認できなかったということになる。

 とはいえ【爆毒蛇】さんの持っていたスキルを《女神は伝説を語り継ぐ(リコレクション)》で吸収させてもらったところ、《毒ノ使ヒ手(野)》が《毒ノ術者(ポイズン・キャスター)》に進化したので、完全に収穫がゼロという訳でもない。

 俺の血肉になっていただいた【爆毒蛇】さんに南無南無してからその場を後にした。


 《まぁでも、なんだかんだいい経験になったんじゃないか? 蛇系と戦うときは視覚はそんなに重要じゃない、ってさ》

 《まぁねー。結局あの後の【抉爪熊(アサルトクロゥベア)】で実験できたわけだしねー》


 そう、ドーナの言う通り、あの後に【抉爪熊】という魔獣に遭遇した際、透明化がうまく機能したことが分かった。

 木の上どころか樹の幹につかまりながらの実験だったけど、気付かれることなくスルーされた。

 暗い森の中、という条件はあるにせよ、とりあえず『透明ならば(視覚で認識する相手には)認識されない』ことは判明した。

 ………………ま、こっから『実際に姿を見られなければ知覚と言えるか否か』を検証してみない事には、そんなに意味はないんですけどねー。

 と、考えながら歩いていたら、結構かなり近くまで来ていたようで、パチパチ、と火がはじける音が聞こえてきた。

 こっそりと茂みの陰からのぞくと、小川のすぐそばにキャンプ台を設置した男(?)が、焚火に火をくべているところだった。

 流石にこちらから見える範囲だし、今まで見た魔獣とは一線を画す相手だと思ったので、《刺客》を起動させる。

 同時に《透明化》も使って、完全に気配を消し、存在感を消す。

 茂みの中から恐る恐る聞き耳を立てていると、なにやら喋っているのが分かる。

 分かる、ということは、あの男(?)が呟いている言語は、ソフィーさんや【傲慢勇者】のヤロウが話していた時の言語と同じ、ということだ。

 もしコミュニケーションを図る機会があれば、それなりにスムーズに意思疎通できるだろう──────俺が只の鼠だという点を除けば。


「クッソ、頭が痛ェ。なんだ、脱水か、それとも魔力欠乏か? 今日はほぼスキル使ってねぇし、水はさっき飲んだばっかだぞ………………?」


 なにやらぼそぼそと呟き、頭を掻く。

 その時、帽子から飛び出た()()()がふさふさと揺れた。

 ………………見た目上は、尻の尻尾、頭の耳など、獣人みたいな感じがする。

 獣人の男──────今後は基本ひとっぽい生き物は男・女で区別する──────は向こう側を向いているので、鼻がどうなっているかは分からない。

 だけどまぁ、あれがコスプレ趣味とかでない限り、あの男はミーニャやミュータロー、ナーガと同じように獣人の一種であるのは間違いないだろう。

 耳の形は犬っぽいが、先入観は禁物………………っと!?


「まさか、この辺になんかいるのか? オレのスキルを掻い潜って? ンなまさか………………とは、言えねぇか。エムルシンさんも世界は広いって言ってたしな」


 そういいながら、突然立ち上がり、こちらに向けて歩き出したじゃありませんか!

 やべぇ、どうしよ、どうしよ!?

 ミーニャと同じ獣人なら勘で察知されてもおかしくないけど、今は透明だから大丈夫か!?


「………………こっちか」

「!?」


 ………………って、動きを止めないっ!?

 俺がどこにいるのか分かってんのかよ!?

~( `ϖ´)<次回まではしばらくかかりそう


~( `ϖ´)<あ、スカディ来てくれました

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