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呆然として

 爆音とともに、檻が破壊された。

 確かあっちはフィリがいた方だなと思っていると、


「愚かですね。やはり人間は。この私を捕えようとは、ね」


 冷たい声が聞こえる。

 だが周りには倒れている女性がいて、無関係な他者を巻き込まないようにという考えはないようだった。

 どうしようかと俺が思っていると、


「まさかこんな強い力を持ったエルフが……お前ら、派手に動かれて気づかれるのもまずい。何せ今は、奴隷の売買は禁止されているからな!」


 などと門番の近くにいたよく見ると他の奴らよりは身なりの良さそうな男が叫ぶ。

 そうか、奴隷売買禁止していたのにうっていたんだとか、昔と同じ場所で禁止物販売しようとしているのかとか、色々と突っ込みたかったのだがそれは置いておくとして。

 その身なりが少し良さそうな人物が、


「先生、お願いします!」

「やれやれ、まさかこの私の出番が来るとは」


 といって黒いマントを羽織ったひょろりとした背の高い男が現れる。

 見た範囲では奇抜な恰好をした魔法使い、といったように見える。と、


「まさか私の特製の檻を壊すとは、なかなか素晴らしい力を持ったものが紛れ込んでいたものです」

「鬱陶しい。下らない者と話すことなどありません。そして……今すぐこの私に、泣いて許しを請うのであれば、見逃してあげてもいいですよ」


 フィリがそう言って笑う。

 あの笑顔はどう見積もっても、見逃してあげようなんて顔ではない気がする。

 それに、この魔法使いがそれに頷いて許しを請うよように見えなかった。

 

 先ほどの発言からもプライドが高そうだったから。

 案の定、


「この私に許しを請えと? 冗談でしょう?」

「残念です。あなたはその言葉を後で後悔することになるでしょう」


 冷たく一言告げたフィリ。

 それに魔法使いが、


「くくく、この私がここまでコケにされるとは、ね。お前の方こそ許しを請う準備をしておくのだな、小娘が!」


 などと、どこかで聞いた事があるような悪役の台詞を告げてその魔法使いは走り出そうとする。

 今だ、そう俺は思った。


「うぎゃあああああああ」


 男の魔法使いが、悲鳴を上げて空高く飛び上がる。

 周りの男たちも呆然としている。

 俺以外の檻に入っている男の奴隷たちも、好奇心から見ていたがためにその光景を何が起こったんだというかのように見ている。


 そしてフィリも、凍り付いたように笑顔のまま微動だにしない。

 ちなみに、俺は驚きはしなかった。

 何せこの状況になったのも俺のせいだからだ。


「ふむ、重力が30分の一だとこうなるのか。あ、落ちてきたな。……とりあえず振り回すか」


 そう俺は小さく呟いて……少年はそれに気づいたようだが、俺は素知らぬ顔をしてこの男の魔法使いを宙を飛び回らせるという、ジェットコースターさながらのエンターテイメントを楽しんでもらうことにした。


「うぎゃあああああ」


 相変わらずな悲鳴を上げるこの人物。

 そこで悲鳴が唐突にやむ。

 どうやらようやく気を失ったようだ。


 うむ、無力化できた、と思って俺は地面に転がすと、


「せ、先生! くそ、使えねーな。おい、お前達、あの小娘を殺せ!」


 といったようなことを言い出す。

 だが先ほどの話でこれが非合法だと知っていた俺はその近くにいた少年に、


「この世界には警官ているのか? その警官て今は何処に居たりする?」

「警官、ですか?」

「こういったヤツラを取り締まる人達か」

「あ、それなら騎士団ですね。今なら、食堂にいると思います」

「その場所の地図みたいなものって持っているか?」

「……あります」


 取り出した紙の地図で、騎士団の食堂のある場所を……と俺が思って探し始めた矢先、その人物が現れた。


「へ~、こんな同じ場所で、奴隷販売なんて……私のいる国でよくできたわね!」


 どこかで聞いた事がある声……というか桜が現れ、何故か傍にいる少年がびくっと肩を震わせたのだった。

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