第2話 狡猾な人間達の思惑とその罠
鬼に拾われ育てられることになった全裸太郎。これまで互いに争ってきた憎き人間とはいえ、この子はまだ赤子です。赤鬼《Aka》はその赤子に『全裸太郎』と名付け、大切に育てることにしました。ですがAkaには別の思惑もあったのです。
今の人間達は献上品を鬼達に渡すことで、平和条約の名の元に鬼達が言うがままに従っていますが、いつか反旗を翻し戦を仕掛けてくる。今の人間達は『鬼達に従うフリをして力を蓄えてる時期』なのだと考えていたのです。
けれども別の鬼達は『そんなのは考えすぎだ』『馬鹿じゃねぇの?』『童貞の妄想Z(笑)』などと馬鹿にして、誰もAkaの話に耳を傾けませんでした。
『絶対に人間達は、攻めて来る……。何でみんなそう思わないんだ?』いくら他の鬼達に説得を試みても、まったくの無駄でした。そんなとき現れたのが全裸太郎だったのです。
Akaは人間の赤子である全裸太郎を育て『人間達を説得させる』か、または『暗殺者』として育て人間達が住む都に送り込み、『人間代表のおばあさん』を暗殺しようと考えていたのです。
鬼達は元来、脳が筋肉で出来てる単細胞いわゆる脳筋ばかりで、鬼の金棒片手に『互いに肉体言語で語ろうぜ♪』っと振り回す打撃オンリーの技しか習得していませんでした。
対する人間達は『力は弱い』のですが、代わりに知恵の方は鬼が太刀打ちできないほどに『優秀』だったのです。人間達の上の人間は『節分』とかいう行事を鬼の許可を得ず勝手に作り、民衆を惑わせる事で鬼達に豆を投げつけ、差別する文化を強いてきました(=強要する)。
ぶつけるのが豆だけならかわいいモノでしたが、極稀に『手榴弾』を紛れ込ませて投げつけてくるのです。それも鬼が『がっははは、このような豆など怖くはないわ! こんなモノ食べてくれるわ!! がっははは~っ』っと大きく口を開けて、投げつけてくる豆を食べてる所目掛けて絶妙に投げ入れてくるのです。
口に『手榴弾』を入れられた鬼は爆発の影響によって、その後…………口の中にたくさんの口内炎ができてしまいました。
「口の中がいてぇ~よぉ~っ!! こんなんじゃ何も食べられねぇよ!! 水を飲むのもつらいよぉ~!!」
っと痛みに弱い『超アンチドM体質の鬼の性質』を見抜き、食べ物を食べさせないことで鬼達を餓死させようと画策していたのです。
またある時には、献上品のぼた餅の中にお米の代わりとして『手榴弾』を入れてきたりもしました。すぐさま鬼達が抗議すると、人間達は『(ちっ)こ、今度はちゃんとしたのを持ってきますので、何とぞ今回ばかりはお許しをっ!! (ちっちっちっ)』っと、隣に住む舌切り雀が羨むほどの舌打ち地獄をしながら謝罪をしてきました。
人間達は謝罪の誠意を見せる為に、今度は大量の砂糖が入れられた『甘甘のぼた餅』を大量に献上してきました。全員が甘党である鬼達は大喜びをして、踊り狂いながらそのぼた餅を食べたのです。
「むしゃむしゃ、むしゃむしゃ。これはとても甘くて美味いぼた餅だ! うむ、こないだの無礼は許そうではないか!」
っとちょい武者ぶりを披露しながら、鬼達はこの間した人間達の過ちを許したのです。
「ハハーッ、鬼様ありがたき幸せにございます(ニヤソ)」
人間達が平伏して感謝の言葉を述べたせいか、人間達の口元がニヤニヤとほくそ笑んでいるのを鬼達は見逃してしまいます。
『毎日ぼた餅を献上いたしますから……』っと、人間達は毎日毎日1日も欠かすことなく、ぼた餅を献上してきました。ですが、そこにも人間達の巧妙な罠が仕掛けられていました。その罠とは…………、
「うお~っいてぇ~っ!! 歯がいてぇ~よぉ~っ!!」
そう人間達は鬼達に歯を磨く習慣がない事を知り、わざと『甘甘のぼた餅』を鬼達に食べさせることで、口の中を虫歯だらけにして、口内炎の時と同様食べ物を食べれぬようにして、餓死させる思惑があったのです。
また『甘甘のぼた餅』には、別の思惑も隠されていたのです。
「うん? なんだかオマエ太ったか? 腹が前よりも大きくなって、まるで妊婦のようだぞ(笑)」
「いやぁ~、人間達が献上する甘いぼた餅が美味くてなぁ~。あ~っ、ポンポン♪」
危機感のない鬼達は、毎日毎日馬鹿のように甘いぼた餅を食べたせいか狸腹のように太ってしまいました。
それはもちろん、鬼の体を重くして動きを鈍くする思惑も含んでいたでしょうが、実際のところ人間達の本当の目的は……毎年春に行われる鬼達の『健康診断』が狙いでした。ぼた餅を食べすぎた鬼達は、医者から『メタボです。高血圧です。糖尿でしかも痛風末期です。このままだと鬼達の間で痛風ブームが到来して、みんな死にますよ』っと診断されてしまい、人間達が作った健康保険制度に加入していなかったため、窓口で常に10割負担を余儀なくされてしまいました。
そうです人間達の本当の狙いは、鬼にぼた餅を大量に食べされることで慢性的な不治の病を誘発させ、医療費負担を増大させ資金不足に陥らせるのが真の目的でした。
『損して得を盗れ!』人間達はまさにそれを実行していたのです。献上品は短絡的には損をしますが、長期的には鬼の資金を、そして何より鬼の命を奪う巧妙な罠だったのです。
そうして鬼達は1匹、また1匹っと着実にその数を減らしていきました。それでも鬼達は『人間達が自分の言うことをちゃんと聞いて献上品を寄こしている!』っと勘違いして、自体の深刻さに気付きもしませんでした。
ですがその中でただ1匹だけ人間達の思惑に気付いた鬼がいました。それが赤鬼の《Aka》だったのです。
Akaは元傭兵で頭も他の鬼とは比較できないほどに優秀だったのです。だから余計他の鬼から仲間外れにされていました。全裸太郎を引き取った際にも、他の鬼から『何お前、ショタ好きなの?』『乳幼児ラブ?』『童貞の犯罪Z』などと蔑まれていました。
ですが『いつか他の鬼達も自分の考えに気付くはずだ!』そう思ったからこそ、Akaは全裸太郎を引き取り育てながら人間達の反乱に備えていたのです。
第3話へつづく