仲間だと思われてしまった
突然俺は桜に話を振られた。
そして振られた俺としては、
「なあ、桜。挑発したというか、彼らの目的は桜なんだろう? なんで俺が戦う事に?」
「ん? 戦って倒されたら逆ハーレムに引き入れやすそうだったから。あ、フィリちゃんもこっちで面倒みるから安心してね」
「いやいやいや、俺は可哀想な一般市民です!」
「もうヒロは一般市民じゃないからね~、というか今の会話で、すでに仲間だと思われたみたいね」
なんだと、と俺は思っていると彼らの視線が俺に向いている。
敵意丸出しの視線だが、確かに今の知り合いのような会話では桜の仲間だと思われてしまっても不思議ではない。
というか、思われているとしか考えられない。
いつの間にか巻き込まれてしまった事に俺は気づいた。
何てことだと俺が思っているとそこで、
「おい、早くしろそこの男!」
「……ああ、俺が名指しで指名されているという……」
俺は平和を愛する一般人(魔王)なのに! と俺が思っているとそこで目の前の男が、
「そういえば、お前は武器もないようだったな」
「あ、公平の精神にのっとり、荷物を探してきてもよろしいでしょうか」
「駄目だな。あの勇者桜には散々な目にあわされたからな。まずは前哨戦でお前を追いかけまわし許しを請うのを見ながらなぶり殺しにしてやる」
「えーと、人殺しはいけないと思います」
「何を言っているんだ? 騎士団には金を掴ませておけばどうにでもなるのを知らないのか?」
嗤う目の前の悪人。
法治国家とかそんなもの、何処にもない世界な感じなのかな? と俺は思った。
漂う世紀末臭と、目の前の悪人。
人が苦しむのを見て喜ぶとは何たるサディストというかサイコパスというか……頭が悪いというか。
仕方がない、ここで逃げても背後から襲われるのも嫌だし、今の所は1対1だからまあいい。
「そもそも魔王の城にある武器ってどんなものかも見てみたいしな」
「……随分と余裕だな。だが、これを見てもそうでいられるか!」
と目の前の悪人が言うと、その巨大な槌の周りに炎が舞う。
赤い炎だ。
見た目は派手だなと思いつつ観察すると、その炎は悪人には襲い掛からないらしい。
だが少し離れた俺の位置からはその熱量を感じる。
どういった仕組みかは分からないが、とりあえずは炎の塊をそこら中に回すものだと考えていいだろうと俺は思う。
さて、どうしようか。
「とりあえず様子見かな」
「何をごちゃごちゃと……死ね」
そこで死ねといいながら大きな炎を纏った槌を、俺に向かって降り下ろす。
俺はほんの少し重力を変化させて、その場から羽飛ぶように移動する。
ただこの場合は調整が難しそうで。
「うーん、すぐそばの家の二階近くまで飛んでいるしバランスをとるのが意外に難しいな。風で空中に浮かんでいる状態にするか」
体を浮き上がらせるような強い風よりも、追い風のようなものを俺は想像して特殊能力を使う。
要は目の前の悪人の技が当たらなければいいのだ。
それでしばらくは様子を見て……変な必殺技みたいな機能がついていないかなども見て、この悪人を倒す最適な方法を考えようと俺は思いつつ、顔を真っ赤にして踏みつぶそうと槌を振り回す悪人を俺は眺めたのだった。
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