ステータス・オープン
“ステータス・オープン”。
以前、web小説で見たことがあったので試してみたが、転生した魔王になったので使えるようになっていたらしい。
良かった、これのお陰で俺はどんな能力があるのかを探ったり、死にかけて“覚醒”するか、転生していきなり死ぬ展開にはならなそうだ。
「よかった、本当によかった」
「……魔王様、撫でる手が止まっています」
「はい、分かりました」
安堵してしまったがために、フィリの頭を撫でるのを俺は止めてしまったようだ。
なので催促されて俺は慌ててなで始めたのだが、
「何かがおかしくないか?」
「うにゃ~」
「……フィリが可愛いし、まあいいか」
というわけで撫でながら俺は自分の能力を確認してみた、のだが。
「……すごいな、体力魔力などがこれ、数えるのが嫌なほどにゼロが続いているな。通常時でも、危害を加えられた時のみ自動的に発動する魔法攻撃や物理攻撃の無効、状態異常無効、他にも魔力回復率が、分速で全体の10%……なんだこの、出鱈目に近い数字は。魔王だからなのか? ……最強魔王って書いてある。何だこの、おれの考えた最強の設定というかのような黒歴史ノートの片鱗のような、いや、確か昔……いや、あのノートは厳重に封印したから誰にも見られていないはず。忘れよう。それで能力は、“全ての物理法則を操る力”。いやいや、なんだそれは。そもそもこの世界の物理法則は俺達の世界と同じなのか?」
けれど特殊能力の所に物理法則とはいっているので、この世界は俺の知っている物理の法則で満ちているのだろう。
これは……物理の法則を乱すしかない。
そう俺が決意しているとそこでフィリが俺のステータス画面を見てぎょっとした。
「な、何ですかこれは」
「俺のステータスらしいが……今気づいたのか」
「そ、そういうわけでは……何でこんな数値化されて空間に表示できるのですか!? 数字換算するのもこの世界のギルドではものすごく高い機械を使わないとできないのに!」
「そうなのか、でもこういった魔法がこの世界に無いのに何でできるんだろうな?」
「……魔法はある程度意志の力によって発動しますから、それでこういったものがやりたいという意思があれば、魔王様ほどの力があれば可能かと」
そういった説明を受けた俺は、“ステータス・オープン”という技を知っていただけで、こうやって実行できたようだと知る。
ファンタジー系のラノベやweb小説が好きで読んでいたのが、このような形で役に立った。
人生何があるか分からないものだ。
などと思っているとその能力を見たフィリが、
「さすがは魔王様、凄い魔力ですね。そして特殊能力も変わっています」
「そうなのか、それでこの特殊能力はどうやって使うんだ?」
「さあ。特殊能力はその人固有の物なので、使い方はその人しか分かりません。ですので魔王様本人が試しに使ってみない事には分からないでしょう」
「俺自身が試さないといけないのか。……どうするかな」
そう考えた俺は物理の法則を乱さなければならないのだが、例えば一部分の重力を、上方向から生じさせた場合、この周辺にある空気はどのようになるのかと思った。
その力に引かれて、“風”が生じるわけでつまり、フィリは短いスカートをはいている。
後は分かるな。
俺は真剣にその能力が使えるのか検討した。そして、
「きゃああっ!」
「……水色の縞パンか」
俺がそう呟くと共に、再び俺は怒ったフィリにフライパンで殴られたのだった。
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