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この危機をどう回避すべきか

 悲鳴を上げて逃げていく、奴隷だった人達やこの奴隷市場で動いていた人物達。

 敵であるこの奴隷市場の人物達が逃げていくのは分かるが、


「なんで奴隷だった人達も逃げていくんだ? 俺、助けたのに」


 腑に落ちないので俺は呟くと、勇者をやっている桜が呆れたように、


「それはいきなりあんな怪しい力を見せられたらそうなるでしょう。勇者という宣言もないわけで、そうなるとあの奴隷にされた人達だって、次は自分の番だって思うかもしれないじゃない。実際に逃げたって事はそう思ったって事だろうし」

「う、それは……」

「しかもあの悪人を怖がらせようと思ったのかもしれないけれど、悪役みたいな発言になっていたわよ?」

「……はい」

「というわけで、こんな危険そうなヒロは私が連れて帰って問題ないわね」


 桜が楽しそうに俺に言う。

 俺はじりっと後ずさる。

 このままでは俺は、俺は、桜の逆ハーレム要員にされてしまう!


 この危機をどう回避すべきか、そう俺が思っていると、


「ヒロ、よくも私の出番を邪魔してくれましたね」


 暗い影と怒りを秘めたように、ゆらりとフィリが現れた。

 それは先ほどの用心棒のような魔法使い、先生、と呼ばれていたあの人物を俺が魔法で弄んだことを言っているのだろうか。

 そう言えばあの倒れた魔法使いは何処に言ったのだろうと思って気絶させておいた場所を見ると、姿形がない。


 おそらくはここにいた人達が、大量に逃げた時にどさくさに紛れて逃げ出したのだろう。

 意外に起きるのが早いというか、小物というか……。

 そう思っているとフィリが俺の前にやってきて、


「私はここ周辺を一気に破壊し、阿鼻叫喚の地獄絵図を作り上げる予定だったのです! なのに邪魔をして……これでは魔王としての威厳が保たれません! こんな薄情な人間達の肩をどうして持つのですか!? 仕方がないのでこの周辺だけでも破壊して壊滅的な被害を……ふわぁああ」


 とりあえず再び何か危険な事を言い出したフィリの頭を撫でる。

 こ、こんなもので私が……と小さく呟きながらも大人しくなるのを見ながら俺は桜に、


「それでどうしようか。とりあえず俺達は帰るかな。そういえば、そこにいるのはこの国のお姫様か?」

「そうですよ、男装で色々な場所に移動するので……まさかこのような場所にいるとは思いませんでしたが、姫は私が連れて帰るから」

「そうなのか。じゃあ、そっちはそれでいいな」


 そう俺が言うと、少年だと思っていたお姫様が俺の方を見て、


「……人質にしようとは思わないのですか?」

「? なんで? 別にお嫁さんにしたいわけでもないからな」

「? 何を言っているんですか?」

「え?」

「え?」


 お姫様は不思議そうに俺に聞いてきて俺は、逆に何故聞き返してくるのか分からずに聞き返した。

 どうやら認識の齟齬がまたあるらしい。

 そう思っているとそこでフィリが、


「そうです、お姫様を人質に宣戦布告と虐殺を……ふあああ」


 どうやら驚きのあまりフィリの頭を撫でるのを止めてしまい、暗黒面に落ちそうになっていたらしい。

 危ない危ない、そう思いながら俺がフィリの頭を撫でているとそこで、


「あの、先ほどは助けていただいてありがとうございました」 


 そんな少女の透き通る声が聞こえたのだった。

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