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どうやら俺は魔王になったらしい

 ある日の高校からの帰り道。

 俺、芦谷啓行あしや ひろゆきは驚愕していた。


「! ここにあるのは、某女の子が可愛い漫画の限定版……なぜこんな場所に」


 予約しなかった俺が悪いとはいえ、買い損ねた限定版がビニールに包まれて落ちていたのである。

 なぜこんな場所にあるのか。

 どうしてこんな場所にあるのか。


 そういった疑問は浮かぶも目の前にあるその“宝”の前で俺の理性など無きに等しいものだった。

 拾ったものはまず交番に届ける。

 その程度の常識はあった。


 なのでとりあえずは拾ってから交番に届けて、持ち主に譲ってもらえないか交渉を……と俺は思った。

 だがそんな俺の前に新たな“敵”が立ちふさがる。


「! こ、これは、昨日発売の〇〇の店舗限定版!」


 もしもファンであるならば、店舗違いの物も集めたい所だったが、ここの所出費がかさんでしまい(※彼女に対してではない)購入できなかったのだ。

 何てことだ、こんな場所に……そう思って俺はそれをまた一冊拾い上げた。

 二冊ほど限定版を手に入れた所で俺は更に、あるものを見つけてしまう。


 それも別作品の店舗特典の付いたもので……。

 おかしい、と俺は思っていたんだ。

 どれもこれもまるで俺が拾うというか引き付けられるものばかりだったのだ。


 だが抗いがたいその魅力に取りつかれて一冊一冊拾って言った俺だが……そこで俺は、空がやけに暗い事に気付く。

 見上げると、大きなザルのようなものが一本の棒で支えられていた。

 形としては、スズメを捕まえるのに、ザルに一本の棒が添えられているあの罠である。


 それの大きいバージョンが今ここにあり、さながら俺は、漫画につられた哀れなスズメといった所だろう。

 でもこんな大きいものがどうして?

 そういった疑問を持っていた所で、その巨大なザルのようなものを支えていた柱が消失する。


パタン


 乾いた音と共に、俺の目の間が暗闇に染まり、そこで……一度俺は意識が途切れたのだった。











 悪夢を見た気がした。

 そう俺が思ってゆっくりと目を開けていくと、自分が薄暗い場所にいることに気付く。

 俺はどうも大き目の椅子に座っているらしい事も分かる。


 それが広い部屋の一段高い場所にあって、周りを見回せる。

 と言っても小さな明かり? のようなものがすぐそばに“浮かんでいる”だけなので、遠くまでは見えない。

 目の前には赤い絨毯が敷かれて、さながら俺はどこかの国の王様のように見える。


 よくできた夢だな、と思いつつ、先ほどのアレも夢か、そうだよな、よかったと俺は思った。

 こんな怪現象にかかわりたい奇特な人間ではないのだから。

 出来れば早く目覚めないかなと俺は思った。


 だがそんな気配は何処にもない。

 いいから目覚めてくれ、そう俺が思っているとそこで、この部屋の扉が開かれるのに気づいた。

 正確にはその場所から、陽の光がこの部屋に差し込んだから、だが。


 その扉を開いた人物は逆光の中で、顔がよく見えない。

 だが髪の長い少女であり、髪は銀色のようだ。


カツン、カツン


 地面を打つ靴の音がする。

 その少女が、俺の方に向かってくる音だ。

 やがて、朧げな輪郭が、俺の傍にある明かりではっきりと姿を現す。


 歳は同い年くらいの少女で、今まで見たことも無いような美少女だった。

 銀色の長い髪に、緑と青のオッドアイ。

 細い耳が揺れていて、物語で見た“エルフ”のようにも見える。


 彼女は楽しそうに微笑みながら俺の目の前に来て、そして跪き、


「ようやくお目覚め頂けました、我が親愛なる魔王様」


 そう、告げたのだった。

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