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私の城に居ます

 とりあえず魔王城内に来てもらう事に。

 顔が青いレイナを案内しつつ、シエラにすぐにできるお菓子か何かはあるか、それとも既存のものがあるかと聞いてみると、


「ではパンケーキでも焼きましょうか」

「パンケーキ!」


 一瞬にしてレイナの顔に笑顔が浮かぶも、すぐに現在の状況に気付いたのか青くなる。

 ふらふらした足取りで案内される様は、なんだか連行しているみたいだなと俺は思った。

 そんなこんなで調理場に向かい、そのすぐそばのテーブルに座るよう促す。


 シエラにはパンケーキを作ってもらう間、このレイナに話を聞くことにした。


「それでどうしてこんな場所に?」

「……騎士としての訓練の一環で魔物との戦闘をしている最中、“常闇の魔王”の四天王が一人と遭遇し、戦闘になり……仲間逸れてしまったのです」

「それは大変だ。でも“常闇の魔王”? そんな特別そうな名前の魔王がいるのか? フィリ」


 この世界に来たばかりの出来立てほやほやな新米魔王の俺は、この世界の話には疎い。

 だからフィリに聞いてみるとフィリは嘆息し、


「この世界で最凶と呼ばれる魔王のうちが一人、“常闇の魔王”ですか。それの四天王と言えば、残虐で強くて有名ですね。よく逃げてこられましたね」

「一緒に勇者イズキがいましたから。彼が囮になるようにして、どうにか私達は逃げ出した形です。……そして道に迷いながらこちらまでたどり着いた、といった所でしょうか」


 そう説明しながらも顔が青いのは現在も、別だとはいえ魔王の城に彼女がいるからだろうか。

 と、そこでフィリの様子がおかしいと俺は気づいた。

 突然うつ向いて、ぐっとこぶしを握り締めて、その手は小さく震えている。


 どうしたんだろうと俺が思ってみているとフィリが、


「勇者イズキ……お姉様を、あの勇者が倒した時あとから来たと聞いた記憶があります」


 どうやらフィリの大好きなお姉様が倒された時にやってきた勇者の一人であるらしい。

 そう思っているとそこでレイナはっとしたように、フィリを見た。


「エルフでこの髪の色に、赤い瞳……そしてフィリ……まさか貴方はあのイザベラ魔王の大事にしていた“妹”のような方ですか? “暗黒のフィリ”などと言う二つ名を持つ……」

「そうですよ。イザベラ魔王は、お前達が倒したお姉様の名前です。まさかこんな場所で聞けるとは……」

「聞いた通りの容姿だったのですぐ分かりました。なるほど、紙を三つ編みにしてあげると喜んだんですよ~、といった話をよく聞いていましたが、そういえば髪の長さがひざ下くらいまでの長さだと聞いていましたが、短くなっていますね~」


 レイナが一人そう頷いている。

 だが今の話は、やけに昔のフィリに詳しくて、しかも本人から話を聞いたように聞こえる。

 その違和感に気付いたのだろう、フィリが訝しそうな顔をしてレイナを食い入るように見てから、


「城の戦に参加した、というわけではなさそうですね。一体どこで私のお姉様とお会いしたのですか?」

「……もしかして知らない、という事なのか? そう言え何処にいるか分からないと聞いていたような」

「答えなさい!」


 怒ったように机をたたくように立ち上がったフィリに、レイナはびくっと震えてから戸惑ったように、


「魔王イザベラ、元魔王ですが……彼女は今、私達の城に居ます」


 そうレイナが答えたのだった。

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