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接触

 鳴り響く警告音。

 ウィンウィンウィンウィン、と鳴っているが、かといって明るいテンポのいい音楽を流されても困るので、これでいいかもしれない。

 され、どうしようと俺が思っていると、城が何か大きなもので殴られたかのように振動する。


「え、えっと、この城の敵がいるあたりをここに映し出せるか」


 俺が呟くと光の窓が現れて、結界周辺が映し出される。

 現れたのは一人の、やけに露出度の高い女だった。

 黒を基調にした体にぴったりと張り付いたラインが良く見える服である。


 そんな彼女は長い黒髪が波打ち、瞳は爛々と赤く輝いている。

 持っている斧は彼女の身長の二倍の長さはある。

 だが、そんなものよりも俺はもっと気になる部分があった。


「む、胸が、あれは、何という巨乳……」


 それはもう、顔をうずめたら至高の時を過ごせてしまいそうな大きさである。

 だがそこで俺は、何かを感じた。

 振り返ると女性陣が俺の事をじ~っと、俺を見ている。


 その訴えかけるような冷たい視線に俺は俺は……。


「おっぱいには勝てなかった(´・ω・`)」


 一言告げると、さらに周りの温度が下がった気がする。

 言い訳のように呟いたこの言葉の選択は間違っていたらしい。

 だから俺は慌てて、再びそちらの方を見ると、部下の内の一人が人間らしきものを担いでいる。

 服装はボロボロだが人間の男のようだ。


 先ほど表示した敵の一から見ると、勇者イズキに間違いないだろう。


「ここにいるのが勇者イズキ。……敵のボスの近い場所にいるな。どうやって連れてこようか」


 どこか別の場所に誘導した方が良いかもしれない。

 その時に、勇者イズキを運んでいる部下たちを、勇者イズキから離せばいい。

 まずはこの密集した隊列を崩すことから始めた方が良いだろうか?


 それらを考えて皆に話してから、魔王城周囲を見て回り、二箇所ほど花畑を見つける。


「彼女達を花畑に誘導しよう。それから隊列を崩して……この場合は一番後ろに勇者イズキを運ぶ者達がいるから、それを引きはがして奪って……となると、桜にそこはお任せでいいか? 転移魔法であそこに向かって、回収という形で」

「分かったけれど勇者イズキからどうやってあの部下たちをはなすの?」

「シエラのお菓子を、少し離れた場所に落としてやるとどうだろうな。それで動かなかったら、転送で魔法攻撃して、軽い爆発を起こしてその砂煙に紛れて奪う事になるだろう」

「はーい」

「ちなみにその時の魔法攻撃の調整はフィリに頼みたいがいいか?」


 そこで話を振られたフィリが、


「殲滅するくらい強くしましょう」

「イズキが死ぬから止めてくれ」

「……分かりました」

「じゃあこんな感じでいいか」


 そして俺は、その画面に向かって試しに、


「あちらに声を送る事は出来るか? 出来ればあちらの声もここに届けて欲しい」

「“音声機能をオンニシマシタ”」


 再び野太い男の声がして、うっすらと画面の端にマイクの表示が現れる。

 言葉が送れますよの表示なのだろう。


「え~テステス。こちら、この魔王の城の城主である俺は、ヒロといいます。御用の方は事前にアポをとってからにしてくださ~い」

『なんだ? 変な声がするな。ここの魔王?』

「そうで~す、こんにちは~」

『気楽そうだがこれほど強固な結界を作る魔王、ね。アホそうなふりをしているが魔法の扱いには長けているだろうな。楽しみだ』

「え~、実は俺はですね、あまり戦闘はしたくないんですよ。出来ればお話合いで~」

『そんな甘い事を言っているのか? ふん、だろうな。自分の城の領地の領域内に、道と砦を作らせるのだからな』


 笑う彼女らに何だろうと俺が思って、周囲の索敵をさらに行うと、離れた場所に砦のようなものと道がある。

 つまり道を作ることで物資の移動をしやすくし、砦を作ることで人員をそこに集められる、という事なのだろうか? と、


『まあ今は砦の中には誰もいないがね。様子見を兼ねてきたから、これだけの少ない人数だ』

「それは良かったです」

『だがこう見えても部下の中で強いものを連れてきたからな。そう簡単には……』

「いえ、そうではなく、シエラがお菓子を作る手間が省けるな、と」


 俺がさりげなくシエラの名前を出す。

 するとその敵である巨乳女、グラフィスが、


『シエラ、ここにシエラがいるのか!』

「はい、以前呪いを解いたお礼で、この城の料理人をしています。そして、まずは話し合いをできればなと思い料理やお菓子を用意したのですが……」

『い、いいだろう。毒が入っているかは魔法では調べられるしな』

「では、折角なので魔王結界のすぐそばの花畑に移動して頂けますか? 美味しいものは綺麗な場所の方がいいでしょう」

『……だが話は聞くだけだ』

「構いません」


 そう俺は答えて、花畑にグラフィスを誘導したのだった。


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