調理場
調理場に案内してもらえないか、とシエラは言う。だが、
「フィリ、調理場は何処にあったんだ?」
「確か下の方に見かけた気がします」
というわけで探しに行こうと思った俺だが、
「この魔王城の地図みたいなものは、目の前に表示されたりしないのか?」
「そうんな能力は聞いた事がありませ……」
フィリが俺の言葉に何を言っているのですかというかのように呟くも、そこで目の前に光の四角いものが表示される。
しかもそこには透き通るような形で魔王城の内部までよく分かる、3Dの画像が表示されている。
上の方に三つの光があり、そこに俺が注目すると名前が現れる。
すごくハイテクだ。
やはり次の時代は“魔法”の時代だなと俺はひとり頷きつつ、
「なるほど、ここにいるのが俺達か。ゲームの画面みたいで分かりやすくていいな」
「……何ですかこれは」
「魔王城の見取り図みたいなものか。えっと調理場は何処だ? ……三階付近にあるらしい。ここからだとこの階段が一番近いな」
俺が中に書いてあるものを読んで構造を把握するとそういう事になると気付いた。
それからどこか疲れたようなフィリと楽しそうなシエラを連れて調理場に。そこには、
「なんで俺達の世界のキッチンみたいなものが?」
「……これが、ヒロの世界の存在なのですか? 不思議なものが一杯……」
「冷蔵庫もあるしガスコンロもあるし、でもそういえば食材はどうなっているんだろうな。この世界のものがおいてあったりするのか?」
元々母に料理を作ってもらっていた俺は、料理のれぱとりーが少ない。
だから作るにしても教えるにしても俺の場合は少し難しい、そう思っているとそこでシエラが冷蔵庫に興味を持ったらしく、
「開いていいですか?」
「いいぞ」
というわけで開いてみると、中にはよく分からない食材が大量に入っている。
だがそれを見てシエラとフィリが目を輝かせた。
「あれは、絶妙な苦みと甘みが美味しい、“トリの葉っぱ”」
「こちらは、“トメトの果実”、どれも高級で美味しい素材ばかり、最高です」
などと喜んでいる。
どうやらこの世界の食べ物があるらしい。
本当にこの魔王の城はどうなっているんだろうなと思っているとそこでシエラが、あるものに気付いたらしい。
「これは何ですか?」
「炊飯器だ。俺の世界では、お米を焚くのに使う。そこの棚に米があるから、後で炊いて見せるか」
「それは“メコの穀物”に似ていますね」
シエラが俺の視線の先の米の袋(ミルキークイーンと書かれている)を見てそういう。
この世界ではどう食べるのかを聞くと、いためてからスープで煮るらしい。
リゾット等のようなものだそうだ。
しかもカロリーが高く魔力回復もしやすいとても優良な高級品で、小麦のようなパンの材料となる物よりも値段が高いらしい。
後でこれを使った料理も作りますねといったシエラだが、
「朝食はパスタにしましょう。ここに乾麺がありますし」
との事で、朝食はチーズクリームソースのかかったパスタになったのだった。