索敵機能
こうして魔王城に強化した結界を張った俺は、
「これでそう簡単には進入できないよな。それで、“常闇の魔王”の部下相手だと、どの程度持ちそうなんだ?」
フィリにそう問いかけると、フィリは考え込んでから、
「私が接触した魔王の部下と“同じ”とは限りません。どのような能力を持っているのかも不明……事前に、戦闘をしたレイナ達からもう少し魔王の部下の特徴を聞いておくべきでしたね」
「この結界、どんな攻撃に対処できるんだろうな。とりあえず防御、みたいな結界なのか?」
「おそらくは。お姉様の城もそういった結界はそのような効果でしたから」
どうやら耐衝撃性もありながら、熱などにも強く、侵入を阻む新素材がこの俺の城の周りを覆っている状況であるらしい。
とてもSFな感じがした。
さて、それは置いておくとして、
「それにしても何かいい方法がないかな。光の屈折を利用して遠くの映像を見たりは出来そうだが、相手の場所が分からない事にはどうにもならないな」
何しろこの魔王城、窓から見える範囲では森しか見えない。
木々に隠れるような状態で、人間……というか魔王の部下が動いていても分からない。
そこで俺は思った。
「フィリ、魔王の部下ってどうするんだ?」
「そうですね、集落を襲って隷属させる場合もあれば、部下を作ったりもできますね。また支配寮にいる部族を従わせたりもしますが……大抵人間以外が多いですね」
「そうなのか。うーん、その仲間を穏便にどうにかするには、作る方がいいのか?」
「作れるのは基本的に魔物で弱いですよ」
そう言われて俺は、最弱っぽいスライムを思い出した。
これを大量に作り、女の子の服だけをとろとろに……よし、それで穏便に撃退しよう。
女の子が悲鳴を上げるのも魔王らしいので、これは許されるはず!
でもこれをやると男の服も解けそうだよな、そっちはいらないな……などと俺が考えているとそこで俺はあるボタンを見つけた。
「“魔王城索敵”スイッチ? なんだこれは。とりあえず押してみるか。ぽちっとな」
なんとなく押した俺は、すぐに目の前に大きなスクリーンが現れて、魔王城と周辺らしい立体的な映像が現れる。
なんとなくゲームのマップに似ている。
そして周囲には、そこそこ獣の群れのようなものなどが見えるが、そこで俺はとても目立つ奇妙なものが見えた。
「これ、人とかそういったものの集団に見えるな。そこの部分を拡大できるか?」
俺がそう告げると、さっと人物達の集団が、人間ぽい形で表れてそして、その上には小さく、簡易的に体力と魔力の表示、それから名前が描かれている。
ただよく知られているような人物しか載っていないらしい。
つまりそこに載っているのは、魔王の四天王の一人の名前。
「“四天王が一人、地獄のグラフィス”。結構魔力も体力があるが……あれ、ここに重なるようにして、変な人物の表示があるな。ここは拡大っと」
俺が気付いたのでそう呟くとそこには、名前の欄に、“勇者イズキ”と書かれていたのだった。