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町に向かって行った

 森を抜けて道らしき場所にやって来た。

 土の剥き出しの道は広く、馬のような生物にひかれた馬車が行き来している。

 それを見ながら俺は、


「自動車みたいなものはこの世界に無いのか? 後は空飛ぶ乗り物とか」

「ジドウシャ?」


 不思議そうにフィリが俺に言葉を返してくる。

 だから俺は、自動車について簡単に説明することにした。


「自動車は俺達の世界の乗り物で、馬ではなくガソリンなどで……この世界だと魔法で動く馬車みたいな乗り物かな」

「よほど強い力の魔法使いか、大量で安価な魔力石がない限り無理でしょう。この世界ではそんなそこそこ大きなものを連続的に動かすくらい強力な力を持つ者も、魔石も限られています」

「そうなのか。でもあるにはあるんだな。他に空飛ぶ乗り物は?」

「空を飛ぶ魔法はありますよ。難しいですが。そういった魔道具もある事にはありますが、高級品です」

「空飛ぶ乗り物にはロマンがある気がするからそのうち手に入れたいな」


 空を飛べる、飛行機が無くても飛べる、それこそファンタジーと俺が思っていると、


「あれは貴重なものなのでそう簡単には売り出しませんよ。戦略兵器の一つでもありますし」

「そうなのか、それは残念だ。と、話していたら町が見えてきた。あそこでいいんだろう?」

「ええ。それと店に入ってもローブは着たままでいてください」

「え、なんで?」

「その服はこの世界で珍しいものですから」


 フィリに指摘されて俺は、そういえば学校の制服を着ている事を思い出した。

 確かにこの世界の人達とは服装が違う。そうなってくると、


「よし、後で俺もこの世界の服を着てみるか。フィリ、普通っぽくて安い服を頼む」

「……そんな所帯じみた服ではなく、もっとこう、魔王としての威厳がそこそこは出るような……」

「俺は何処にでもいるような一般人に成りすましたい。そもそも魔王だって気づかれずに偵察に行くのも目的だったんだろう?」

「……あ」


 そこで忘れていたというかのようにフィリが小さく呟く。

 もしやこれは黙っていれば普通に、異世界食べ歩きツアーに突入できたのではと俺は気づく。

 そしてこれからもこの手が使えると俺は学習した。と、


「ヒロがやる気なのは素晴らしいです。よし、この調子で魔王らしい立ち振る舞いを見せつけましょう。そして食事が終わり服を選んだら……人間がどれほど醜く愚かで他者を踏みつぶさなければ生きていけないような存在なのかを、ヒロに教えねばいけません」

「……あー、えっと、何処に連れて行く気なんだ?」

「さあ、それは後ほどのお楽しみという事で。まずは……美味しい焼き魚のお店があるのでそちらに行きましょう。今の時期に取れる川魚を、この地方にしかない独自の香草で味付けしたもので……」


 といってフィリがその料理について語り始める。

 そしてすぐにお菓子のお店に関しても細かく説明をし始める。

 どうやら保存のきく焼き菓子も、そのお店の物は美味しいらしい。


 そんなフィリの熱心に語る姿を見ていた俺は、その後に何処に連れていかれるのかをついぞ聞きそびれてしまったのだった。


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