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リビングデット!!  作者: たくお
第一章・リアルファンタジー
3/3

一般人の救世主

 MMORPG・幻域。

 一年前宣伝無しにいきなり店頭に並び、瞬く間に日本中でブームの嵐で包んだ伝説的ゲーム。

 三か月後には世界進出を開始。プレイヤーは億を超え総売り上げ何千億を突破。勢いは止まらずグッズ、アニメにも手を出し一時は失敗かと思われたがそれにも火が付き爆発的に人気が出た。

 五つの大陸を舞台とする王道RPGなのだがストーリーはこれでもかというほどの臨場感と迫力、小さなサブクエストにもメインストーリー張りのクオリティがある。総プレイ時間が1000を超えてもすべてのストーリーをクリアできないのではないかと噂されている難関ゲームである。

 そんなゲームの五大陸の一つ第三大陸アルテナ・東クルーニャ地方の小さな村アルルカのサブクエスト『荒れ狂う火竜』のヒロインキャラ、アルルカ・テラが俺の目の前にいる。

 部屋に貼ってあるポスターの俺の嫁がリアルに実体でここに存在している。

 とにかくモフりたい!という気持ちを押し殺して冷静を装いながらテルと話をする。


 「何でテラがここにいるんだ?」

 

 まず普通の質問は軽々クリア。


 「クランウールの街へ転移しようと思ったのですが何故かここに・・・」


 テラは困ったようにそういう。

 クランウールの街。東クルーシャの港町だ。買い物にでも行こうとしたんだろう。

 いや、しかし―――

 

 「アルルカには転移門はなかったはずじゃないか?」

 

 まだ全クリしていない俺が言うのもなんだが村や集落には転移門はなかったはずだ。

 町や都市なんかのお偉いさんらが使うのがその転移門であって決してテラなどの田舎の娘が使えるようなものではないはずだ。


 「そうです前はありませんでした。でも一年前に神様が作ってくれたんです」


 ゲームの時間というのはリアルの時間とは全く違うから一年前がいつなのかはさっぱりわからない。

 神というのはプレイヤーの事だ。プレイヤーがいるのならテラは誰かがプレイしたゲームのキャラであるのは確かだ。


 「そのプレ・・神の名前はわかるか?」

 「ヨミ様だとおっしゃっていました」


 ヨミ。一度だけ一緒にプレイしたことがある。始めて間もないころこのゲームのいろいろなことを教えてくれたのがそのヨミというプレイヤーだった。

 後で知ったことだがプレイヤーランキングは二位と三倍以上の差を開けトップ。まさに伝説のプレイヤーだった。

 その世界のアルルカなら転移門があっても不思議じゃない。

  

 それから数分経ち気づけば魚人たちは目を覚ましどこか得逃げていったのか姿が見えない。

 テラは自分の世界に戻るために俺たちと一緒に旅をすることになった。


 「あ!そういえばペンダント隠したままでした!」


 テラは何かを思い出したかのように大声をあげ立ち上がる。

 

 「ペンダント?」

 「そうです!お父さんにもらった大事なものをお魚さんたちに狙われちゃいまして・・・隠したまま忘れていました。」

 「そうなんだ!それじゃ取りにいかないとだめだね!」


 マイコーは竜化し背を向ける。

 

 「んじゃいこっか」 

 

 俺は立ち上がりテラの手を取る。

 なんとなくで手をつないでしまったがこれはこっぱずかしいのですぐに手を放す。

 テラは不思議そうな顔で俺の手を見たが特に何も言わない。

 俺がまずマイコーに乗りその後ろにテラが乗った。


 「飛んでも大丈夫か?」

 「はい!だいじょ・・・何ですかこれ!?」


 テラは俺の服を掴みそして引っ張る。

 

 「何があった!?」


 俺は背中に何かついているのかと思い払おうとする。しかし―――


 「違うんです浩二さん。浩二さんの服に私がいて・・・」

 

 なんだそういうことか。俺のお気に入りのシャツ真夏のアルルカ・テラだ!

 これ来てスーパー行くことぐらい俺にはたやすいことだ。なんせ嫁だから。なんて言ったら怒るだろうな。


 「そ、それで・・・」


 ん?まだ何かあるのか?なんだ?もしかしてこれが欲しいと?お前が嫁になってくれるなら考えてやるけどな~。


 「私の頭に穴が開いてます・・・これ占いですか!?死の予兆ですか!?」

 「なんですとおおぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!!!!」


 俺は急いで脱ぎ確認する。本当に穴が開いていた。


 「これは・・・心臓付近。ってことは・・・」


 見つけたら殺すと誓った。



<><><><><><><><><><><>



 怒りが冷めぬまま俺たちはペンダントを探していた。


 「どこら辺に隠したかわかるか?」

 「はい。確か黒い石の道の草むらです。近くにたくさん本が置いてある家がありました」


 黒い石の道―――道路か。それに本がたくさんってことは書店。

 道路沿いの草むら近くの書店・・・


 「マイコー!上村ブックスだ!」


 どでかい低金属音で返事したマイコーは上村ブックス方面へ頭を向ける。

 さてペンダント探しが終わったら何をしよう。まずはテラちゃんと一緒におふ―――


 「浩二さん危ない!」


 テラの手が俺の背中を押し俺はマイコーの背中に顔面をぶつける。

 それをかすめるようにコンクリートの破片が首元を通過した。

 

 「んなっ!?あっぶねえ。」


 飛んできた先にあるのは上村ブックスがある。

 

 「マイコー多分敵だ!気を付けてすすん・・・!?」


 マイコーは気を付けろという俺の言葉は聞かずに全速力で突っ込んでいく。

 とんだ馬鹿な事をしやがる。でも許そう。テラが俺にしがみついている間は・・・。



<><><><><><><><><><><>


 上村ブックスにて・・・



 「お前らここで間違いねえんだろうな?」

 「は、はいい!!!宗光様!」

 

 魚どもは使えない。

 証拠に一匹殺された。

 しかし武器をもったあいつを素手で倒した男だ。俺も興味がある。 

 隠してまで守ろうと思ったペンダントだ。あの獣耳娘が一人で取りに来るはずがない。俺はそう踏んでわざわざここまで来た。

 これで筋の通らない屑野郎だったなら骨まで粉々にしてやる。

 

 「宗光様!ありました!」


 どうやら横助がペンダントを見つけたようだ。変な光を放っているおそらく本物だ。

 願いの石。それがペンダントにはめ込まれた願いをかなえる魔石。一つでは効果がない。めんどくさいがこつこつ集めるしか手はない。

 

 「おい。実乃助!」

 「なに?宗光」


 実乃助は変身をとき人の姿になった。人―――いや厳密にいえば違う。

 レプラコーン。

 それが桜庭実乃助だ。黒い粉事件以来俺たちは組みそして戦っては負けた奴を傘下に加えていった。

 魚人の三人はその一部だ。一人消えたんだが。


 「あれでいいんだよな?」

 「多分そう。実物は初めて見る・・・けどゲイルの言ってることが正しいなら間違いない」


 それよりと実乃助は続ける。


 「さっきの火竜が来てる」


 俺は実乃助の目線の先を見る。確かにドラゴンがこっちに向かって飛んできている。

 近くに落ちていたコンクリート片を拾い俺は狼化しドラゴンめがけて思い切り投げる。

 その名のとおり俺はオオカミ人間だ。

 コンクリート片は当たらずドラゴンはさっきよりも勢いよく突っ込んできた。


 「さて。返り討ちにしてやる」


 一匹のドラゴンと一匹の獣耳。それから一人の人間が地に降りた。



<><><><><><><><><><><>



 地上に降りた俺らはコンクリ投擲犯と対面した。


 「お前かコンクリ投げた奴」

 「浩二・・・絶対違う・・・」

 

 マイコーは竜化を解き残念そうに言う。

 どうやらこっちの魚人じゃなかったらしい。


 「んじゃお前だな!」


 と言ってもう一人の魚人を指さす。隣を見ると犬っころが震えている。


 「ん?どうした、いぬっころまさか魚が怖いのか?俺に任せろ!」

 「お前は馬鹿か俺だよオレオレ!」

 「ああ?お前誰だよ。正面切ってオレオレ詐欺か?」


 どうやらいけないことを言ってしまったらしく完全に切れている。

 これで作戦成功。

 空で話し合った結果とりあえず俺に注意を集めてその隙に足の速いテラがペンダントを取り返すことにした。

 そこで俺は挑発で相手をひっかけて隙を作ることにし、それに成功したのだが・・・


 「そりゃないよ浩二・・・」

 「私もそう思います・・・」

 「何でうごいてねえんだ!?」


 マイコーは呆れそしてテラまでもが呆れていた。

 これじゃ相手をけなしただけだ。ただただ意味もなくヘイトを稼いでしまった。


 「ごちゃごちゃるせえんだよぉぉ!!!!!」


 いぬっころは怒りが頂点に達したようでいきなり殴りかかってきた。

 かわそうとしたが不意打ちを交わすのは俺には無理だった。

 俺は腹で受け止め後ろむきに飛ばされ書店に突っ込む。


 「すげえパンチだな。いぬっころ」

 「いぬっころじゃねえ!俺はオオカミ男だ!」

 「浩二そろそろあおるのやめた方がいいんじゃない?」


 そうだった。作戦は失敗したんだった。

 それじゃ今からは―――


 「スーパーボコリタイムってことだな!」


 この体になって気づいたことがいくつかある。

 一つ身体能力がおかしい。凸ピンでコンクリの壁壊せるようになった。

 二つそれらはすべて制御できない。しかしそれでマイコーの皮膚はとてつもなく頑丈だということが分かった。

 俺は体制を低くし地面をける。地面はえぐれ突風が発生する。そのまま右手を突き出しオオカミ君の腹に押し込んだ。ぶっ飛ぶ。コンクリ壁二枚と木製壁四枚を突き破って止まる。魚人みたく水風船のようにはならなかったことから見てオオカミ君は相当鍛えているか、オオカミ男という種の力が強いのだろう。

 突き破られた家がすべて崩れていく。


 「む、宗光さま!!!」


 魚人の一人が叫んだ。返事は聞こえない。下敷きになったか返事をするまでもないの二択。答えは・・・


 「まだだあああああああ!!!!!!」


 瓦礫を吹きとばしオオカミ君は突っ込んでくる。次は予測していたからたやすくよける―――


 「なんだ?」


 よけたのだが体に無数の切り傷がついていた。俺の体を緑の光が包み込む。

 オオカミ君は笑う。


 「俺の爪はお前には避けられねえ」

 「や、でもこの程度なら回復するし・・・」

 「なんだとっ!?」


 オオカミ君は言葉の通りの顔をした。

 わかったこと。

 三つ俺の体に傷がつき血が出た場合こうして緑の光が直してくれる。


 「だ、だったら回復できなくなるまで切り刻む!!」


 オオカミ君はスピードを上げ切りかかってくる。早すぎて見えない。さすがはオオカミ男だ。

 しかしこれも無駄。

 わかったこと。いや俺のパンチは―――


 「俺のパンチで生じる突風は一軒家を揺らし運良くば倒壊」


 俺は自分の足元に拳を打ち付ける。地面が割れ突風が巻き起こる。

 俺の周囲でうろちょろしていたオオカミ君はテラの隣に立っていた。そしてテラの首を掴み言う。


 「はぁはぁ・・・それ以上近づいたらこいつの首かっきるぞ!!」

 「こ、うじ・・・たす・け・て・・・」


 何かどこかで聞いたことのあるセリフだ。たいていこれは突っ込んで来いの合図だったりする。

 何より人質はテラだ。俺が近づかないわけがない。つか許せない。

 

 「宗光・・・みっともない」


 俺の後ろから声が聞こえた。魚人のかすれた声ではなく人間の声が。

 オオカミ君は下を向きテラを下ろし消えた。消えたではなく移動した声の主の後ろへ。


 「すまん実乃助つい」

 

 謝るオオカミ君に実乃助なる人物は冷たい視線を送る。


 「まだ終わってない・・・早くいけ」

 「お、おう」


 あのオオカミ君が圧倒されている。実乃助はいったい何者なんだ。


 「おい。化けもん」

 「なんだよいぬっころ」

 「っち。まあいい。お前は何だ」

 「俺はリビングデッド」


 オオカミ君は一瞬ひるみ、実乃助は目を丸くした。

 リビングデッド。生ける屍。生き返った俺にふさわしい種だ。

 そして俺は世界を救い、元の世界を取り戻す。そう俺こそが―――


 「一般人の救世主だ!!」

スキー旅行楽しみ

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