三十二匹目 ~( 殿 C・>
~( `ϖ´)<続きー
※一部表記修正あり。
ああ、四人とも、ちゃんと逃げられたろうか。
さて。
私はと言えば。
「はぁ!」
「糞がぁぁぁぁっっ!」
魔馬──────あれは見たところ、主な三種の内の、【悪魔馬】と呼ばれる種だったはず。
あれは乗り手とのシナジーが難しい筈だったけれど、目の前の相手が苦戦しているようには見えない。
恐らく、一人と一頭は、一心同体とも呼べるような構造を持っているのだろう。
そして。
「爆ッ!」
先程から私が撃っている魔法──────異能、《爆ノ伝説》も、効いている気配が無い。
就いている職業だって、修練をロクにしていないとは言え、一応最高ランクのモノだ。
私に施される職業支援だって最高ランク。
等級捌はくだらない筈だ。
だのに、何故か。
「てゃあぁっ!」
最も威力を発揮するはずの中距離から撃つ魔法も、爆風のくす玉と化してしまう。
ならば、そうだなぁ。
両親から受け継いだ筈の戦闘センスをフルに活用する。
きっと私は、考えるよりもそっちの方が上手く行く。
「フッ!」
左右に身体を揺さぶり、魔馬の右脇腹から詰め寄る。
一メートル程の座標に爆発地点を設定し、直ぐに飛び退く。
凄まじい音を立てて爆発し、しばらくして爆炎が収まったが………………相変わらず、相手には傷一つ無い。
先程から、この繰り返しだった。
「何か? 貴様も猿の同類か? 学習というモノを知らぬのか、アァッ!?!」
「ハ。貴方に言われたくはないわ!」
浴びせ掛けられる勇者の言葉を、軽口で以て返す。
普通にしていれば、中々整った顔立ちをしているのに、こうして取り乱すのは非常に勿体ない。
まぁ、私の好みではないけど。
大方、私の言動が気に入らない、と言うよりも、私にそんな言動をされる自分が嫌いみたいだ。
………………ほんっと、傲慢。
「たぁ!」
今度はターンしつつ、魔馬の左脇腹に向かう。
そして、ついさっきと同じ様に、また魔法を発動させる。
今度は、ついさっきよりも少しだけ出力を上げた。
「くぅっ!」
勇者が苦々しげな顔をするのを見届け、私はまた飛び退く。
効いて来ている、精神的に。
私の魔法をシャットアウトするほどの結界なら、普通に考えてかなりの魔力を浪費する筈。
私が一発に込める魔力量は100、彼はその数倍から数十倍の魔力を、一秒間に使用し、尚且つ継続消費しているだろう。
逆に言えば、そうでなければ割に合わないのだ。
私の魔法をシャットアウトするだけの結界を用いるなら、それくらいしないと割りに合わない。
しかし、その『割に合わなさ』を無視して然るべき存在が一枚噛んでいるなら、話は別になる。
………………別にはなるが、まぁそんなのは滅多に無いだろう。
「ハァァァァッッッ!」
今度は左右のフェイントはせず、真っ直ぐに突進する。
敏捷力をフルに発揮し、屈んだ体勢で、馬の口まで辿り着く。
そして、私はまた爆発させる。
「バァカめがアッ! 貴様の、魔法など、余の、前、に、は………………?」
少年が訝しむのも当然だ。
私は先程の爆発に指向性を持たせた。
ただ球状に爆発するのではなく、円盤状にして、彼の視界から私の姿を消した。
そしてその爆発の余波を利用して、思いっ切り後ろへと飛び、木の影に体を隠した。
魔馬の口腔が眩い光を帯びてゆく。
勇者の口角が上がり、そのまま彼は言った。
「その程度で隠れた積もりかぁッ、ハァッ! 貴様如きの姿、余に追えぬ筈が無いだろうが、アァッ!?」
その通り、彼はなんだかんだで目が良い。
先程のターンやジャンプで揺らしたローブの先を、彼の目線は正確に捉えていた。
だからこそ、私はこうした。
見つかる危険がないではないが、そうするのが手っ取り早い、そう判断したから。
そして魔馬が嘶き、口腔の光は一筋の光線となって、一直線に飛ぶ。
空気中の魔力を蒸発させながら凄まじい光を発するそれは、寸分の狙いも違わず、私のローブを燃やし尽くす。
「………………」
だが、それだけだ。
今なお燃え続けるのは、私のローブだけ。
私自身には、一切の怪我はない。
簡単な話だ。
私は、予め印象付けておいたローブを途中で脱ぎ、側の木に掛けておいた。
そして、少年の血が登った頭なら、直ぐに勘違いするだろうことは織り込み済み。
そして今、私は馬の足元へ入り込んでいる。
「貰ったぁ!」
この魔法には指向性がある。
本当に便利だ。
今こうして、まるで槍の様な爆炎に加工できているのも、そうした工夫が出来るからだ。
一瞬にして熱された空気が膨張し、爆ぜるような音をしながら周囲の空気が弾け飛ぶ。
(………………)
だけど、私は冷や汗を流した。
ここまで整った状況で、到底抜け出せない死の舞台からは、誰も逃れられない筈。
「あぁ………………五月蠅い」
否………………筈だった、だ。
現に少年は何事もなかったかのように振る舞う。
その豪華絢爛な衣服には、煤の一つも付いてはいなかった。
まずい!
「ぐふぅ、うぅっ!」
虎穴に入らずんば虎子を得ず、とはよく言ったものだ。
失敗するとこうなることも、きっと製作者は意図していたのだろう。
魔馬の前脚の下敷きになった私に、少年が言う。
「失望、したよ。貴様には、もう少し聡明な行いをして欲しかったものだというのに………………」
一丁前に憂い顔を浮かべて言う少年の姿に、私はなんとも言えない不甲斐なさを覚えていた。
それはと言うと。
「はっ………………私、と、したことが………………勇者様、に、失望される程、落ちぶれたとは、ねぇ――――――がはあっ!」
馬の脚に込められる力が強くなる。
為す術なく呻き声だけを漏らす私の姿を、一瞥した少年は、一言だけ言った。
「貴様も、《超異能》を侮った口か………………嘆かわしいものよ」
そして間もなく、私の視界はブラックアウトした。
~( `ϖ´)<彼女と彼の違いはありますが
~( `ϖ´)<最たる違いが《超異能》でした
~( `ϖ´)<あれ一つで、本当に強さは変わります
~( `ϖ´)<ご感想、その他お待ちしております!




