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目撃して

 フィリがお姉様について、と聞いた瞬間、レイナの目が宙をさまよった。

 シエラに食べさせて貰っていた俺が気付いたのだから、当然フィリも気づいたのだろう。

 というかさっと眉を寄せてフィリは、


「……お姉様に酷い扱いをしていたならば、わが命を持って……」

「ち、違う違う。酷い扱い何てしていないよ! むしろ客人としてもてなしてかくまっているわけで、私の方が恩人の立場だよ!」


 レイナが焦ったようにフィリに言うも、フィリは信用していないらしくじっと睨みつけてから、


「ではなぜいま微妙な顔をしたのですか? 私に話すと何か……私がおこるようなことをされているのでは?」

「え、いえ……えっと……」

「言いなさい。もし言わないのであれば……」

「い、言わないのであれば?」


 恐る恐るといったようにフィリにレイナが問いかけるも、フィリはそこで嗤いながら、


「今あなたのお皿にあるパンケーキを取り上げましょう」

「! 酷い、鬼! こんな何日も森をさまよって何も食べていない私に、なんてことを!」

「嫌なら正直に答える事ですね。……一体何を隠しているのですか?」


 そう脅すように問いかけた所でそれまで黙って食べていたミストレア姫がが、


「あ、もしかしてあれの関係かしら」

「……ミストレア、何かご存じなのですか?」

「名前が呼び捨て……でもこれはこれで新鮮ですね、うん」

「よく分からない事で感慨深い顔をしていないで答えなさい。私のお姉様に関してあなたも知っているのですか?」

「いえ、知っているというか、イザベラという人にも会った事があります」

「お、お姉様に、どうでしたか!」


 身を乗り出して聞いてくるフィリに今度はミストレアもどうしようかというような顔になってから、


「その、フィリはお姉様が大好きですか?」

「もちろんです、私の命に代えても守りたかった方です」

「そう、ですか……えっと、ですね、その……これはその、私が偶然、レイナのお城の庭で目撃したのですが……」

「さっさと言いなさい」


 フィリが苛立ったようにそう言うと、異を決したようにミストレアが頬を赤らめて、


「キス、していました。勇者イズキと」

「……それは勇者イズキが、嫌がるお姉様を無理やり押さえつけて唇を奪っている最中を目撃してしまったと?」

「ち、違います! な、なんていうかこう、お二人ともお互いを見つめ合って、そっと優しく重ねるような……こ、恋人同士、といいますか……」


 恥ずかしがるように告げたミストレア。

 そしてそれにさらにレイナが続ける。


「命を救われたのもあって、イザベラは勇者イズキに好意を持ってしまったらしい。それで最近では所かまわずこう……手を繋いだり、嬉しそうに話していたりと、何処からどう見てもカップルにしか見えないような光景を我が城でもしていて……その……うん」


 それ以上レイナが語らなかったのは、フィリが凍り付いたように動かなかったからだろう。

 大丈夫かなと思っていると、今度はフィリが涙目になって震えだし、


「わ、私のお姉様が男に寝取られた……」


 などと、何かが間違っているようないないような言葉を呟いたのだった。

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