服を着ることに
こうして服を買いに行く事にした。
まずはどちらの服にしようかとフィリに俺は話すと、
「……魔王様に敬意を表して、まずはヒロの服からです。どんな服がお好みですか?」
「普通の村人っぽい服かな」
その答えにフィリは少し黙ってから、
「村人ですが、それでも余所行きのような服にしましょう。それぐらいの方がいい」
フィリは頷き俺を服のお店に連れて行く。
ごく普通の看板がかかった男性の服の店。
そこでまず中に着る白いシャツのようなものを選んで、体に合わせる。
それからベストとズボンのような物を決めるが、
「目立たずかつ上品な雰囲気を幾らか出すようにするには、黒といった魔王色よりもこの、赤茶色っぽい色の方がいいでしょうか」
「俺、こっちのタイムセールにもなっている緑色の服で十分なような……」
といって、タイムセールと書かれた箱に向かおうとした俺は、フィリに手首を捕まれて、
「いいから安すぎる服は着ないでください。むしろ、先ほどのケーキのお店もそうですがここ一帯は、どちらかというと治安が良く、高級なお店が多い地域です。そんな恰好では笑われてしまいます」
「なるほど。……だったらフィリの選んでくれた服にする。俺はよく分からないし」
実の所そのタイムセールの服と、この服の違いが俺はよく分からなかった。
それにフィリに、これだからヒロはと嘆息されるも、結局はすぐに選んでもらった服を購入して、試着室で着替える。
こうしてこの世界の村人(余所行きの服装)に変身した俺は、次にフィリの服を身に行く事になったのだが……。
「さすがファンタジーの世界。かの有名な、ビキニアーマーがあるなんて」
俺は衝撃を受けた。
ゲームなどでは女性がつける防具として存在を確認されているが、実物を見るのは初めてだった。
もしかしたならコスプレイヤーの人が身に着けているといった形で現実に存在したかもしれないが、生憎俺はそこまで見ていなかった。
ビキニアーマー。
それは水着のようなものに幾らか肩当などがついた金属製の水着……ではなく防具である。
主に女性が着る防具であり、全体的に肌色が目立つ。
そんな絶対に男が着たら大惨事になりそうな防具だった。
そこでフィリが、
「着ませんよ、こんなもの」
「で、でも試着くらいは……」
「ヒロが着るのが条件です」
「はい、次を見に行きましょう」
俺は速攻で手の平を返す。
それから服を見始めるが、所々に、清楚とはいいがたい“紐”のような服や、体のラインが出てしまうSFなんかにありそうな服に軽く装飾を施したものなどとても……。
「普通の服がいいのでこの、ロングスカートとブラウスでいいですね」
「……」
「残念ですね、ヒロの思い通りのエロ服など私が選ぶとお思いなのですか?」
と、ドヤ顔で言い切ったフィリだがその選択に俺は、
「それは、童貞を殺す服だ」
「……何ですと?」
「清楚なのにエロいという服、それがこれだ」
フィリの手に持つその服を指さし俺が答えると、フィリは変な顔になった。
次に冷たい目で俺を見て、
「なるほど、ヒロはどんな服を見てもエロく見えてしまうというのですね」
「ち、ちが……」
「もう放っておきましょう。さて、買ってきましょう。そして……早速あの場所に向かいましょうか」
俺が何かを反論する前に俺はフィリにそう言われてしまったのだった。
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