二十六匹目 ~(追うべき背中 C・>
~( `ϖ´)<はい、という訳でこちらに舞い戻って参りました
~( `ϖ´)<そう長い間あちらを待たせたくないので
~( `ϖ´)<ちょっと短めになりますが
~( `ϖ´)<ご了承下さい
《天暦※※※※※※年 八月 八日 AM4:00》
「はい、じゃあ、私の昔話はお終い。ミーニャ達の事も教えてよ」
「え、ああ、分かった。そうね、最近で言うと、村の近くの森林地帯の果物が美味しくなって」
「あ、ああ、そうそう! さっきも食べて来たばっかなんス! いやー、あのみずみずしさは断言するッス、あれは十年に一度の実り.........あたぁ!?」
「馬鹿者が。ソフィーに馳走になるのに、そうした事をするのがマナー違反だと何故気が付かん!」
「ちょ! ちょっとだけだったんスから! 問題ないっすよ!」
「全くよね、ナーガ。この間だって、いい匂いがする、ってミュータロー一人で突っ走ってったら、食事中の《熊精霊》の群れに遭遇しちゃって」
「えぇ! あの子達、とっても短気よね? あと、縄張り意識が強い子達だったと思うんだけど.........大丈夫だったの?」
「なんとかぎりぎり、という有様でしたが、命は助かりました.........全く、ミュータローにはもう少し落ち着いて欲しいものだ」
「む! なんすかなんすか! そう言うそっちは、いつも何考えてんのか分かんないッスよ!」
騒がしいお茶会だ。
いつも通り、なのかは分からないけど、この場の全員から、無理していない様子が伝わってくる。
俺は少しの間、彼らの話に耳を傾けていた。
ソフィーさん達の話が一段落し、皆で一息ついた頃。
ソフィーさん達が再び談笑する中、俺はソフィーさんの家を探検していた。
純粋な興味と、新しい体の動かし方に慣れるためだ。
先程は奇跡的になんとか体を動かし、ミーニャ達の来訪に対応できたが、今後命の危険がある場合に上手く動けなかったら、目も当てられない。
だから、ソフィーさんのプライベートな空間を覗こうとかいう、下心に満ちた動機ではない。
断じて。
絶対に。
............ダチ○ウ倶楽部的ノリではない!
《いやー、にしてもあのソフィーって人の話、凄かったねー》
《確かに、なぁ。凄かった》
《? どったの。なんか心ここにあらず、って感じだけど》
《ん、ああ》
階段を一段一段時間をかけて登りながら、俺はドーナに返事をする。
確かに、いまいち心はこもっていなかったかも知れない。
それが何故か、というのは既に分かりきっていることであるけど。
《確かに、ソフィーさんの話は凄かった。けど、何故か、話を聴いていると、胸の辺りがもやもやしてさ》
《なるほどねえ。だから、それがずっと気になってるって訳か》
《そうなんだよ。もう少しでも、自分の考えを整理したくてな》
《うん、おーけー》
それっきり、ドーナは言葉を寄越してこなくなる。
こういう時は、俺自身よりも、俺の内面にいるドーナの方がよく分かっていたりするのだろうか。
今の俺は、どんな気持ちなのだろうか。
そして、先程の俺の思いは、どのような形をしていたのだろうか。
そもそも、ソフィーさんは何を思って俺達にあの話をしてくれたんだろうか。
その意を汲み取らなければ、あの話を聞いた意味が無い。
取り敢えずは、自分でそれを考えてみようか。
「チュ.........(あ、終わった)」
階段が終わり、少し開けた場所が目に映る。
その場所の更に奥、扉の小窓からは、その向こうの景色が伺えた。
何故とはなしに、その場所へ足を向けた。
ソフィーさんが、小さな生き物たちが家に入りやすいようにと設計したらしい小さな穴は、今の俺が余裕で入れるほどの大きさだった。
その穴の先、バルコニーの、遮るもののない空間からは.........満天の星が見えた。
「チュウー.........(うわぁ.........)」
思わず感嘆の息を漏らす。
以前、自分がまだ人間だった頃に、これほどの空を見たことは無かった。
空は何処までも広がり、夜明け前の儚さと相まって、星の輝きはなお一層美しく、清らかだ。
どこを見ても星が瞬くその場所にいる自分は、この世界の一部なのだ、と実感した。
紛れもない、別の世界。
今までとは異なった世界。
そして.........新しい世界。
この世界のことをどのように呼ぼうが、その姿は変わらず俺を包み込み、俺を捉えて離さない。
もう俺はこの世界の一部なのだ、と、そう感じた。
《なあ、ドーナ》
《はいはーい、なんだいなんだい? ボクに何か用かい?》
《俺、何したらいいかな》
《.........それは、キミが決めてよ。ボクはもとに戻れれば.........あ、いや、この際戻れなくてもいいかなー》
この世界に降り立って、まだ数時間。
自分の身の安全すら、十分に確保出来た確証はなく、こんなことを考えるのは身勝手で身分知らずかも知れない。
けど、どうしても考えてしまう。
この世界に学校というシステムが存在するのかは分からないけど、そもそも鼠の俺が通える学校は無いだろう。
労働も、どうだろう、そもそもここがどこかの国の領土なのか、それとも緩衝地帯なのかも分からないし、国の一部だったとしても、国が労働者を保障しているかは分からない。
それに、鼠が出来る仕事なんて、俺には思い付かない。
そうした時に.........俺は何をすべきか、何をしたいか、何を目指すべきか、何になるべきか。
具体的なイメージも、ボヤケた未来像も、確固とした足場さえ、今の俺には欠けている。
俺はどうしたらいいのか.........?
分からない、分からないまま、バルコニーの手すりの柱に体を預ける。
そこに、来客が一人。
いや、この人の場合は、俺のほうが来客だろう。
「あ、ここに居たんだ、ネズミくん。探したよー」
家の主、ソフィーさんが歩み寄り、俺の隣に立つ。
彼女の足取り、その佇まい、所作の一つ一つが柔らかく、道に迷った俺の心を温かく包み込んで行く。
自分で設計したのだろうか、彼女の背丈にピッタリな手すりに腕を乗せて、彼女は呟いた。
「あのね、ネズミくん。こういうこと言うのは、ちょっとだけ恥ずかしいけど.........さっきの話、私はどうすればいいのか分からなくてさ」
衝撃、だった。
自分よりも数段、いや、遥かに大人びて見えた彼女にも、悩みがあったのだと。
そして、当事者たる彼女でも、あの話に決着を付けられない事にも驚いた。
「モーティブはああ言ってくれたけど、私はやっぱり自分勝手でさ、自分の身内から離れたことになると、ばかみたいに何も出来なかったの」
それは.........そうかも知れない。
俺だって、見ず知らずの人が困っている時に、自分から積極的に助けてあげられる気がしないし、進んでボランティア活動をするかと言われたら、多分しない。
けど、さっきの話を聴いているときは、こう、何というか.........上手く言葉に出来ず、もどかしい。
「私に出来ることは、自分の身の回りのことだけ。だから、それをきっちりやろう.........と思ったんだけどね、それだけじゃ何故か自分が納得しなくてさ」
それも分からなくもない。
俺も、知らない人を助ける勇気は無いけど、手を差し伸べなかったならなかったで、きっと後で後悔する。
それくらいには、俺は臆病で、小心者で、優柔不断で情けない生き物なんだ。
だからといって、そのままで良いと自分を看過するほど腐ってもないんだけど。
「だから私、決めたんだ.........身内をちょっとだけ広げてみるって」
彼女は言った。
~( `ϖ´)<森の熊さんは危険なのである
~( `ϖ´)<呑気に「出会ったー」とか言ってる場合じゃ無いのです
~( `ϖ´)<まあ、魔物なのでそれなりに知性はありますが
~( `ϖ´)<常時「やっちゃえバーサーカー」状態なのです
~( `ϖ´)<それが彼らが外交下手な理由です
~( `ϖ´)<ご感想その他お待ちしております!
~( `ϖ´)<全く関係ありませんが、作者最近《黒の○漠 モバイル》にハマっております




