現実を見る羽目になるんだし
“常闇の魔王”の四天王、それがこの城の近くにいるらしい。
このレイナという姫騎士がどの程度さ迷っていたのか分からないが、そういった人物がこの魔王の城の近くにいる……らしい。
ただいたからといって、
「魔王の部下が魔王の城の近くにいたからってどうなんだ?」
「……そうでしたね、ヒロはまだこの世界に来たばかりでしたからね」
深々とフィリは嘆息してから俺はじろりとフィリに睨み付けられた。
なんでだと思っていると、
「いいですか、魔王とはいえど、他の魔王にとってもこの魔王の城も含めて、魔道具屋らの宝物庫もまた魅力的なのです。だから奪いたいと考える」
「……凄い展開だな」
「それに魔王城周辺の支配権も手に入りますから。欲しくて奪いに来るなんてこともよくあります」
「そうなのか……で、その“常闇の魔王”は、そういった事をよくする魔王なのか?」
「はい」
フィリが即答する。
しかもさらに付け加えるように、
「しかも勇者に魔王の城を襲わせた後に乗っ取るといった事も何度かやっていますからね。だから勇者が何処の魔王の城に攻め入ったか持たず情報を集めているとかなんとか。……しかも出来立てほやほやな魔王ですからね、ヒロは。狙うにはちょうどいい獲物なのでしょうね」
うんざりしたようにフィリが言うも、そうなってくると、
「その四天王はこの俺の城を目指しているという事になるのか?」
「そうなりますね」
「それでこの城に、“結界”みたいなものははれないのか?」
「出来るでしょうね。この城の防御機構を使えば。普通は標準装備であるはずですし」
「じゃあ俺、一応最強魔王ではあるらしいからその俺が結界を張ったら、その“常闇の魔王”だか何だかの四天王はこの城に入って来れないのでは?」
「では、出入りはどうするのですか?」
「転移系というか空間を繋げればいいだろう」
確かその魔法はすでに使えるし、とそう思っているとフィリが、
「その手は使えるには使えますが、どんな結界も絶対に壊れないとは言えません。戦闘になる事はヒロも覚悟をしておいてください」
「戦闘か……この前の、どこかの魔王の品物を使った攻撃が俺の初戦闘になるのか? あんな感じでいいのか?」
「あれほどまでに相手が弱いとは思えませんが、大体あんな感じです。但し、一つだけ心にとめておいてください」
「なにがだ?」
「相手は、それこそ今度の相手は、ヒロを本気で殺しに来ます。だから比呂も手加減をしたり、生かしたまま返そうといった甘い考えは捨ててください」
「……あー、えっと、うーん」
「はい、と答えるまで、私はヒロに聞き続けます。この世界はそんなヒロみたいな甘い考えでは生きていけません。魔王でも勇者でもね。そちらの勇者サクラは分かるでしょう?」
そこで桜に話を振るフィリ。
桜は苦笑した。
「理想を持つのは大切よ。どのみち嫌でも現実を見る羽目になるんだし」
「貴方もすでに経験済みですか。それでヒロ、覚悟はしておいてくださいね」
そうフィリに言われてしまった俺だが、今一実感がわかない。
けれどとりあえずは、危険が迫っているのは確実なので、
「とりあえず結界だけは張って強化をしよう。彼らが来る前に」
おれはそう、答えたのだった。