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イケメンチートが欲しかった

 現れた銀髪美少女が、俺の事を魔王と呼んだ。

 そうですか魔王ですか、と俺は思いながら、


「出来れば倒されるような魔王ではなく勇者になりたかった。夢とはいえ」


 と、呟いてみた。

 俺自身が普通に正義の主人公が大好きなごく普通の男子高校生だったので、この展開は頂けなかった。

 だからそう呟いたのだけれど、それを聞いた目の前の美少女が跪いた状態から立ち上がり、つかつかと俺の前まで歩いてきて、


「今、魔王様は勇者になりたいとおっしゃっていませんでしたか?」

「え、えっと、はい」

「人族の邪悪な侵略者、“勇者”になりたいとは正気ですか!?」

「え、え? でも俺、人間というか人族じゃないのか?」

「……異世界の存在であったものがこの世界で目覚め魔王となったのです。もう貴方は人族ではありません」

「え?」

「そもそも異世界人なので、人族ではないです」


 そう俺は言われてしまった。

 どうやら俺は異世界の魔王になるという異世界転生をしてしまったらしい。

 何故、という気持ちが強いが現状ではそれ以上の情報はない。


 だからとりあえず俺は冷静に考えてみた。


「え、えっと俺は今、昔とは別人となってしまった、という事か?」

「……見かけは同じですが、この世界の魔王になっています」


 目の前の美少女は、少し間をおいてから俺にそう告げる。

 だが今の話の中で、重要な部分が抜けているのに気づいた。

 だから確認のために目の前の彼女に、


「今、俺が前と同じ姿だと姿だと聞いているが聞いた気がしたんだが」

「はい、魔王様は以前と同じ姿です。何か問題でも?」


 不思議そうに問いかけてくる彼女に俺は、絶望的な気持ちになった。つまり、


「どうせ転生するなら、“イケメン”に転生したかった!」

「え、いえ、え? イケメン、ですか?」

「そうだ、女性が一目見た瞬間によって来るような、イケメンチートが欲しかった!」


 そう、彼女いない歴=年齢の俺は、どうせならイケメンという至高の属性を味わってみたかった。

 だがそう情熱的に語り掛けた俺に目の前の彼女は、何処か引きつりながら、


「女性にモテてどうするんですか。女にモテたいのですか?」

「もちろん、お姉さまキャラから妹キャラツンデレヤンデレク―デレ獣耳娘といった人が今で全てにモテたい」

「……できますよ、魔王様の魔力をもってすればそのような魔法が使えます」


 なんだそんな事かといったように目の前の彼女は嘆息してから俺に告げる。

 態度がこう、敬う物から、段々に下僕を見るようなものに変わっているような気がするのは気のせいか、と俺は思いつつ、イケメンチートの無限大の可能性について抗いきれない魅力を感じ取っていたがために俺は……その態度については無視して、聞いてみた。


「そのような魔法ってどんな魔法なんだ?」

「そうですね、“夢人形”という魔法で、洗脳して自身の思い通りにする魔法がありますね。魔王様の魔力があれば容易です。ほとんどの好みの女性はいいように扱えますよ」

「……犯罪系はちょっと」


 俺は速攻でお断りをした。

 女の子にモテたいのは事実だが、そんな風に人の心を捻じ曲げるのはあまりよろしくない。

 だがその答えは目の前の彼女には不満だったらしく、むっとしている。


 けれどすぐに表情が消え、


「ああ、なるほど。洗脳ではなく意識を残したまま抗う術もなく弄び阿鼻叫喚させて精神を壊したいと、そういう事ですね。それならば“くぐつ人形”という魔法がありまして、本人の意思とは無関係に主人の行動に従い、段々に神経がすり減りやがて身も心も従順になるという……」

「いや、いらないから、そういった魔法は。俺は普通にイケメンでモテたいだけだ」

「……つまり肉体改造、という事でしょうか?」

「……その方法だったら元の世界にもありそうだから、もう少し楽して女の子にモテたい」


 目の前の美少女は沈黙した。

 どうも彼女と俺の間には大きな認識の隔たりがあるように感じる。

 そこで彼女は絶望的な顔になった。


「ああ、そうじゃないかと思ったけれど、この魔王は“失敗”な気がする」


 ぽつりと酷い台詞を呟いたのだった。

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