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回収しても

 そういえば四天王の一人と戦闘している時に、勇者イズキが足止めしたと聞いた。

 てっきり、勇者というから、足止め筒逃げたのかと思ったが囚われている状況であるらしい。

 下手すると死体とご対面、となりそうな気もしたが、魔力の量と体力の量が非常に少ないが幾らかは点滅しているので生きてはいるだろう。


「ただ、回収しても生きていたとして瀕死の状態だったら……治療関係の魔法は……うーん、物理法則の操作で何とかなるか?」

「……勇者を治療するおつもりですか?」

「? 何か問題なのか?」

「相手は敵である勇者ですよ」


 フィリが、顔を蒼白にして告げた。

 けれどいつもであれば不満そうに、勇者を助けるなど……うにゃうにゃ、といって説教が始まるはずである。

 けれど今は不安そうに、まるで、勇者であっても俺に“助けて”欲しいと言っているように見える。


 今まで自分が魔王としてなどと言っていた手前、願えないのか?

 それとも誰かにフィリは、“望み”を口に出すことが出来なかったのか……俺と出会ったフィリはまだ数日程度しかないので俺はよく知らない。

 でも根の部分は悪い人間というかエルフでないのは分かる。

 

 だから俺は安心させるようにフィリの頭を撫でて、


「もし何かありそうだったらサクラにも頼んで説得してもらうさ。それでフィリの方こそいいのか?」

「……何がですか?」

「フィリの大好きなお姉様を寝取った相手なんだろう?」

「……気に入りませんが、お姉様を悲しませるのは、私の本意ではありません」


 むっとしたように答えるフィリ。

 フィリは自分の大切な人が幸せになるのなら、自分の気持ちを理性で押さえる程度には優しい様だ。

 だが今の話で決まった。


「あいつらから勇者イズキを取り戻す。それを最優先にしよう。それで、この集団は今どれくらいの距離になるんだ?」


 俺が呟くとその音声をどこかで拾ったらしく、上空から見た衛星写真のような図になって、魔王の城とその集団が赤い光の線で結ばれる。

 途中の目盛りと移動していく速度を考えると、数時間後にはこの城と接触しそうだ。

 逃げ回っていたレイナがこの城にまでたどり着いたのだから、確かにそれぐらいで敵もここまでたどり着きそうだ。


 その時間についてフィリに話し、ここにある他の魔王城の機能を見てから宝物庫で武器や治療系統の魔道具を探す事にした。

 それにフィリも納得してくれたようだが、


「……この際、勇者サクラ達に協力を仰いで、作戦を立てるのはどうでしょう」

「そうだな。だったらまずはこの魔王城の機能を一通り見て……あ」


 そこで俺は黄色と黒の縞模様のテープの張られた場所を見つける。

 フィリもそれに気づいて、


「それは何ですか?」

「自爆装置だ」

「……は?」

「この魔王城の」

「……何で魔王城が自爆するんですか!? そんなの聞いた事がありません!」

「え? 普通ある物じゃないのか?」

「何でそんなものが必要なのですか! 訳が分からない……ああ、もう。それで他に見るものは?」

「大体見たと思う」

「では宝物庫に行きましょう。時間がありません」


 そう言って元気を取り戻したらしいフィリが俺の手を引き、宝物庫に向かったのだった。

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