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三十三匹目 〜( 強くなれる理由 C・〉

 《天暦※※※※※※年 八月 九日 AM7:00》


 あれから、一晩が過ぎた。

 ナーガは、別れ際に「情を移したくないのでな………………悪く思うな」と言っていた。

 元々が見ず知らずの相手、ここで俺を離脱させるのも間違いではない。

 そこに罪悪感を抱いている辺り、ナーガは苦労人だろう。


 《だからと言って、俺が情を移してない訳じゃないんだよな》


 そう、俺はもう、あいつらを仲間だと思っていた。

 同じ敵に立ち向かい、同じ人を助けたいと願い、行動に移した。

 その点で間違いはない筈だ。

 いずれの日にか、俺は、彼らの住処に伺いたい。

 その為の調査も含めて、俺は今、ソフィーさんの家に来ていた。


 《まぁそりゃ、居ないよな》

 《そうだねー。生体反応は検知出来ないよー》

 《そうか………………》


 因みに、あれから後にひたすら謝り倒したら、ドーナは許してくれた。

 今はもう機嫌を直している。


 《ま、そうでもなきゃ、此処に来ることなんて許さなかったからねー。ちょっとでも残党が居れば、問答無用で帰らせるつもりだったからねー》

 《問答無用って………………どうやってだよ?》

 《んー、《精神干渉》手に入れるとか?》


 知らない異能の名前が出て来てしまった。

 適当にはぐらかされた感じはあるが、まぁいい。

 今の問題は、そこじゃないからな。


 《ところでドーナ、お前、ミーニャ達の遺物を探す、とか出来ないの?》

 《出来るわけないでしょぅ?》

 《何で?》

 《………………良いかい? ボクが出来るのは、キミの頭で出来る範囲内で、その精度を上げることだけだからね? 気配を感じる感覚は普通はあるから良いけど、他人の特定の持ち物を探すなんて、むりむりー》

 《………………元神様なのにかぁ?》

 《見習い、ね。それも誰かさんのお陰で、神核消えちゃったしー》


 もしかしなくても、それは俺のことだけど、言うとメンドそうなので言わないことにする。

 小気味のいい音を立てながら、俺は草むらを進んだ。


 そして、辿り着いた。

 そこにあるのは、家の残骸。

 何か円形のモノでぶち抜いた様な跡がある。

 一直線に家の中を貫いているその様子から、これはソフィーさんでなく、あの馬の仕業だと分かる。

 あの馬の口腔ビーム(仮称)は、それくらいの威力はありそうだった。


 《あれは多分、《光ノ(マジックオブ)使ヒ手(・ライトニング)》系統、《光ノ(ライトニング)賢者(・ワイズマン)》の発展系だねー》

 《………………なんだそれ》

 《光属性の闘法異能の、上から二番目の等級。かなり強い部類だよー》

 《………………そうか、ありがとう》


 飛び出した一件以降から意識している、感謝を述べた。

 何処か満足そうな様子である。

 神というものは不思議なものだ。

 人間一人、ネズミ一匹に動かされる感受性を持っている辺り、ギリシャとかの神様に近いのかも知れない。

 その分、かなりの横暴をする可能性はあるけど。


 何処にもソフィーさんの姿は無かった。

 正直、やっぱりか、とは思った。

 また会ったときに話す、と了解しておきながら、俺はその約束を果たす努力は出来なかった。

 自分の無力感に苛まれ、何度もあの時の最善を模索するが………………あれ以上のことは、自分には出来そうもなかった。

 良い作戦を思いつくことも、一人の異能でなんとかすることも、巧みな弁舌で退けることも出来なかった。


 ………………でも、折れてはいけない。

 ここで折れたら、ソフィーさんから何も学べていない。


 ――――――『誰もが優しく暮らせる、平和な世界をつくる』。

 それが、あの朝焼けに誓った、俺の夢だから。

 その為には、まずは目の前の人を助けられる強さを身に付けなければ。


「チュ………………(よし………………)」


 俺は駆け出す。

 見つけた、黒焦げになったソフィーさんのローブを咥えながら。

 きっとまたいつか、


 ここで五人で笑う為に。




 とは言え、俺は何をすればよいのだろうか。

 草むらの中で考える。

 今ミーニャ達の村に行こうにも、場所がわからんし、拒絶されるかも。

 だったら、いっそ一人暮らしか。


 《一人暮らし、憧れてたんだよなー》


 親の呪縛から逃れること。

 これ、割と世の中高生の切実な願いじゃない?


 《呑気なもんだねー》

 《? なんで?》

 《キミが思ってる一人暮らしは、色々な人の上にあるのさー。これは唯のサバイバルだよー》

 《サバイバル………………》


 そう言われ、はっとする。

 正論だった。

 正論だからこそ、きちんと答えなければならない。

 ………………俺の読んでた小説からの引用だ。


 《ま、なんとかなるだろ》

 《はぁ………………まぁ、そういうハングリー精神は悪くは――――――》

 《なぁなぁ、空腹感が何気にヤヴァイんだけど、なんか食べ物ない?》

 《結局人に頼るー!》

 《? オマエ、人じゃないだろ? もっと言えば、俺だって今は人じゃねーし》

 《〜〜〜〜〜っ!》


 やっぱり正論だった。


 《そーゆーのは揚げ足取りって、言うのさー!》

 《はいはい………………お、あの木の実とか食えそうだな》

 《人の話聞く〜〜〜!》

 《だからオマエ》


 やっぱり、やっぱり正論だった。

 ところで、俺の見つけた木には、リリゴの実がなっていた。

 あの丸いシルエット、太陽の光を浴びて輝く張った皮、みずみずしさの具現とも言える香り。

 間違いない、どれを取っても、俺が貰ったリリゴの実だ。


「チュウ(うまそ)」


 顔を近づけずとも、思わず口に出すほどの芳醇な香りが漂っている。

 最早何も疑うことなく、俺は数歩進む。

 木をよじ登り、眼前に木の実。

 そして。


「チュチューウ(いただきマッス)」


 大きく口を開けて齧ろうとした。


 ………………その時。


 唐突にリリゴの実が消えた。

 いや、違う。

 消えたのではなく、取り込まれたのだ。

 ウネウネと軟体動物のように蠢く木皮の中に消えていったリリゴの実。

 やがて表面から見える木の実の膨らみは、木の上の方へ運ばれる。

 そして枝から飛び出して、くるりと背中を向けた。

 いや、これも違う。

 見せたのはは背中ではなく、眼球だった。


「チュウ………………(まじで………………)」


 硬そうに見えた枝を触手のように蠢かす。

 根も土から引き抜き、節足動物の脚の様に動かす。

 いつの間にか二つに増えていた眼球は、こちらを値踏みするかのように見据えていた。


 ………………やばい。

 サバイバル生活開始数秒で、いきなりのピンチに見舞われた。

~( `ϖ´)<大分遅れましたが続きです


~( `ϖ´)<いや、もう色々とありまして


~( `ϖ´)<今月はこれで最後になるかと………


~( `ϖ´)<ご了承の程………



~( `ϖ´)<ご感想、その他お待ちしております!

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