条件を出される
グラフィス達が花畑に着いたので、俺はシエラに、
「シエラ、料理は出来ているか?」
「出来ました~」
「よし。では、これから料理を送りますよ~」
というと、そういう所は守るのかとグラフィスは笑う。
こんな相手がそんなに怖いのかと思って振り返ると、レイナが青い顔で座っている。
やはりトラウマが思い出されているのかもしれない。
と思いつつ料理を転送する。
それらを次々と口にするグラフィスや兵。
そこで兵の一人が、食事をとろうとして……腕が下にぼろりと土くれのように落ちた。
「な、何だアレ」
「ヒロ、驚かないでください。あれは土人形です。精霊をとりつかせて、魔力で動かす土の人形。相当の魔力が無いと上手くいきませんが」
「そうだったのか。でも土の人形も物を食べるのか?」
「……え? そういうわけでは……」
フィリが焦ったように映像を見る。
彼等もまたシエラの料理を嬉しそうに食べている。
フィリが呟くように、
「精霊すらも美味しいと感じさせてしまう能力? それは料理の才能といえるのか?」
「才能なんじゃないのか?」
「……まあいいです。それはおいおいとして、ほらヒロ。説得」
「ああ分かったよ。グラフィスさん、お食事中の所申し訳ないのですが、よろしいですか?」
俺が声をかけるとグラフィスが、
『構わないよ。それで?』
「このまま引いて欲しいのですが」
『これは直球で来たね。でもそれには答えられないな。私の上司は、こわ~い最凶魔王である“常闇の魔王”様だからね』
「引いていただけないのですか。他に何か条件はありませんか?」
『素直にその城を明け渡すなら考えてもいい』
「それは無理ですね。……例えば、貴方と一対一で戦った場合、俺が勝利したら、ひいてはもらえませんか?」
フィリが、ヒロ、何を言っているのですかと怒ったように言っているが、一対一だと対応できるのは俺だけ……かもしれないし、そんなものを受けるわけないだろうと俺は思った、のだが。
『いいぞ、一対一でも。但し条件がある』
「条件?」
『そう、まずはあの砦を破壊してからだ』
笑うようにグラフィスは言うが、どうしてだと俺が思っていると、フィリが、
「あの砦を壊すために我々がこの城を留守にし、少しでも我々の戦力をそごう、という理由ですか?」
『あ、ばれたか。あの砦にはたくさんの罠が敷かれているから、そう簡単には破壊できないぞ。もっともできたら、私が一対一で戦ってやろう』
どうせ無理だろうというかのように、グラフィスが笑う。
それを聞きながら俺はふと、あるものが脳裏によぎる。
「“魔王城変形”」
「ヒロまた何か変な物でも思いついたのですか」
嫌そうにフィリが呟くが俺としては、
「いや、この城そのものに大砲みたいなものが積んでいたりするのかなって。変形するらしいし」
「いやいやいや、そんなもの今まで聞いた事がありませ……まさか」
「すみません、“魔王城変形”には、大砲を呼び出して砲撃するようなものはありますか」
『アリマス』
男の声がした。
どうやらそういったものもあるらしい。
となると気になった俺は、
「ロボにも変形するのですか?」
『ヘンケイシマス』
「よし、まずはそっちに……フィリ、何でおれを警戒するように見るんだ?」
そこで冷たい目で見たフィリが、
「ロボというものはなんだかよく分かりませんが、ヒロが嬉しそうなので却下です。というか大砲のようなもので破壊した方がいいです。もし出来るならですが」
とフィリが、全てを考える事を放棄した目で俺に言う。
そして俺はロボはまた今度にしようと思い、
「砲撃などをする形に、変形を」
『ソレハ、魔王城操縦室でないと無理です』
「分かった、そちらに向かう。じゃあしばらくこの部屋での事やグラフィスとの話し合いはよろしく」
「分かりました、任せてください」
フィリが答えるのを聞きながら俺は、その操縦室に向かったのだった。