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32/43

三十二匹目 ~( 殿 C・>

~( `ϖ´)<続きー


※一部表記修正あり。

 ああ、四人とも、ちゃんと逃げられたろうか。

 さて。

 私はと言えば。


「はぁ!」

「糞がぁぁぁぁっっ!」


 魔馬──────あれは見たところ、主な三種の内の、【悪魔馬(デビル・ホース)】と呼ばれる種だったはず。

 あれは乗り手とのシナジーが難しい筈だったけれど、目の前の相手が苦戦しているようには見えない。

 恐らく、一人と一頭は、一心同体とも呼べるような構造を持っているのだろう。

 そして。


「爆ッ!」


 先程から私が撃っている魔法──────異能、《爆ノ(レジェンド・)伝説(オブ・ボム)》も、効いている気配が無い。

 就いている職業だって、修練をロクにしていないとは言え、一応最高ランクのモノだ。

 私に施される職業支援だって最高ランク。

 等級(はち)はくだらない筈だ。

 だのに、何故か。


「てゃあぁっ!」


 最も威力を発揮するはずの中距離から撃つ魔法も、爆風のくす玉と化してしまう。

 ならば、そうだなぁ。

 両親から受け継いだ筈の戦闘センスをフルに活用する。

 きっと私は、考えるよりもそっちの方が上手く行く。


「フッ!」


 左右に身体を揺さぶり、魔馬の右脇腹から詰め寄る。

 一メートル程の座標に爆発地点を設定し、直ぐに飛び退く。

 凄まじい音を立てて爆発し、しばらくして爆炎が収まったが………………相変わらず、相手には傷一つ無い。

 先程から、この繰り返しだった。


「何か? 貴様も猿の同類か? 学習というモノを知らぬのか、アァッ!?!」

「ハ。貴方に言われたくはないわ!」


 浴びせ掛けられる勇者の言葉を、軽口で以て返す。

 普通にしていれば、中々整った顔立ちをしているのに、こうして取り乱すのは非常に勿体ない。

 まぁ、私の好みではないけど。

 大方、私の言動が気に入らない、と言うよりも、私にそんな言動をされる自分が嫌いみたいだ。

 ………………ほんっと、傲慢。


「たぁ!」


 今度はターンしつつ、魔馬の左脇腹に向かう。

 そして、ついさっきと同じ様に、また魔法を発動させる。

 今度は、ついさっきよりも少しだけ出力を上げた。


「くぅっ!」


 勇者が苦々しげな顔をするのを見届け、私はまた飛び退く。

 効いて来ている、精神的に。

 私の魔法をシャットアウトするほどの結界なら、普通に考えてかなりの魔力を浪費する筈。

 私が一発に込める魔力量は100、彼はその数倍から数十倍の魔力を、一秒間に使用し、尚且つ継続消費しているだろう。

 逆に言えば、そうでなければ割に合わないのだ。

 私の魔法をシャットアウトするだけの結界を用いるなら、それくらいしないと割りに合わない。

 しかし、その『割に合わなさ』を無視して然るべき存在が一枚噛んでいるなら、話は別になる。

 ………………別にはなるが、まぁそんなのは滅多に無いだろう。


「ハァァァァッッッ!」


 今度は左右のフェイントはせず、真っ直ぐに突進する。

 敏捷力をフルに発揮し、屈んだ体勢で、馬の口まで辿り着く。

 そして、私はまた爆発させる。


「バァカめがアッ! 貴様の、魔法など、余の、前、に、は………………?」


 少年が訝しむのも当然だ。

 私は先程の爆発に指向性を持たせた。

 ただ球状に爆発するのではなく、円盤状にして、彼の視界から私の姿を消した。

 そしてその爆発の余波を利用して、思いっ切り後ろへと飛び、木の影に体を隠した。

 魔馬の口腔が眩い光を帯びてゆく。

 勇者の口角が上がり、そのまま彼は言った。


「その程度で隠れた積もりかぁッ、ハァッ! 貴様如きの姿、余に追えぬ筈が無いだろうが、アァッ!?」


 その通り、彼はなんだかんだで目が良い。

 先程のターンやジャンプで揺らしたローブの先を、彼の目線は正確に捉えていた。

 だからこそ、私はこうした。

 見つかる危険がないではないが、そうするのが手っ取り早い、そう判断したから。

 そして魔馬が嘶き、口腔の光は一筋の光線となって、一直線に飛ぶ。

 空気中の魔力を蒸発させながら凄まじい光を発するそれは、寸分の狙いも違わず、私のローブを燃やし尽くす。


「………………」


 だが、()()()()だ。

 今なお燃え続けるのは、私のローブだけ。

 私自身には、一切の怪我はない。

 簡単な話だ。

 私は、予め印象付けておいたローブを途中で脱ぎ、側の木に掛けておいた。

 そして、少年の血が登った頭なら、直ぐに勘違いするだろうことは織り込み済み。

 そして今、私は馬の足元へ入り込んでいる。


「貰ったぁ!」


 この魔法には指向性がある。

 本当に便利だ。

 今こうして、まるで槍の様な爆炎に加工できているのも、そうした工夫が出来るからだ。

 一瞬にして熱された空気が膨張し、爆ぜるような音をしながら周囲の空気が弾け飛ぶ。


(………………)


 だけど、私は冷や汗を流した。

 ここまで整った状況で、到底抜け出せない死の舞台からは、誰も逃れられない筈。


「あぁ………………()()()()


 否………………()()()()、だ。

 現に少年は何事もなかったかのように振る舞う。

 その豪華絢爛な衣服には、煤の一つも付いてはいなかった。

 まずい!


「ぐふぅ、うぅっ!」


 虎穴に入らずんば虎子を得ず、とはよく言ったものだ。

 失敗するとこうなることも、きっと製作者は意図していたのだろう。

 魔馬の前脚の下敷きになった私に、少年が言う。


「失望、したよ。貴様には、もう少し聡明な行いをして欲しかったものだというのに………………」


 一丁前に憂い顔を浮かべて言う少年の姿に、私はなんとも言えない不甲斐なさを覚えていた。

 それはと言うと。


「はっ………………私、と、したことが………………勇者様、に、失望される程、落ちぶれたとは、ねぇ――――――がはあっ!」


 馬の脚に込められる力が強くなる。

 為す術なく呻き声だけを漏らす私の姿を、一瞥した少年は、一言だけ言った。


「貴様も、《超異能》を侮った口か………………嘆かわしいものよ」


 そして間もなく、私の視界はブラックアウトした。

~( `ϖ´)<彼女と彼の違いはありますが


~( `ϖ´)<最たる違いが《超異能》でした


~( `ϖ´)<あれ一つで、本当に強さは変わります



~( `ϖ´)<ご感想、その他お待ちしております!

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