奇襲は防げた?
こうして結界を張って、その“常闇の魔王”という魔王の部下、四天王が一人が来ても大丈夫なようにすることに。
その機関部へは部外者禁止、という事で俺は現在フィリと一緒にそちらに向かっていた。
桜たちの相手は、シエラにお願いする。
調理場を好きなようにされるのはと、フィリは初めは渋っていたが、
「フルーツティを作っておきますので、早めにヒロ様のお仕事を終わらせてきてくださいね」
「……行きましょう、ヒロ」
何故かフィリがやる気を出してしまった。
やはり美味しいものにはフィリは目がないらしい。
そう俺が思いながら移動しているとそこでフィリが、
「とりあえずは二人っきりになれたので、細かな情報をお話ししましょう」
「? シエラたちの前でも良いのでは?」
「……まだ彼らをそこまで私は信用できないのです」
「大丈夫だと思うけれどな」
「根拠は?」
「いい人そうだし。桜も俺の知り合いだし」
「……話になりません。友人だからと思って油断をしていると、痛い目に遭いますよ」
フィリがそう俺にに忠告する。
それを聞きながら俺は、
「つまりフィリは俺を心配してくれていると」
「! ま、まあ、命は半分繋がっているのもありますし、ヒロは放っておいたら死にそうですし! うにゃ」
そこで俺はフィリをなでなでした。
フィリは幸せそうな顔になった。
なんだかんだであれな事を言っているが、根はやさしいいい子なようだ。
やはり大好きなお姉様が死んだことがトラウマに……。
「待てよ? フィリ、フィリの大好きなお姉様、イザベラが生きていたわけだし、その復習も兼ねた魔王らしい行動をする必要は、俺にはなくなったのでは?」
「うにゃ! ……うにゃ~」
「復讐は何も生まないだろうし良い事だな、うん」
俺がそう思って手を放した。
そこでフィリが先ほどまでのホワンとした顔ではなく睨み付けるように、
「駄目です。お姉様に酷い事をしたのは事実です」
「でも今は恋人と仲良くやっているんだろう?」
「……お姉様に男の恋人……私のお姉様に……」
ぶつぶつと数度呟いたフィリだがすぐに俺を見て、
「ですがそれは理由になりません。魔王たるもの魔王らしくいるべきです!」
「まあ、今はその話は保留で。それで“常闇の魔王”の四天王か、どんな奴らなんだ?」
「とても強くて残虐非道、といわれています。一度接触したことはありますが、お姉様も戦闘では苦戦しました」
「という事はフィリも戦ったのか?」
「ええ、あの時はとても大変でした。何とか撃退は出来たものの、あの後強い勇者に襲われて……今思えばあれも全て“常闇の魔王”の差し金だったのかもしれません」
「なるほどな。で、今回も四天王に攻撃させて俺達が弱った所で勇者による攻撃でも計画しているのか?」
それとなしに疑問が浮かんだのでそうフィリに俺は話すとフィリは黙ってからすぐに、
「ありそうですね。その準備はすでに進められていると。そしてレイナがここに倒れ込んでいたので彼らの奇襲を防げたとなると……そういった意味では、レイナを拾ったヒロは正解だったかもしれません」
フィリがそう答えたのだった。