エロの気配を感じた
こうして俺は異世界に飛ばされてから、何故か幼馴染と戦う羽目になったかと思うと食事を人間の町でしてから、奴隷市場に連れていかれたと思ったら奴隷にされかけて戦闘をして感謝されるかと思ったら逃げられたけれど可愛い少女にお礼を言われて、しかも呪いを解いたら一緒に来てくれることになったらしい、という展開をこの世界で約一日の間に体験した。
魔王業とはかくも大変なものなのか。
という異世界での魔王の大変さに前途多難な不安を覚えながら、俺はその夜ぐっすりと眠った。
そして次の日、朝何時かは分からないが日が昇った頃、俺の部屋の扉が大きな音を立てて叩かれる。
布団の中が温かく心地よかった俺は、それらすべてを放置して心地よい惰眠をむさぼっていた。
この至極幸せな時間から目覚める理由があるのだろうか?
いや、ない。
そうして俺が布団の中でもぞもぞしていると、今度は度に向かって大きな爆音のような音がする。
それこそドアに向かって爆発するような魔法を打ち付けているかのような音だ。
壁が小刻みに揺れているが、その程度で済んでいるらしい。
魔王城の鉄壁の防御は素晴らしい、そう思いながら布団の中でもぞもぞしているとそこで、
「ヒロ、出てこい、出てくるのです。このエロ魔王が! 今日という今日は絶対に許しません! この私に、よくも……よくも」
「フィリさん、落ち着いてください! わざとじゃないかもしれないじゃないですか! ……ほ、ほら、この城で働いている方がとか」
「この城には私と、ヒロと貴方、そう、シエラしかいません! 後はさん付けでなくて結構です。私もあなたの名前を呼び捨てにしますから」
「は、はい。でも、もしもああいったものをヒロ様が御望みなら私……」
そこでシエラが、何処となく声を潜めて恥ずかしがるように言う。
エロの気配を感じた俺は耳を澄ませた。
するとフィリが、
「な! 正気ですか!」
「え、えっと助けていただいたのもありましたし、その、悪い方と戦っているヒロ様は格好良かったと言いますか……」
「確かにあのエロ魔王、やる時はやるタイプのようですからね。でも流石にクローゼットを開いたら、あんなのがあったら怒るでしょう! 貴方だって昨日の服と同じじゃない」
「た、確かにアレを見た時は凍り付きましたね。過激だと思いました」
シエラがやはり恥ずかしがるように語っている。
だが過激とは何の話だと俺が思っているとそこでフィリが、
「あんな紐みたいな服、着れるわけがないでしょう!」
怒ったフィリの声に俺は飛び起きた。
紐のような服が、彼女達の部屋のクローゼットに入っていたらしい。
俺は漫画などで、女の子の衣装が露出度が高かったりするのはそれはそれで、と思っていたが、現実に彼女達の部屋にそれが置かれる状況になっているのはごめんこうむりたい。
俺、そんな変態じゃない。
というかシエラが俺が望むなら着るとか言っていたが、俺、そんなのは望んで……でもビキニとかなら……いやいや、紐だしもっとすごい服なのだろうと俺は思う。
だから混乱した頭で俺は自分の変態趣味を否定すべく、扉越しでフィリとシエラに釈明したのだった。