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二十八匹目 ~( 神の意思を伝える者達 C・>

 《天暦※※※※※※年 八月 八日 AM5:00》


 俺とソフィーさんは二人で朝日を眺めていた。

 今まで迎えたどの朝よりも清々しい朝で、まるで神様が俺を祝福してくれているかのようだった。


 《………………いや、それはないでしょー。キミ、神様見習い(ボク)を殺したって思われたからここに来たわけだし》

 《うるせぇな、そんくらい分かってる。俺だってやりたいことの一つや二つ、神様なんぞの手助けが無くたってやり遂げてやるさ》

 《………………ま、キミが生きる目的を得てホッとしたよー。ネズミになって生きる気力を無くして自殺なんかされたら、消えるのはボクも一緒なんだからねー》

 《はいはい》


 軽口を心の中で叩きながらも、何処か晴れやかな表情をしているのが自分でも分かる。

 今までは親の言う通りに勉強し、習い事に通い、スポーツで体を動かしていた俺にとっては、初めての感覚。

 ………………まぁ、現代の学生の中には多かれ少なかれ将来を見据えていない青年が居て、俺が特殊ではないやも知れないが。

 それでも、生きる目的を、成すべきことを見つけた俺は確かに活き活きとしている。

 子供っぽくたって良い、馬鹿らしくたって問題無い、本人のやる気が漲れば、なんだって構わない。

 これからは、そう信じていける。

 今だって走り出したい気分だ。


 《いや、そうだとしても落ちるのはマズいでしょー!》

 《………………ぇ?》


 そう言えば、確かにさっきから遠くの太陽(?)が、元の位置より上に移動している気がするなぁ。

 いや、確かに走り出したいとは言ったし、早く行動に起こしたいとは思っていた。

 いや、でも、気持ちだけで体が勝手に走り出したのか?

 案外この世界では有り得ることなのかも知れないけど、今の俺では分からない事が多すぎるので一旦保留にしておく。

 今度ソフィーさんとかミーニャ達に聞いてみないとなぁ。

 って。


 《うわァァァァああああ!? 落ちてる落ちてる落ちてるゥ!? やばいヤバイ野梅! 下、下は!?》


 ようやく事態を頭が飲み込み、今更ながらも安全を守ろうとする。

 下を見れば、青々と茂る葉の群れが俺を待ち受けている。

 結構葉の量はありそうだ、このまま真っ直ぐに落ちたら、ひとまず命は助かるだろう………………


「グェエッ!(ぐぇえっ!)」


 《おお、声と気持ちが初めてシンクロしたねー》

 《言ってる、場合、かよぉ………………》


 俺は、いくつかある枝の一つにしがみつき、落ちないように必死に爪を立てていた。

 この体だと、こういう時にがっちりと体を固定出来るから、こういうときは便利かも。

 ドーナが然程慌てていない事を考えると、コイツは最初からあまり心配していなかったらしいが、正直、命が助かって本当に良かった。

 ついさっき生き甲斐を見つけたのに、もう死ぬとか、笑い話にもなりゃしない。

 と、思っていると、しがみつく枝が、木ごと大きく揺れた。


「ニュウウゥゥゥ(にゅううぅぅぅ)」


 しばらくして揺れは収まったので下を見るも、木を揺らしていたらしき人影は見えない。

 と、なると。


 《地震?》

 《どうやらそうらしいねー。地中の魔力の流れが乱れに乱れてわけ分かんないことになってるしー》

 《ああ、だから俺は落ちたのか》


 二人で朝日を眺めていたところを地震に襲われ、うっかり俺をソフィーさんが落としてしまったのか。

 およそ彼女らしくないミスだけど、それで説明はつく。

 取り敢えず彼女の安全を確認しようと、俺は葉の間から上を見上げた。

 が、彼女の姿は見当たらない。


 《ドーナ、音は聞こえなかったけど、建物の被害は?》

 《うーん、無いっぽいね。皆無事だよー………………》


 ふと、コイツの言葉が淀んだ気がした。

 嫌な予感がして、問い詰めてしまう。


 《ドーナ、どうした? 何かあったのか!?》

 《ちょい待ち、今察知してるけど………………なにこれ、真っ黒な球体?》

 《………………ッ》


 嫌な予感に身を任せ、急いで木から降りる。

 ガサガサと音を立てながら、全速力で建物の裏手に回った。

 手足の短いこの体が恨めしい。

 必死に前足と後ろ脚を動かしていた体を前に進め、肺が保つ全速力で駆ける。


 ようやく家の玄関前に辿り着いた俺は、謎の人影を目にした。


「チュ………………(ぅ………………)」


 いや、正確に言うなら、それはほとんど人の影ではなく、馬と椅子の影だった。

 筋骨隆々で、昔父の付き合いで行った競馬で見たそれよりも二回りほど大きく、蝙蝠のような羽を背中から生やした、美しくも禍々しい魅力を放つ馬の姿。

 見たところ、ダイヤモンドやルビー等のきらびやかな石が至るところに施され、その上で馬の背に乗る程度には洗練されたデザインの椅子、いや、玉座。

 その上には。



「早くあの女を出せ! 余が態々このような辺鄙な場所まで出向いてやったのだ! これで姿を表さぬ事が許されると思っているのか!? 神の裁きを喰らいたいか! 殺さずにおいてやったのは余の寛大な心である! 愚民は即刻余の前にその汚れた面を見せよ!」



 馬の背の玉座の上で偉そうにふんぞり返る少年の姿。

 頭からは、乗っている馬と同じく一本の角が飛び出し、そして毛皮をふんだんにあしらったコートを纏い、ゴテゴテした王冠を被るその姿は、小学校の演劇を見ているかのようで。

 しかしその姿、その周囲からは並々ならぬ魔力の流れが感じられる。


 《あ、見えた?》

 《見えた、って事は、これ、お前が?》

 《そそー。便利かと思ってねー》

 《サンキュ、やっぱお前天才》


 何やら頭の中で照れているような威張っているような声が響くが、今は一旦無視する。

 観察を続けて居ても、こちらに気付いている様子は無いので、取り敢えず《暗黒は刺客を覆い隠す(シャドーアンダー)》を起動させ、完全に気配を消す。

この様子からして、ここの誰かにに害を加えようとしているのは明らかだ。

もう少し近付いて、必殺の一撃、《暗黒は死を振り翳す(シャドーブラック)》を叩き込もうとしたその時。

彼は言った。



「早くその姿を見せよ! 余は誇り高き《勇者》が一人、《()()()()》であるぞ!」

~( `ϖ´)<予告どおりです。


~( `ϖ´)<そして名前の通りのキャラです。

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