生き返った。
作者の思い付きによる執筆です。
感想いただけたら幸いです。
人間たちは様々なものをつくり上げてきた。
古代から武器・服・家・墓・紙などなど。
生活をより楽により快適にするために人は努力を惜しまなかった。
だがしかし。
物だけが、形のある物だけが、実際にそこにあると感じるものだけが、人間のつくったものではない。
人間は想像し僕らを創造した。
僕らとは誰か。僕はいったい誰なのか。
それは後々わかってくるさ。
そんなことより僕は考えた。
そんなに想像してそんなにうらやましく思っているなら、そうしてあげようじゃないかってね。
今ある世界の秩序が乱れ壊れそして忘れ去られるような世界を僕は人間に僕を創造してくれた感謝の気持ちを込めて提供することにしよう。
人間が発狂し狂えるほど喜ぶ姿とはなかなかの見ものじゃないか。
それじゃあ楽しむとしよう。
レッツパァーリィィィィタァインム!!!!
リビングデットに大いなる祝福を。
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「うあぁぢぃぃよぉぉぉぉおお!!!溶けて死んでしまいそうだ。」
東京郊外賃貸マンションに住む俺、登坂浩二(23)は八月上旬平日の昼間暑さと戦っていた。
もう無理だ。と思い冷凍庫を開けアイスを取り出そうとするが買った覚えもないのにあるはずがない。
冷房は節電のため使用禁止。
「ああくそ。でるか。」
平日の昼間に大の大人が何をしているんだとご近所在住通称雷おやじ(63)によく言われるのだが俺はニートではない。
きちんと深夜バイトで金を稼ぐ夢見るフリーターだっ!
財布と携帯を持ってポスターの中の嫁に行ってきますと言って部屋を後にする。
近くのコンビニではなく少し遠くのスーパーに行くことにした。金は大事に使わねばならん。ケチとは言わせない。
愛車(自転車)に乗り込みペダルを踏む。
うだるような暑さが汗を呼び起こし目的地につく頃には服が背中にべったりくっついていた。
中に入ればどこでも天国という訳じゃないこのスーパーは店長の体重が気になるくらい冷房が効いている。ペンギンでも買ってんのかこの野郎。
さっさとアイス買って帰ろうと思い売り場に足を向けたとき俺の首に何かが巻き付いた。
人間の腕だ。
「なにすんだ。はなせ!」
友達の悪ふざけなのであればいいのだろうけど生憎友達なんて呼べるやつはこの辺には住んでない。
俺の頭に黒くて冷え切った何かが押し付けられた。客の動揺具合からしておそらく拳銃だろう。
俺を拘束した人物は何やらぶつぶつ言っているのだが客の声のせいか気が動転しているせいかでうまく聞き取れない。
「・・・ス・・ロス・・・全員殺ぉす!!!!ふぅーふぅーふー。」
呼吸の仕方が人間ではない。薬物中毒者か。
殺すってマジかよ。てことは俺が被害者一号?はあ?待て意味わかんねえ。
俺にはまだ、俺には・・・
「やることいっぱい残ってんだよぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
俺は突き付けられた拳銃を力ずくで頭から離し殺人未遂犯を投げ飛ばした。
俺は勝った気になって投げ飛ばした相手の拳銃を取りに行こうとした。
が。
後ろから飛んできた音速を超える鉄の弾丸はあっさりと俺の心臓を貫いた。
「は、は?」
力が抜け前のめりに倒れこみ頭を打ち付けた。
追い打ちをかけるように二発目が後頭部を打ち抜いた。多分即死だろう。
死んから少しの間意識が残るって聞いたことあったが、なるほどホントらしい。
薄れゆく意識の中で俺は俺を撃ち殺した犯人と共犯者4名と死神を見た。
普通は驚くところなんだろうけどそんな気力どこにもなかった。
「うん。君に決ぃめた!リビングデットに大いなる祝福を!また会おう。」
そう言って死神はあたり一面に闇をばらまきながら消えていった。
それと同時に俺の意識が飛んだ。
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目が覚めると俺は真っ暗な場所に立っていた。
冴えない頭でいろいろ考えようとするが深い霧に囲まれたような俺の意識ではそんなことはできなかった。
「ここは天国でも地獄でもないよ登坂浩二君。」
さっきの死神か。いったい俺なんかに何の用だ。
「死神とはひどいなあ登坂浩二君。僕が君を生き返らせてあげようというのに。」
ああそうか。ならさっさとそうしてくれよ。やりたいことがたくさんあるんだ。
「いんやそれは無理だよ登坂浩二君。君の生きた世界はもうなくなった。」
なんだいそりゃ。さっきの黒い粉のせいか?
「ご名答だよ登坂浩二君。これから君にはどこかの誰かさんが創造してしまった世界で戦ってもらうことになる。それでも行きたいと願うかい?」
ああもう好きにしてくれ。俺は眠いんだ。
「そうかわかった。好きにさせてもらうよ。じゃせいぜい頑張っておくれよ。リビングデットに大いなる祝福を!」
またあのわけのわからない言葉を吐いて死神はどこかへ消えていった。
霧は一層深く濃くなり俺の意識はそこで完全に途絶えた。
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大きな金属のロッカーを耳元で引きずられるような不快な爆音で俺は目覚めた。
「ふぅんん。どこだぁここは・・・」
半開きの目であたりを見回す。見たことがある光景だ。
よく覚えてはいないが、夢で見た死神の話が本当なのだとしたらここは俺が死んだスーパーだ。
ただ明かりは一切なく。俺の後ろから照る日も光だけが唯一の光源だった。
ふとした好奇心から撃たれたはずの左胸と後頭部を触ってみると傷はなくお気に入りのTシャツにだけ穴が開いていた。
どうやら俺は生き返ったらしい。
「生き返らすって何年後だよ。核戦争でも起きたのか?つかなんで俺の死体放置されてたんだよ!」
まだいろいろ言いたいことがあったのだが俺の声はさっきの金属音にも似た生々しく不快な爆音にかき消された。
そのあと頭上に何かが通り一瞬影ができた。どうやら天井にどでかい穴が開いているようで、何があるのか気になって俺は上を向いた。
「なんだってこんなところに大穴あいちゃってええええええ!?」
空にドラゴンが飛んでいた。
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