第3話 ホモーって何だ?
赤鬼のAkaに引き取られ育てられた全裸太郎は1日1日とすくすくと驚異的な速度で大人へと成長していきました。引き取られてから6日後には、成人と言っても過言ではないほどに身長が伸びていました。
それを見ていた他の鬼達は『もやしでさえ成長するのに7日かかるのに……促成栽培もビックリだよな』『大人の事情だよ。さっさと終わらせようとしてんだよ、作者のヤツが……』『体が大人になっても、まだ全裸待機してるZ』っと桃太郎の成長の早さを自分の事の様に喜んでいました。
さすがのAkaも全裸太郎の成長には驚きを隠せませんでしたが『これでオレが培ってきた傭兵の技術を教えることができるぞ!!』っと、さっそく全裸太郎に自分が知る限りの技術を教え込むことにしました。
それからと言うもの、朝から晩までAkaから傭兵の技術を教わる全裸太郎。それこそ寝る間は夜だけに惜しみながら立派な暗殺者になるべく修行を重ねていきました。
そしてそんなそれなりの修行を過ごす日々が、2日ほど続いた時でした。
「なぁ最近Akaの野郎、あの拾ったガキとばっかいやがるいるよな。それもさ、毎日だぜ。もしかしてよぉ~……」
「ああ、それは俺もなんとなく気になってたわ。きっとアイツらデキてるんだぜ。ホモーなんだよホモー。これからは全裸太郎じゃなくて、『ホモー太郎』と秘かに呼ぼうぜ♪」
全裸太郎は他の鬼達が、自分とAkaについて話しているのを偶然耳にしてしまいます。
「(デキてるとかホモーってなんだ? みんな俺のことを言ってるのかな? 『ホモー太郎』……もしかしてそれが俺の本当の名前なのか???)」
自分が拾われた子だと言うのは既にAkaから聞いていましたが、それまで自分の事を1度も疑問に思ったことはありませんでした。
そして全裸太郎は、修行の合間Akaに聞いてみることにしました。
「なぁAkaぁ~。聞きたいんだけどさ、ホモーって何なんだ?」
「ど、どうしたんだ全裸太郎。い、いきなりそんな事を聞いてきてっ!?」
修行の休憩中とはいえ、いきなり全裸太郎から『ホモー』と尋ねられAkaは激しく動揺してしまいます。
「(ま、まさか俺のベット下に隠してあった薄い本を見られたのか!? ついに俺のショタ属性がバレちまったのか!? それとも全裸太郎と一緒に風呂に入る際、『体洗ってやるよ』っとか言いつつ、ホントは体目当てだと気付きやがったのか!?)」
どうやらAkaには思い当たる節が山のようにあるようでした(笑)
「うん。なんかさ、他のみんなが俺のこと見て『ホモー太郎』とか呼んでるみたいなんだ」
「…………」
いきなりそんな事を言われ、Akaは動揺を隠し切れずに黙ってしまいます。
何も答えないAkaの沈黙を察したかのように、全裸太郎は言葉を続けました。
「もしかしてさ、それが俺の……本当の名前なんじゃないか? どうなんだAka……答えてくれっ!!」
まさに鬼気迫るとはこの事を指すのでしょうね。全裸太郎もそうですが、それを聞かれたAkaも何て答えればいいのやらと悩んでいました。
「(どうする? 本当の事を教えちまうか? でもそれだともう、全裸太郎と一緒に風呂に入れなくなっちまうぞ)」
Akaは頭を抱えどうにかこの場を切り抜ける策を考えていました。
「やっぱり……それが俺の本当の名前なんだな……」
全裸太郎は押し黙るAkaの沈黙を肯定と捉え、納得しようとしていました。
(ま、マズイ。このままだと全裸太郎は自分の事を『ホモー太郎』と他でも名乗っちまうぞ。そしたら『ホモー』の意味がバレちまう!? 何か、何か策はないのか……っ!?)
っとそのとき、Akaは会心の誤魔化す策を思いつきました。
「実はな……全裸太郎。どこでそれを聞いたかは知らねぇが、それはお前の聞き間違えだ。人間達の間で流行っている『空耳クオリティー』ってヤツなんだ!」
「聞き間違え!? 空耳クオリティー!? そんなことねぇよ! みんな俺のこと見て『ホモーだ。ホモー太郎が歩いているぞ!』って指差してたぞ!」
(マジかよアイツら!? 指差してたら、もうそんなの誤魔化しようがねぇじゃねぇかよ。どうする……どうするよおいっ!!)
Akaは散々悩みましたが、『聞き間違え』で押し通すことにしました。
「実はな全裸太郎。……みんなが言ってたって言うのは『ホモー』じゃねぇんだ。きっとモモーなんだ。だからお前のことは『モモー太郎』って呼んでたんだと思うぞ」
「そうなのか!? モモー……太郎? それが俺の本当の名前なのか!?」
あくまで『ホモー』と『モモー』を全裸太郎が聞き間違えたと言い張ってAkaは誤魔化しましたが、全裸太郎はまだ『それが自分の名前なのか?』っと食い下がります。
『ここで全裸太郎に嘘を付いてもすぐにバレちまうよな。ならば……』っと、Akaは起死回生のアイディアを口にしました。
「うん。その『モモー太郎』というのはだな、実はそれは……コードネームなんだ」
「こ、コードネーム?」
聞きなれない言葉に全裸太郎は聞き返します。
「俺がお前を一流の暗殺者に仕立てようとしているのは分かるだろ?」
「ああ、もちろんだ! だからツライ修行をさせてるんだろ?」
全裸太郎は頷きながら、Akaの話に耳を傾けます。
「そうだ。だからその『コードネーム』って言うのはだな、……さ、作戦行動中に自分の身元がバレぬよう『偽名』として使う特別な名前のことなんだ。みんながお前のことを『モモー太郎』っと言ってたのは、それだけお前のことをみんなが認めてくれた。……つまりは、そうゆうことなんだ」
『嘘八百もここに極まれり』とは、まさに今のAkaを指すために作られた言葉と言っても過言ではありませんね(笑)
一体誰がこのようなあからさまな嘘に騙されることでしょう。
「そうなのか!? そんな特別な名前だったなんて。ならば俺はこれから『モモー太郎』って名乗ればいいのか?」
これはなんということでしょう。Akaの嘘に騙される人がいるなんて。全裸太郎はAkaをこれっぽっちも疑うことなく、言うがままに信じ込んでしまいました。
「(……ほんとに信じたのか? 何だか全裸太郎の未来が心配が不安になってきてしまうぞ)」
Akaはすぐ人を……いえ、この場合は鬼の言う事を信じてしまう全裸太郎が心配になってきました。
第4話へつづく