十六匹目 ~(第一異世界人、発見! C・>
~( `ϖ´)<ラットくん再び
《天歴※※※※※※年 八月 八日 AM1:00》
俺の前に現れたのは、一人の人間。
顔を覆う程大きいフード付きのローブをまとい、下方の俺に目を向けていた。
周りは暗闇。
こんなに暗い中、普通に外を出歩いているのは、きっと只者でない証だ。
細身の体だから、あまり丈夫には見えない。
どうする、と考えたその時。
《......気をつけて。そいつ、今のキミじゃあ勝てないほど強いよ》
いつになく真剣な雰囲気を醸し出しながら、ドーナが脳内で囁いた。
《? おう、気をつける》
なぜ、わざわざそんな事を忠告したのか。
そもそも、今の俺の攻撃手段は、《暗黒は死を振りかざす》しかない。
それを決めるためにも、《暗黒は刺客を覆い隠す》の存在がでかいのだが、もう発見されているため、ローブの人には既に効果を失っている。
いやまあ、そもそも闘う気はないし、相手からの敵意も感じられないから、割とどうでもいいことではあるんだけど。
今、ローブのありとあらゆるポケットをひっくり返して、あたふたと何かを探しているこの人が、悪人だとはとても思えなかった。
《今は交戦の意志がなくても、後でどーなるかは、未来予知能力でもない限り、誰にもわかんないから。とりあえず頭の片隅にでも置いといて》
《ああ、なるほど、分かった。サンキュ、助かる》
いや、ホント、そこまで頭回ってなかった。
俺の今後の身の振り方次第で、事態はどう転ぶか分からないってことか。
平和な日本に暮らしていたからこその弊害だなぁ。
あ、そうそう。
身の振り方で思い付いた。
《なあ、ドーナ。この世界の言語って、日本語?》
《そんな訳ないでしょー》
《.........やっぱりかー》
薄々そんな気はしてた。
ローブの人が、さっきから何か口に出しているのに、その音に何の聞き覚えも無かったのだ。
《あ、じゃあ、ボクが脳内変換したげる》
《え、マジ?》
《マジマジー。キミがこの世界に適応出来ないと、ボクだって困るからねー》
《ホント助かる! お前実は天才だろ!》
《え、何、もしかして今更気づいた? いやー、参ったなー!》
コイツはすぐに調子に乗る。
でも、それくらいのことではあるか。
何しろ、勉強せずに一つの言語をマスターするようなもの。
十分に凄いことではある。
そうして、一秒もしないうちに、ローブの人が何を言っているのか、分かるようになった。
よし、少し観察してみよう。
相変わらず、ローブのあちこちをガサゴソとひっくり返している。
「あれ、あれ、どこー? 確かここに......ないー」
どうやら何かを探しているようだ。
「あ、そうだ! あの時落としちゃって、危ないからって、あそこに移したんだ!」
どうやら何かを思い出したようだ。
「んっと、んしょ」
どうやらローブの中から何かを取り出そうとしているようだ。
「あったー!」
どうやら何かの果物を探していたようだ。
すげぇ、言葉が分かると、何か感動する。
これくらいなら、ジェスチャーでも伝わるだろうけど、やっぱり生きていくにつれて、言語はきっと必須だ。
以前、初めて英語検定に受かった時に近い心持ちになってる。
《やっぱ凄いでしょー。ボクにかかれば、こんなの朝飯前ー!》
《え、お前飯食うの?》
《いや?》
《ただの比喩か》
さて、観察の続きを、と思ったら、ローブの人が、果物らしきものを持った右手と、顔を近づけてきた。
ネズミの俺の目線に合わせるように、腰をかがめて、彼女はこう口にする。
「はいこれ、リリゴの実。食べる? 美味しいよ」
たぶんそんな感じの内容だったと思う。
曖昧なのは、あまり彼女の言葉を聞いていなかったからだ。
きっとその時の俺は、耳よりも目に意識をさいていたんだ。
屈み込んだことでズレたフードの内側から覗く、彼女の優しい笑顔に気を取られていたから。
~( `ϖ´)<ちょっとばかし補足をば
※リリゴの実※
名前から分かる通り、地球で言うリンゴ。
種がかなり大きく、少々食べにくいのが欠点だが、爽やかな香りと淡いピンク色が人気。
そのまま食べても美味しいが、種をくり抜き、蜂型魔獣の蜜を流し込んで焼くと、更に美味しくなる。
~( `ϖ´)<じゅるり
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