このエロ魔王が
絶叫してわなわな震えるフィリ。
だが待って欲しい、俺としての考えがあったのだ。つまり、
「訪ねてきた人も罠にかかるし、そもそも勇者とは戦う以外の方法がないのか?」
「それはあれですか? 穏便にお話し合いで、と?」
「それが一番いい方法じゃないのか?」
そう答えるとフィリが嘲笑うかのように、
「話し合いをしましょうと行って、罠をはられて毒殺なりなんなりされて終了でしょう。人間は獰猛ですからね」
「そういった魔王がいたのか?」
「昔、いましたよ。私の命の恩人で、私の姉のような方でした。……許せない」
ポツリと呟いたフィリ。
彼女がやけに魔王魔王言っているのもその辺の事情があるのだろうか? と思いつつも俺としては、
「でもその国がたまたま話を聞かなかっただけで、他はどうなのか分からないだろう」
「そういった甘い事を言って……この“ド”アホが。今すぐスイッチを入れてください」
「嫌だよ。それに誰かが怪我するのは嫌だし」
「……自己犠牲の精神ですか?」
「いや、俺も自己犠牲はちょっと……でもまだ俺はこの世界初心者で、でも元の世界の記憶はあって、なんというかその世界の常識みたいなものが残っているから、こういうことは“いけない”と思うんだ」
「……この駄目魔王が、ヘタレすぎて話になりません。でもそうですね、一度痛い目にあえばその考えも改めるでしょう。たかが勇者の一匹や二匹、私の敵ではありませんから、多少痛めつけられてくれば良いのです」
フィリがにやりと笑い俺を見る。
凶悪な笑顔だなと思いながら、一時的とはいえ城の罠を切っておく事に成功したのだった。
それから、侵入者が来ると『侵入者です』と野太い男の声で連絡してくれるシステムを起動させておいた。ただ、
「この声の主って誰なんだ?」
「この世界の神様じゃないですか? おっさんだって聞いていますし、どうでもいいですが」
どうやらこの世界の男性神であるらしい。
どうせなら綺麗な声の女の人というか女神様でいて欲しかったが、とりあえずはこの世界に転生させたその神様とやらの声は分かりそうだ。
そう俺が思いつつ俺達は再び玉座の間へ。
魔王が座るらしい椅子に座りしばらくはぼんやりしていると、
「暇そうですね」
「そうだな、魔法の練習でもするかな」
と答えると、フィリの氷のような視線が俺に突き刺さった。
何というご褒美……ではなく、不信感を抱かれてしまった。
だが自分の身を守るためには魔法の能力をもっと向上させないといけない。
つまり、またこのあたりでもう一度、“風”を起こす魔法を……と俺が思っているとそこでフィリが、
「“風”の魔法ではなく炎の魔法を練習しましょう。周りに延焼させるのではなく特定のものだけを燃やす練習です。普通の魔法であれば操作が難しいですが、魔王様は意志で物理法則を操れるようですのでそれをうまく使い制御しましょう」
「なるほど、制御か」
「はい」
「つまり女の子の服だけを燃やす魔法の練習を……えっと」
「……このエロ魔王が……女の敵が……」
フィリがつぶやき、いつも以上に大きなフライパンを取り出した所で、
『侵入者です』『侵入者です』『侵入者です』
野太い男の声がしたのだった。
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