悪い奴は倒されました
唐突に現れた桜。
さっき逃げて行ったばかりなのにまた会うとは、と俺が思っているとそこで、
「勇者、サクラのいるこの場所でよくもそんな犯罪行為が出来るわね。全く、奴隷の売買の禁止もようやく脅し……人道的見地から、止めたというのにまだやるなんて」
「……貴様か。おかげで我々もこっそり“商品”の調達をしないといけなかったというのに……だが、ここで憎き相手をたたき潰す機会が巡ってきた、というわけか」
「へ~、この私を倒すというの? 貴方が?」
「先生……はそこにいる少女に、怪しげな術で倒されてしまったが、今のを聞いて別の魔法使いの先生もこちらに来ている。たかだか勇者などという小娘一匹、今までの恨みを晴らさせてもらおうか。何なら私の奴隷にしてもいい」
下卑た笑いを浮かべるその男。
ちなみにその怪しげな術を使ったのは俺だったが、まるで気づかれていなかった。
と、それに馬鹿にしたように桜がその男を見て、
「寝言は寝てから言う事ね。でもさっきの爆発や怪しい術を使う少女ね……あれ、フィリちゃん?」
そこで桜がようやくフィリの存在に気付いたようだった。
目を瞬かせてからフィリを見て、
「フィリちゃん、何でこんな所にいるの?」
「そこにいる男の仲間に油断をしていたので気絶させられて奴隷送りにされた所です」
「わーお、フィリちゃんを捕まえる何て目が高いわね。美人で可愛いし」
「……桜と話していると、ヒロと話しているような疲労感が漂う気がします」
そう、疲れたようにフィリが呟く。
だがその言葉に反応したのはこの奴隷商の男だった。
「フィリ……フィリだと? まさか、数か月前に行方知れずになったとされる“暗黒のフィリ”ではないだろうな」
「ふーん、貴方は私の事を知っているようですね。それで、私をこのような目に合わせて……ただで済むと思っているのですか?」
にたりとフィリが笑う。
その獰猛な笑みにこの奴隷商の男は一瞬ひるんでからすぐに、
「く、この……お前達、何としてでもこの勇者と“暗黒のフィリ”を倒せ!」
「「は、はい!」」
そして襲ってくる彼の部下たち。
そこで桜がフィリに、
「フィリちゃん、今回は共闘しましょう!」
「……確かに目的は一緒ですから、仕方がありませんね」
嘆息するようにフィリは答えて、二人で複数人の男たちを相手取り戦い始める。
だが人数としては劣勢であるはずの二人だが、次々と敵をなぎ倒し、負ける兆しはどこにも見えない。
とりあえずそれらを見ていた俺は、この二人に任せておけば大丈夫だろうなと静観しておくことにしたのだった。
案の定、すべて倒しきった後、桜とフィリが、手分けして奴隷の檻を空けていくがそこで、
「あれ、ヒロも捕まったままなんだ」
「ああ、殺さないで戦える県などの道具が入ったリュックを奪われたから、どうしようかと思って行たらフィリの檻が爆発して~(以下略)」
「そうだったんだ。でも、檻の中にヒロがいるわけで」
そこで桜はそう呟き真剣に俺を観察するように見てから、
「ひょっとして檻のまま持っていけば、ヒロを逆ハーレム要員に?」
俺はそれを聞いた瞬間、檻の片方の部分の格子を十本ほどとろけさせてから固まらせた。
これで簡単に出られる。
そして出ると桜は、
「残念だわ。でも今日は別れてすぐに会うとは思わなかったわね」
「美味しい食事処を俺は案内してもらって服を着替えたらここにフィリに連れてこられて……なんかそのまま商品にされた」
「それは災難でしたねっと。あれ?」
そこで檻から出てきた少年に桜が気付いた。
先ほどから俺が話していた人物だが、そこで桜は彼を見て、
「あれ、姫、どうしてこんな所に男装しているのですか?」
と、問いかけたのだった。
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