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ラノベで学習済み

 俺は怯える目の前の美少女に手を伸ばした。

 どことなく涙目で小さく震えている彼女。

 命の危険がないからと言って、他の危険がないわけではない。


 そんな当たり前の事にも彼女は気づかなかったようだ。

 自然と俺の唇の端が上がるのを感じる。

 楽しくてたまらない。


 これからこの美少女は一体どんな反応をするだろうか?

 怯えてその場から動く事すらままならない彼女。

 そんな彼女にゆっくりと俺は手を伸ばし……そのまま頭を撫でた。


「ふえっ?」


 何かをされると思っていたらしい彼女、フィリは頭を撫でられて変な声を上げた。

 だがそのまましばらく撫でていると、


「うにゃ~、あ~」


 日向ぼっこをして心地よさそうにしている猫の鳴き声のような声を上げる。

 しかも目がとろんとしてきて本当に心地よさそうだ。

 なので俺は、更に彼女の頭を撫でる。


 なでなでなでなで。

 彼女の意識は完全に俺の撫でる攻撃のとりこになってしまったようだ。

 事前にラノベで学習しておいてよかったぜ! と思いながら俺はしばらく撫でているとそこで、はっとフィリが正気に戻ったようだ。


 俺の方を、何をするんだというかのように睨み付けるもすぐに、先ほどよりも丁寧に頭を撫でてやると、とろんとした顔になる。

 可愛い。

 美少女が幸せそうにとろんとした表情をしている。


 まさかこれほどの効果があるとはと思いつつも、いつまでも撫でているのはどうかと思うので、そこで俺は撫でるのを止めた。


「あ……」


 手を放すと、名残惜しそうにフィリは俺の方を見る。

 とても物欲しそうな顔をしているように見えたがすぐにきっと睨み付けて、


「さすがは頭の中がピンク色で染まっていそうでも魔王という事ですね。一瞬で私を魅了して手懐けようとするとは……どのような魔法を使ったのですか? それが魔王様の世界の魔法ですか?」

「? 魔法なんて使っていないぞ。俺はただ頭を撫でただけだ」

「嘘ですね、この私、“暗黒のフィリ”が頭を撫でただけでこんな手なずけられるなど、ありえません」

「いや、本当にただ頭を撫ぜているだけだ。それだけでこんなに可愛くなるものなんだな」


 何故か魅了の魔法だと勘違いされてしまった俺は、そう言い返す。

 ついでに可愛かったので素直に可愛いと言ってみたのだが……。

 フィリが顔を赤くした。


 それも顔面が真っ赤と言うように赤くして、言葉を失ったように震えている。

 こういったシーンを俺はラノベで事前学習していたのでその辺りは問題なかったのだが、これはこれで可愛い。

 だから試しに、


「顔を赤くしていても可愛いな」

「……う、ぐ……こ……の…」

「ん? どうした?」


 聞き返すと悔しいやら恥ずかしいやらでフィリはそれ以上言い返せないようだ。

 可愛いな、と俺が思っているとそこでコホンとフィリは一度咳払いをして俺を指さし、


「ま、まあその辺りの話はおいておくとして、魔王として目覚めさせたのですから魔王として働いてもらいます」

「そうなのか?」

「ええ、まずは人間の小国に宣戦布告して、首都を焼き払いましょう! って、ふああああ」


 俺はそこで再びフィリの頭を撫でた。

 まさかそんなとんでもないことを言い出すとは思わなかったなと俺は思いながら、とりあえずこの少女はナデポで大人しくさせることに決めたのだった。



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